注意障害がある人との接し方
高次脳機能障害のある方にみられる症状の一つに注意障害があります。
注意障害があると、
- 集中力が続かない
- 気が散りやすい
- 同じミスを繰り返す
- 一度に複数のことができない
といった困りごとが生じます。
ご家族からは、
- 「話を最後まで聞いてくれない」
- 「何度言っても同じ失敗をする」
- 「もう少し気を付ければできるのでは?」
という相談を受けることも少なくありません。
しかし、注意障害は「気持ちの問題」ではなく、脳の障害によって起こる症状です。
そのため、ご本人を責めるよりも、注意しやすい環境を整えることが大切になります。
この記事では、注意障害がある方との接し方について解説します。
注意障害は「集中できない」のではなく「集中し続けることが難しい」
注意障害のある方は、「集中しよう」という気持ちがないわけではありません。
脳の障害によって、
- 注意を向け続ける
- 必要な情報に集中する
- 気持ちを切り替える
ことが難しくなっています。
そのため、「もっと集中して」と言われても、すぐに改善できるものではありません。
まずは、そのことを理解することが大切です。
一度に一つずつ伝える
注意障害では、一度に多くの情報を処理することが苦手になる場合があります。
例えば、「着替えて、薬を飲んで、そのあと病院へ行こう。」とまとめて伝えるよりも、
「まず着替えましょう。」着替えが終わったら、
「次は薬を飲みましょう。」というように、一つずつ伝える方が理解しやすくなります。
話しかける前に注意を向けてもらう
テレビを見ているときや何か作業をしているときは、
急に話しかけても内容が伝わらないことがあります。
まず、「○○さん。」と名前を呼び、
こちらを向いてもらってから話し始めるようにしましょう。
目を合わせて話すことで、伝わりやすくなることがあります。
静かな環境を整える
注意障害では、周囲の刺激が多いほど集中しにくくなります。
例えば、
- テレビを消す
- ラジオを止める
- 人の出入りが少ない部屋で話す
など、環境を整えることも大切です。
静かな環境では、必要な情報に注意を向けやすくなります。
「ながら作業」を減らす
注意障害のある方は、複数のことを同時に行うと混乱しやすくなります。
例えば、
- テレビを見ながら食事をする
- 会話をしながら書類を書く
- 電話をしながら料理をする
などは、ミスが増える原因になります。
まずは、一つのことを終えてから次へ進むことを意識しましょう。
ミスを責めない
注意障害では、同じミスを繰り返すことがあります。
そのたびに、「また間違えたの?」「ちゃんと確認して。」と言われると、
ご本人は自信を失いやすくなります。
それよりも、「次はどうしたら間違えにくくなるかな?」と一緒に考える方が前向きな支援になります。
メモやチェックリストを活用する
注意障害では、確認を忘れてしまうことがあります。
例えば、外出前なら、
□ 財布
□ 鍵
□ スマートフォン
□ 診察券
というチェックリストを使うことで、
忘れ物を減らしやすくなります。
「気を付ける」だけではなく、「確認できる仕組み」を作ることが大切です。
疲れたら休憩する
高次脳機能障害では、疲労によって注意力が低下しやすくなります。
長時間続けるよりも、15〜30分ごとに休憩を入れる方が集中しやすい方も少なくありません。
疲れているときは無理をせず、休むこともリハビリの一つです。
できたことを具体的に褒める
注意障害では、失敗ばかりが目につきやすくなります。
しかし、
- 最後まで集中できた
- チェックリストを使えた
- 自分で確認できた
など、小さな成功を認めることが大切です。
「今日は最後まで取り組めましたね。」「自分で確認できましたね。」
という具体的な声かけが、ご本人の意欲につながります。
家族も一人で抱え込まない
注意障害への対応は、ご家族にとっても負担になることがあります。
「何度言っても変わらない」と感じることもあるでしょう。
そのようなときは、
- 主治医
- 言語聴覚士
- 作業療法士
- 高次脳機能障害支援拠点
などへ相談し、生活に合った工夫を一緒に考えてもらうことも大切です。
「注意する」より「注意しやすい環境を作る」
注意障害では、ご本人の努力だけで改善できることには限界があります。
そのため、「もっと気を付けて」と繰り返すよりも、
- 一度に一つずつ行う
- 静かな環境を作る
- チェックリストを使う
など、生活の工夫を取り入れる方が効果的です。
ご本人が安心して生活できる環境を整えることが、ご家族の大切な役割になります。
まとめ
注意障害のある方との接し方では、「集中できないのは脳の障害による症状」であることを理解することが大切です。
一度に多くのことを伝えず、一つずつ分かりやすく話すことや、静かな環境を整えることが、安心して生活するための助けになります。
また、ミスを責めるのではなく、チェックリストやメモなどを活用し、「注意しやすい仕組み」を作ることも重要です。
ご本人の努力だけに頼るのではなく、ご家族と専門職が協力しながら、生活しやすい環境を整えていきましょう。

