記憶障害がある人との接し方
高次脳機能障害の中でも、記憶障害は日常生活に大きな影響を与える症状の一つです。
ご家族からは、
- 「何度説明しても忘れてしまう」
- 「同じことを何回も聞かれる」
- 「約束を覚えていない」
- 「どう接すればいいのか分からない」
という相談を受けることがよくあります。
最初は戸惑ったり、イライラしたりすることもあるでしょう。
しかし、記憶障害は「気をつければ治るもの」ではなく、脳の障害によって起こる症状です。
そのため、ご本人を責めるのではなく、忘れても生活しやすい環境を一緒に作ることが大切になります。
この記事では、記憶障害のある方との接し方について解説します。
「忘れる」のは障害による症状
記憶障害のある方は、
- 約束
- 会話の内容
- 今日の出来事
など、新しい情報を覚えることが難しい場合があります。
一方で、昔の出来事はよく覚えていることも少なくありません。
ご家族は、「さっき話したばかりなのに」と驚くこともありますが、
これは脳の障害によって起こる症状です。
まずは、「わざと忘れているわけではない」ということを理解することが大切です。
何度聞かれても責めない
記憶障害では、同じ質問を何度も繰り返すことがあります。
例えば、「今日は病院?」「今何時?」「次は何をするの?」と何度も尋ねることがあります。
そのたびに、「さっきも言ったでしょ。」「何回聞くの?」と言われると、
ご本人は不安になったり、自信を失ったりすることがあります。
もちろん、ご家族も疲れてしまうことがありますが、
責めるよりも、「一緒に予定を見てみよう。」とメモやカレンダーへ自然に誘導する方が効果的です。
メモやカレンダーを一緒に使う
記憶障害では、「覚えること」よりも、「確認すること」が重要です。
例えば、
- カレンダーに予定を書く
- メモ帳を持ち歩く
- ホワイトボードを使う
などの方法があります。
ご本人が質問したときは、すぐ答えるのではなく、「カレンダーを見てみようか。」
と一緒に確認する習慣を作ることが、自立にもつながります。
一度にたくさん伝えない
記憶障害のある方は、一度に多くの情報を覚えることが難しい場合があります。
例えば、「着替えて、薬を飲んで、そのあと病院へ行こうね。」ではなく、
「まず着替えましょう。」着替えが終わったら、「次は薬を飲みましょう。」
というように、一つずつ伝える方が分かりやすくなります。
できたことを認める
忘れてしまう場面ばかりが目につくと、ご本人もご家族も落ち込みやすくなります。
しかし、
- メモを見られた
- カレンダーを確認できた
- 自分から予定を聞けた
など、小さな成功も大切です。
「自分で確認できましたね。」「メモを使えましたね。」と具体的に褒めることで、自信につながります。
思い出せるまで待つ
ご本人が何かを思い出そうとしているときに、すぐ答えを教えてしまうことがあります。
もちろん、必要な場面もありますが、少し待つことで、自分で思い出せる場合もあります。
例えば、「最後に使ったのはどこだったかな?」など、ヒントを出しながら考えてもらうことも大切です。
環境を整えることも支援
記憶障害では、物の置き場所が毎回変わると混乱しやすくなります。
例えば、
- 鍵は玄関
- 財布は引き出し
- 薬は食卓
など、置き場所を決めておくと探し物が減ります。
また、ラベルを貼るなどの工夫も役立ちます。
本人の気持ちにも目を向ける
記憶障害のある方は、「また忘れてしまった」と落ち込んでいることがあります。
ご本人が何も気にしていないように見えても、心の中では悔しさや不安を感じている場合も少なくありません。
責めるのではなく、「大丈夫、一緒に確認しよう。」という安心できる声かけが大切です。
家族も無理をしない
何度も同じ説明をすることは、ご家族にとって大きな負担になることがあります。
疲れてしまうのは当然のことです。
一人で抱え込まず、
- 主治医
- 言語聴覚士
- 作業療法士
- 高次脳機能障害支援拠点
などへ相談しながら、負担を減らす方法を一緒に考えましょう。
「覚える」より「生活できる」が目標
高次脳機能障害のリハビリでは、
以前と同じように記憶できるようになることだけが目標ではありません。
例えば、
- メモを使えば生活できる
- カレンダーを見れば予定を確認できる
- 家族と協力しながら安心して暮らせる
これも大切な回復です。
「覚えられないこと」ではなく、「生活しやすくなったこと」に目を向けることが、
ご本人にとってもご家族にとっても大切です。
まとめ
記憶障害のある方との関わりでは、「忘れるのは脳の障害による症状」であることを理解し、責めないことが何より大切です。
メモやカレンダーを活用し、「覚える」よりも「確認する」習慣を身につけることで、ご本人の自立や安心につながります。
また、小さな成功を認めながら、ご本人のペースを尊重して関わることも重要です。
ご家族だけで抱え込まず、専門職とも相談しながら、ご本人が安心して生活できる環境を一緒に整えていきましょう。

