発音が聞き取りにくいとき家族はどう聞き返せばいい?
子どもが一生懸命話しているけれど、「何と言ったのか分からない」ということがあります。
そんなとき、
「何言ってるか分からない」
「ちゃんと話して」
「もう一回!」
と繰り返してしまうこともあるかもしれません。
しかし、子どもにとっては「ちゃんと伝えようとしているのに伝わらない」という経験になります。聞き返しが何度も続くと、話すことを負担に感じる子どももいます。
発音が聞き取りにくいときに大切なのは、正しく発音させることよりも、子どもが伝えようとしている内容を一緒に探すことです。
今回は、家庭で使いやすい聞き返し方を紹介します。
聞き取れなかったら聞き返しても大丈夫
まず、「聞き取れなかったのに分かったふりをした方がいい」ということではありません。
本当に分からなければ、聞き返して構いません。
ただし、「ちゃんと言って」ではなく、「ごめんね、もう一回教えてくれる?」など、あなたの話を理解したいという気持ちが伝わる聞き返し方をするとよいでしょう。
「何?」を何度も繰り返さない
最初は、
子ども:「○○したよ」
家族:「ごめん、もう一回教えて」
という聞き返しでよいでしょう。
しかし、2回目も分からなかったときに、
「何?」
「もう一回」
「もう一回言って」
と繰り返しても、同じ発音になる可能性があります。
その場合には、聞き返し方を変えてみます。
分かった部分を確認する
子どもの話を全部聞き取れなくても、一部分だけ分かることがあります。
例えば、
子ども:「きょう○○であそんだ」という発話なら、「今日、どこかで遊んだんだね。どこで遊んだの?」と確認します。
聞き取れた部分を手掛かりにすることで、子どもが最初からすべて言い直す必要がなくなります。
選択肢を出してみる
何について話しているのかある程度分かっている場合には、選択肢を示す方法があります。
「公園?それとも幼稚園?」
「先生のこと?お友達のこと?」
「赤い方?青い方?」
などです。
子どもは指さしたり、「こっち」と答えたりできるため、発音だけに頼らず伝えることができます。
「○○のこと?」と確認する
聞き取れた内容から推測できる場合には、
「さかなのこと?」
「○○ちゃんのことかな?」
と確認します。
合っていれば子どもは「うん」と答えられます。
間違っていれば「違う」と伝えられるため、そこから別の手掛かりを探すことができます。
「どんなもの?」と別の説明をしてもらう
一つの単語がどうしても聞き取れない場合には、同じ単語を何度も言ってもらうのではなく、別の方法で説明してもらうこともできます。
例えば、
「どんなもの?」
「何に使うもの?」
「どこにあった?」
「誰と一緒だった?」
などと質問します。
「名前が伝わらなくても、別のことばを使えば伝えられる」という経験にもつながります。
指さしやジェスチャーを使ってもよい
コミュニケーションは発音だけで行うものではありません。
分からないときには、
「どれ?指さして教えて」
「どんな形だった?」
「やって見せてくれる?」
などと促すこともできます。
物を持ってきたり、絵を描いたり、身振りで示したりしても構いません。
何とか正しい発音で伝えさせることより、いろいろな方法を使って伝わる経験を増やすことも大切です。
写真を見せてもらう方法もある
子どもが園や外出先であった出来事を話している場合、写真などがあれば一緒に見ることで内容が分かることがあります。
「このときのこと?」と確認しながら話せば、子どもも説明しやすくなります。
発音が不明瞭な子どもでは、話題についての情報があるだけでも理解しやすくなることがあります。
「ゆっくり言って」だけでは伝わらないこともある
聞き取りにくいと、「ゆっくり言ってみて」と言いたくなるかもしれません。
話す速度が速いために聞き取りにくくなっている場合には役立つことがあります。
しかし、構音そのものに誤りがある場合には、ゆっくり話しても同じ発音になることがあります。
何度も「ゆっくり」「はっきり」と求めるより、別の方法で内容を確認した方が伝わりやすい場合もあります。
「ちゃんと話して」は避けたい
子どもは、ふざけて不明瞭に話しているわけではないことがあります。
本人なりに一生懸命話しているのに、「ちゃんと話して」と言われても、どうすればよいのか分からないかもしれません。
「ちゃんと」「はっきり」などの抽象的な指示では、正しい発音方法を身につけることは難しいものです。
聞き取れない場合には、子どもの努力不足として捉えないことが大切です。
聞き返すときに発音を直す必要はない
例えば子どもが「さかな」を「たかな」と言っていても、それが「魚」だと分かったのであれば、会話を続けることができます。
子ども:「たかな見た!」
家族:「さかなを見たんだね。どこで見たの?」
というように返します。
「『たかな』じゃなくて『さかな』。もう一回言って」
と、聞き返すたびに発音練習へ変える必要はありません。
どうしても分からないときは正直に伝える
いろいろな方法を試しても分からないことはあります。
その場合には、「ごめんね、まだ分からなかった」と伝えても構いません。
ただし、そこで会話を終わらせるのではなく、
「指さして教えてくれる?」
「絵に描いてみる?」
「あとで一緒に見に行こうか」
など、別の伝え方を提案します。
「伝わらなかった」で終わらず、「どうしたら伝わるか」を一緒に考えることがポイントです。
家族には伝わるのに他の人には伝わらないこともある
一緒に過ごす時間が長い家族は、子どもの発音の特徴を知っています。
そのため、多少発音が不明瞭でも、「これは○○と言っているな」と推測できることがあります。
一方、保育園・幼稚園の先生や友達、初めて会う人には伝わりにくいことがあります。
家庭で通じているからといって、ほかの人にも同じ程度に伝わっているとは限りません。
家族が「通訳」しすぎないことにも注意
子どもの発音をよく理解できる保護者は、子どもが話す前に、
「○○って言いたいんだよね」と代わりに話してしまうことがあります。
必要な場面で助けることは大切ですが、いつも先回りしてしまうと、子ども自身が相手へ伝える機会が少なくなります。
まず本人に話してもらい、難しいときに必要な分だけ手助けするという考え方がよいでしょう。
子どもが伝わらないことを気にしている場合
何度も聞き返される経験が続くと、「どうせ分かってもらえない」と感じ、話すことを避ける子どももいます。
そのような様子がみられたら、発音だけでなく気持ちにも目を向けましょう。
「教えてくれてありがとう」
「分かりたいから、一緒に考えよう」
など、伝えようとしたことを受け止めます。
聞き取りにくさによって家庭や園・学校でのコミュニケーションに困っている場合には、専門家への相談も検討します。
聞き返し方を段階的に変えてみよう
家庭では、例えば次のような順番で対応できます。
①自然にもう一度聞く
「ごめんね、もう一回教えて」
↓
②分かった部分を確認する
「今日、幼稚園であったこと?」
↓
③選択肢を示す
「先生のこと?お友達のこと?」
↓
④別の方法を使う
「指さしてくれる?」「どんなものか教えて」
このように、同じ発音を何度も繰り返させるのではなく、少しずつ手掛かりを増やしていきます。
まとめ
子どもの発音が聞き取りにくいとき、家族が聞き返すこと自体は問題ありません。
大切なのは、「正しく言い直してもらう」ためではなく、「子どもの伝えたいことを理解する」ために聞き返すことです。
一度聞き返しても分からなければ、「もう一回」を何度も繰り返すのではなく、
「○○のこと?」
「こっちとこっち、どっち?」
「指さして教えて」
「どんなものだった?」
など、別の方法を使ってみましょう。
発音が不明瞭でも、指さし、ジェスチャー、絵、説明など、伝える方法はいくつもあります。
家庭で大切にしたいのは、子どもが**「発音がうまくできなくても、自分の話を聞いてもらえる」「伝わるまで一緒に考えてもらえる」**と感じられることです。

