「ちゃんと話して」と言わない方がいい?家庭で避けたい声かけ
子どもの発音が聞き取りにくいと、
「ちゃんと話して」
「もっとはっきり言って」
「もう一回、正しく言って」
と声をかけたくなることがあります。
保護者としては「少し意識すれば上手に言えるのでは?」と思うかもしれません。
しかし、構音に難しさがある子どもにとって、「ちゃんと話して」という声かけだけでは、何をどう直せばよいのか分からないことがあります。
家庭では発音を正しくさせることだけに意識を向けず、子どもが安心して話せるやり取りを大切にしましょう。
この記事では、子どもの発音が気になるときに避けたい声かけと、代わりにどのように対応すればよいのかを解説します。
「ちゃんと話して」では何をすればよいか分からない
「ちゃんと話して」という言葉は、大人には分かりやすいように感じます。
しかし、子どもからすると、
「舌をどう動かせばいいの?」
「どの音が違ったの?」
「話す速さのこと?」
と、具体的に何を変えればよいのか分からないことがあります。
構音障害がある場合には、本人が注意するだけでは正しい音をつくれないこともあります。
そのため、「ちゃんと」という抽象的な指示を繰り返しても、発音の改善にはつながらない場合があります。
「はっきり話して」も同じ
発音が不明瞭だと、「もっとはっきり話して」と言うこともあるでしょう。
早口や小さな声が聞き取りにくさの原因であれば、話し方を少し変えることで伝わりやすくなることがあります。
しかし、「さ」を「た」と発音するなど、構音そのものに誤りがある場合には、はっきり話そうとしても同じ誤りが出ることがあります。
本人なりには、すでにはっきり話しているつもりかもしれません。
「ゆっくり言えばできるでしょ」と決めつけない
「ゆっくり話してみて」という声かけが役立つ場合もあります。
ただし、ゆっくり話せば必ず正しい発音になるわけではありません。
例えば、「さかな」→「たかな」という誤りがある子どもが、
「た・か・な」とゆっくり言っても、目的となる「さ」の構音方法が身についていなければ正しい発音にはなりません。
話す速さと構音の問題は分けて考える必要があります。
「違うよ」を毎回繰り返さない
子ども:「たかながいた」
保護者:「違うよ。さかな」
このような訂正を一度したからといって、すぐ問題になるわけではありません。
しかし、日常会話で発音を間違えるたびに、
「違うよ」と指摘される状態は避けた方がよいでしょう。
本人は魚を見たことを伝えたかったのに、毎回発音だけに注目されると、話した内容より「正しく言えたか」が中心になってしまいます。
「もう一回」を何度も繰り返さない
正しく言えるまで、
「もう一回」
「もう一回」
「もう一回言ってみて」
と繰り返すことにも注意が必要です。
まだ正しい音をつくれない段階なら、何度繰り返しても同じ発音になる可能性があります。
できない音を何度も言わせるより、必要な場合には構音訓練の中で正しい音のつくり方を練習します。
「○歳なのにまだ言えないの?」は避ける
発音の発達には個人差があります。
そのため、
「もう5歳なのに言えないの?」
「小学生になるのに大丈夫?」
など、年齢と比較して本人に伝えることは避けたいところです。
必要であれば大人同士で発達の目安について確認し、相談を検討します。
本人に不安を与える必要はありません。
ほかの子どもと比べない
きょうだいや友達と比べる声かけにも注意します。
「お兄ちゃんはこの年には言えていたよ」
「○○ちゃんは上手に話せるのにね」などです。
同じ年齢でも発音の発達には違いがあります。
比較されることで「自分は話すのが苦手」と感じる可能性もあります。
「赤ちゃんみたい」は言わない
幼い発音を、「赤ちゃんみたいでかわいい」と表現することがあります。
大人には褒め言葉のつもりでも、本人が発音を気にしている場合には嫌な言葉になることがあります。
特に年齢が上がってくると、「幼い話し方」と評価されることを気にする子どももいます。
発音の誤りを年齢や能力と結びつけないようにしましょう。
「練習してないから言えないんだよ」も避けたい
構音訓練を受けていると、「家でちゃんと練習しないから」と言いたくなることがあるかもしれません。
しかし、構音訓練の進み方には個人差があります。
練習量だけでなく、音の種類、誤り方、現在の訓練段階などさまざまな要因が関係します。
発音の誤りを本人の努力不足として扱わないことが大切です。
「ちゃんと聞いていた?」と責めない
子どもが大人の発音を正しく聞き取れているように見えても、自分では正しく発音できないことがあります。
そのため、
「何回も聞かせたでしょ」
「ちゃんと聞いていた?」
と責める必要はありません。
音を聞き分けることと、その音を自分の口で正しくつくることは別の力です。
「恥ずかしいから直そう」と言わない
「小学校で恥ずかしいよ」
「友達に笑われるよ」
など、不安を利用して練習を促すことも避けましょう。
構音訓練は、子どもを恥ずかしがらせるために行うものではありません。
「もっと伝わりやすくなるように練習してみよう」
など、本人が取り組みやすい説明をするとよいでしょう。
では、どのように返せばいい?
日常会話では、子どもの発音を毎回訂正する必要はありません。
例えば、
子ども:「たかな見た!」
保護者:「さかなを見たんだね。大きかった?」
と返します。
間違いを指摘するのではなく、正しいことばを自然に使いながら会話を続けます。
発音よりも、「魚を見た」という子どもの伝えたい内容を受け止めます。
聞き取れなかったときは?
本当に何を言ったのか分からない場合には、聞き返して構いません。
「ちゃんと話して」ではなく、「ごめんね、もう一回教えてくれる?」と聞きます。
それでも分からなければ、
「○○のこと?」
「こっちとこっち、どっち?」
「指さして教えてくれる?」
など、別の方法を使います。
何度も同じ発音を繰り返させるより、どうすれば伝わるかを一緒に考えることが大切です。
構音訓練中なら具体的な声かけをすることもある
普段の会話と構音訓練の時間は分けて考えます。
構音訓練では、
「舌の位置を確認してみよう」
「最初の音をもう一度やってみよう」
など、その子が現在取り組んでいる課題に合わせた具体的な手掛かりを出すことがあります。
ただし、家庭で自己流の指導をするのではなく、言語聴覚士などから示された方法を使うことが基本です。
「練習の時間」と「普通に話す時間」を分ける
構音訓練をしている子どもにとって、家庭でのすべての会話が発音練習になってしまうと負担になることがあります。
例えば、「今から5分だけ発音の練習をしよう」と時間を区切ります。
練習が終わったら、発音を細かくチェックせず普通に会話します。
このように、
練習するときは発音に注目する
普段は話の内容に注目する
というメリハリをつけるとよいでしょう。
家族全体で声かけをそろえる
保護者は言い直させていなくても、きょうだいや祖父母が毎回、
「違うよ」「ちゃんと言って」と指摘していることがあります。
そのため、
「普段は発音を直さなくて大丈夫」
「間違っても普通に話を続けよう」
と家族で共有しておくとよいでしょう。
細かな対応を完全に統一する必要はありませんが、子どもが家庭内で繰り返し発音を評価される状態は避けたいところです。
家庭で避けたい声かけをまとめると
例えば、次のような言葉には注意しましょう。
- 「ちゃんと話して」
- 「もっとはっきり言って」
- 「違うよ」
- 「正しく言って」
- 「もう一回」と何度も繰り返す
- 「○歳なのにまだ言えないの?」
- 「○○ちゃんは言えるよ」
- 「赤ちゃんみたい」
- 「練習してないからでしょ」
- 「友達に笑われるよ」
もちろん、一度言ってしまったからといって大きな問題になるということではありません。
家庭で繰り返し使う声かけとしては避け、子どもが安心して話せるやり取りへ変えていくことが大切です。
まとめ
子どもの発音が聞き取りにくいと、「ちゃんと話して」「もっとはっきり言って」と言いたくなることがあります。
しかし、構音に難しさがある場合、本人はすでに一生懸命話しており、「ちゃんと」と言われても何を変えればよいのか分からないことがあります。
日常会話では、
子ども:「たかながいた!」
保護者:「さかながいたんだね」
というように、正しいことばを自然に返しながら、話の内容を受け止める方法があります。
一方、構音訓練では、その子の段階に合わせて具体的な方法で正しい発音を練習します。
家庭で大切なのは、「発音を直す時間」と「安心して自由に話せる時間」を分けることです。
正しい発音を身につけることを目指しながらも、子どもが「間違えたら注意される」と心配せず、家族にたくさん話せる環境を守っていきましょう。

