発音を気にして話したがらない子どもへの接し方

「最近、人前で話したがらなくなった」「発音を間違えるのが嫌だから話したくないと言う」「以前より声が小さくなった」

発音に難しさがある子どもの中には、自分の発音について周囲から指摘されたり、聞き返されたりする経験を重ねるうちに、発音を気にするようになる子どもがいます。

そのようなとき、発音を直すことを急ぐよりも、まず大切にしたいのが、「うまく発音できなくても話していい」と感じられる環境をつくることです。

今回は、発音を気にして話したがらなくなった子どもへの家庭での接し方について解説します。


まず子どもの気持ちを聞く

子どもが話したがらなくなったときには、「どうして話さないの?」と問い詰めるより、話したくない理由があるのかをゆっくり確認します。

例えば、

「発音のことで何か気になることある?」

「誰かに何か言われた?」

などと聞いてみてもよいでしょう。

ただし、本人が話したくない場合には無理に聞き出す必要はありません。

発音以外の理由で話したくないこともあるため、最初から原因を決めつけないことも大切です。


「気にしなくていい」だけで終わらせない

子どもが、「うまく言えないから話したくない」と言ったとき、

「そんなの気にしなくていいよ」と励ましたくなるかもしれません。

しかし、本人にとっては実際に困っていることです。

まずは、

「うまく言えないのが気になるんだね」

「聞き返されるのが嫌だったんだね」

と、その気持ちを受け止めることが大切です。

そのうえで、「どうしたら話しやすくなるかな」と一緒に考えていきます。


発音より「話してくれたこと」に反応する

子どもが話してくれたときには、発音の正確さより内容に反応しましょう。

例えば、「今日ね、学校で……」と話し始めたら、

「それでどうなったの?」「面白かった?」と会話を続けます。

途中で発音の間違いがあっても、意味が分かるのであればそのまま聞きます。

「正しく話せたから聞いてもらえる」のではなく、「話したいことがあるから聞いてもらえる」という経験を増やすことが大切です。


毎回発音を訂正しない

発音を気にしている子どもに対して、「今の音、違ったよ」「もう一回言って」と頻繁に訂正すると、さらに発音へ注意が向くことがあります。

家庭で構音訓練を行っている場合には、

発音練習の時間は発音を意識する
普段の会話では内容を大切にする

と分けるとよいでしょう。

一日中、自分の発音をチェックしながら話す必要はありません。


「ちゃんと話して」と求めない

聞き取りにくいと、

「もっとちゃんと話して」

「はっきり言って」

「ゆっくり言えば言えるでしょ」

と言いたくなることがあります。

しかし、構音そのものに難しさがある場合には、本人が頑張ったからといってすぐ正しい発音になるとは限りません。

本人なりに一生懸命話していることもあります。

具体的な構音練習は専門家と行い、普段の会話では伝えたい内容を受け止めることを優先します。


話すことを無理強いしない

発音を気にしている子どもに、

「ちゃんと挨拶しなさい」

「自分で言いなさい」

「みんなの前で話してみて」

と強く求めると、人前で話すことへの負担が大きくなる場合があります。

もちろん、話す機会をすべて避け続ければよいという意味ではありません。

まずは安心できる家族との会話など、話しやすい場面を大切にしながら、必要に応じて少しずつ場面を広げていきます。


話さないことを叱らない

子どもが質問されても答えなかったとき、「聞かれているんだから答えなさい」と叱るのは避けたいところです。

発音を気にして声が出にくくなっている場合、叱られることでさらに話すことへの不安が強くなる可能性があります。

本人がどのような場面なら話しやすいのかを確認していきましょう。


発音をからかったり真似したりしない

家族に悪気がなくても、

「またその言い方してる」

「赤ちゃんみたいでかわいい」

と笑ったり、誤った発音を真似したりすることは避けましょう。

特に、すでに本人が発音を気にしている場合には注意が必要です。

きょうだいや祖父母にも、発音を笑ったり真似したりしないよう伝えておくとよいでしょう。


家族が先回りして全部話さない

反対に、子どもが話しにくそうだからといって、保護者がすべて代わりに話すことにも注意が必要です。

例えば店員から、「どちらがいいですか?」と聞かれた瞬間に、保護者が、「この子はこっちです」と答えてしまうと、本人が伝える機会がなくなります。

少し待って本人が答えられそうなら待ち、難しい場合には必要な分だけ助けます。


発音以外の方法で伝えてもよい

うまく伝わらないときには、必ず発音だけで伝える必要はありません。

例えば、

  • 指さす
  • ジェスチャーを使う
  • 絵を描く
  • 写真を見せる
  • 文字を書ける子なら書いて伝える

といった方法もあります。

「発音がうまくできなければ伝えられない」ではなく、伝える方法はいくつもあると知ることも、子どもの安心につながります。


「伝わった」という経験を増やす

発音に自信をなくしている子どもには、正しく発音できた経験だけでなく、「自分の話が相手に伝わった」という経験が重要です。

家庭では、

「そうだったんだね」

「教えてくれてありがとう」

「それ、もっと聞きたいな」

など、話してくれたこと自体に反応します。

話すことが「発音を評価される時間」ではなく、「自分の考えを誰かと共有できる時間」になるようにします。


得意なことにも目を向ける

発音の相談や構音訓練が続くと、家庭でも「発音」が子どもの大きなテーマになりやすくなります。

しかし、子どもには発音以外にもさまざまな得意なことがあります。

絵が好き、運動が得意、昆虫に詳しい、工作が好き、友達に優しいなど、その子のさまざまな面に目を向けることも大切です。

家庭で発音の話題ばかりにならないようにしましょう。


構音訓練でも「できたこと」を確認する

構音訓練を受けている場合には、「また間違えた」という部分だけを見るのではなく、

「前は言えなかった音が言えるようになった」

「単語なら上手に言えるようになった」

「自分で間違いに気付けた」

など、小さな変化にも目を向けます。

ただし、発音ができるかどうかだけで本人を評価することは避けましょう。


園や学校で何か起きていないか確認する

家庭では問題がないのに、突然話したがらなくなった場合には、園や学校での出来事が関係している可能性もあります。

例えば、

  • 発音を友達に真似された
  • 聞き返されることが続いた
  • 音読で発音を指摘された
  • 発表でうまく伝わらなかった
  • 発音についてからかわれた

などです。

本人の話だけで分からない場合には、必要に応じて担任や園の先生に普段の様子を確認します。


からかいがある場合は大人が対応する

友達から発音をからかわれている場合、

「気にしないようにしよう」

「自分で言い返しなさい」

だけで本人に対応を任せるのは適切ではありません。

まず子どもの話を聞き、必要に応じて園や学校と情報を共有します。

子どもが安心して話せる環境を整えることは、周囲の大人の役割でもあります。


発表や音読が負担になっている場合

発音を気にする子どもにとって、授業中の発表や音読が大きな負担になることがあります。

その場合には、「どんな場面が一番嫌なのか」を確認してみましょう。

必要に応じて学校と相談し、本人の状態に合わせた対応を検討します。

すべての発表を免除するということではなく、安心して参加できる方法を考えることが大切です。


「発音が治れば話せる」とだけ考えない

発音を気にして話したがらない場合、「発音が良くなれば全部解決する」と考えてしまうことがあります。

もちろん、構音訓練によって発音が改善することは重要です。

しかし同時に、現在の発音のままでも安心して話せる環境をつくることも必要です。

発音が改善するまでコミュニケーションを我慢する必要はありません。


話したがらない状態が続く場合は相談する

発音を気にする様子が強く、

  • 家族以外とほとんど話さなくなった
  • 園や学校で話すことを強く避ける
  • 発表や音読を極端に怖がる
  • 発音しにくいことばを避ける
  • 「話したくない」と繰り返す
  • 発音について強い不安を訴える

といった状態が続く場合には、言語聴覚士や園・学校などに相談するとよいでしょう。

必要に応じて、ほかの専門職と連携して支援を考えることもあります。


家庭で意識したいこと

発音を気にしている子どもには、次のような関わりを意識するとよいでしょう。

  • 話したくない気持ちを否定しない
  • 発音を毎回訂正しない
  • 話している内容に反応する
  • 発音をからかったり真似したりしない
  • 人前で話すことを無理強いしない
  • 本人が話すまで少し待つ
  • 必要なら指さしなど別の伝え方も使う
  • 園や学校で困っていないか確認する
  • 「伝わった」という経験を大切にする

家庭だけで対応が難しい場合には、専門家と一緒に考えていきましょう。


まとめ

発音を気にして話したがらない子どもに対しては、正しい発音を求めることを急ぐより、「今の話し方でも安心して話していい」と感じられる環境をつくることが大切です。

子どもが、「うまく言えないから話したくない」と言ったときには、

「気にしなくていい」とすぐに打ち消すのではなく、

「うまく言えないのが気になっているんだね」と、まず気持ちを受け止めましょう。

そして家庭では発音を毎回訂正せず、「何を伝えようとしているのか」に耳を傾けます。

また、園や学校でのからかいや発表・音読などが負担になっている場合には、子どもだけに解決を任せず、周囲の大人が環境を整えることも必要です。

構音訓練によって発音の改善を目指すことと、現在の発音のままでも安心してコミュニケーションできることは、どちらも大切にしていきましょう。

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