家庭で発音練習をするときに大切なこと

「家でも発音練習をした方がいい?」「親が発音を直しても大丈夫?」「間違えるたびに言い直させた方がいい?」

構音訓練を受けている子どもの保護者にとって、家庭でどのように関わればよいのかは気になるところです。

家庭練習は、訓練で身につけた正しい発音を定着させ、単語や文章、日常会話へ広げていくために役立ちます。

ただし、大切なのは練習量を増やすことではありません。その子の訓練段階に合った課題を、正しい方法で、無理なく続けることです。

今回は、家庭で発音練習をするときに大切にしたいポイントを解説します。


言語聴覚士から教わった方法で練習する

家庭練習で最も大切なのは、現在受けている構音訓練の内容に合わせることです。

同じ「さ」が言えない子どもでも、

「さ」が「た」になる
「さ」が歪んでいる
舌が前に出ている
息の流れが適切でない

など、発音の状態は異なります。

必要な練習もそれぞれ違うため、家庭では言語聴覚士などから示された課題を中心に行いましょう。


家庭で新しい音を教えようとしない

家庭練習は、保護者が一から正しい発音を教える時間というより、訓練でできるようになったことを復習する時間と考えるとよいでしょう。

例えば訓練で「さ」が言えるようになり、「さかな」「さる」まで練習しているのであれば、家庭でもその段階を練習します。

まだ訓練で扱っていない難しい単語や文章まで進める必要はありません。


短時間で終える

家庭での発音練習は、長時間行えばよいわけではありません。

特に幼い子どもでは、長時間になると集中力が低下し、正しい発音が出にくくなることがあります。

例えば1日5分程度など、短い時間から始めてもよいでしょう。

時間よりも、集中して正しい発音を経験できたかを大切にします。


正しく言えるものを練習する

まだ正しく言えない音を何十回も繰り返すと、誤った発音を繰り返すことになる場合があります。

例えば「さ」が毎回「た」になる状態で、「さ、さ、さ」と何度も言わせても、正しい「さ」の練習にはなりません。

家庭では、

  • 訓練で正しく言えた音
  • 正しく言いやすい単語
  • 言語聴覚士から指定された課題

を中心にするとよいでしょう。


間違えたら何度もやり直させない

家庭練習中に間違えることは当然あります。

一度間違えたからといって、

「違う」
「もう一回」
「まだ違う」
「もう一度」

と何度も繰り返させる必要はありません。

何回か試してもうまくいかなければ、その課題は今の段階では難しい可能性があります。

いったん簡単な課題へ戻り、次回の訓練で相談してもよいでしょう。


「できた発音」を大切にする

家庭練習では、間違った音ばかりに注目しないことも大切です。

例えば10個の単語のうち8個を正しく言えたのであれば、間違えた2個だけを見るのではなく、

「今日はこれが上手に言えたね」

と成功した部分を確認します。

正しい発音が出たときの経験を積み重ねることで、少しずつ安定した発音につながります。


発音だけでなく「自分で気付けたこと」も評価する

構音訓練が進んでくると、

「たかな……あ、さかな」

のように、自分で発音の誤りに気付いて言い直すことがあります。

これは重要な変化です。

最初から正しく言えなかったとしても、自分で気付いて修正できたのであれば、

「自分で気付けたね」

と認めてあげるとよいでしょう。


練習する時間をある程度決める

家庭練習を生活の中に取り入れる場合には、

「夕食の前に5分」

「お風呂の前に少しだけ」

など、ある程度タイミングを決めておく方法があります。

習慣になると、保護者も子どもも取り組みやすくなります。

毎日必ず同じ時間に行わなければならないわけではありません。家庭の生活リズムに合わせて続けやすい方法を選びましょう。


遊びを取り入れてもよい

幼い子どもでは、「発音の勉強」という形にすると負担になることがあります。

その場合には、

  • 絵カードを引いて名前を言う
  • すごろくの途中で練習する
  • 正しく言えたらシールを貼る
  • 親子で交互に単語を言う

など、遊びの要素を取り入れることもできます。

目的はたくさん練習させることではなく、子どもが取り組みやすい状態で正しい発音を経験することです。


保護者も一緒にやってみる

子どもだけに、

「はい、言って」

と繰り返させるより、保護者も一緒に参加すると取り組みやすくなる場合があります。

例えば絵カードを交互に引き、親も単語を言います。

発音練習が「できるかどうかをテストされる時間」にならないようにすることも大切です。


日常会話のたびに訂正しない

家庭練習で特に注意したいポイントです。

例えば食事中に子どもが、「今日、たかなを見たよ」と言ったとします。

そのたびに、「『たかな』じゃなくて『さかな』でしょ。もう一回言って」と訂正する必要はありません。

子どもは「魚を見た」という出来事を伝えようとしています。

まずは、「魚を見たんだね。大きかった?」と話の内容を受け止めることを大切にしましょう。


「練習の時間」と「会話の時間」を分ける

家庭で発音を定着させたいと思うほど、普段の会話でも発音が気になってしまいます。

しかし、日常生活のすべてが構音訓練になると、子どもが話しにくくなることがあります。

そのため、

発音練習中 → 発音に注目する
普段の会話 → 話している内容を大切にする

と分けて考えるとよいでしょう。


子どもが疲れている日は無理をしない

眠い、疲れている、機嫌が悪いなど、練習に向かない日もあります。

そのような日は無理に行わなくても構いません。

家庭練習は長期間続くこともあるため、「毎日絶対にやらなければ」と考えすぎないことも大切です。

親子ともに負担なく続けられる方法を考えましょう。


うまくいかない課題は記録しておく

家庭練習で、

「この単語だけ何度やっても難しい」

「訓練では言えていたのに家ではうまくいかない」

ということがあれば、記録しておくと役立ちます。

次回の訓練で言語聴覚士に伝えることで、課題の難易度や練習方法を調整できます。

可能であれば、家庭での発音を録音して相談する方法もあります。


保護者が焦りすぎないことも大切

正しい音が一度出るようになると、「言えるのだから、普段もちゃんと言ってほしい」と思うかもしれません。

しかし、

一音で言える

単語で言える

文章で言える

会話で言える

意識しなくても自然に言える

という段階があります。

正しい音を出せるようになったからといって、すぐに日常会話へ定着するわけではありません。

少しずつ発音が広がっていく過程を見ていきましょう。


家庭練習で大切なポイント

家庭で意識したいことをまとめると、

  • 専門家から教わった方法で行う
  • 訓練でできたことを復習する
  • 短時間で集中して行う
  • できない音を何度も繰り返さない
  • できたことを確認する
  • 日常会話では訂正しすぎない
  • 子どもが嫌がる日は無理をしない
  • 困ったことは次回の訓練で相談する

という点が大切です。


まとめ

家庭での発音練習は、構音訓練で身につけた正しい発音を定着させ、単語・文章・会話へ広げていくために役立ちます。

しかし、家庭で保護者が新しい発音を一から教えたり、できない音を何十回も繰り返させたりする必要はありません。

基本となるのは、言語聴覚士などとの訓練で正しくできた課題を、短時間、無理なく復習することです。

そして、もう一つ大切なのが、発音練習と普段のコミュニケーションを分けることです。

日常会話では、発音が少し間違っていても、まず子どもの「伝えたいこと」を受け止めましょう。

家庭は発音を直す場所である前に、子どもが安心してたくさん話せる場所であることが大切です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です