子どもの発音を家族がからかったり真似したりしてはいけない理由
子どもが「さかな」を「たかな」、「せんせい」を「てんてい」のように発音すると、大人にはかわいらしく聞こえることがあります。
思わず同じ発音を真似したり、「また『たかな』って言った」と笑ったりすることもあるかもしれません。
家族に悪気はなくても、子どもの発音をからかったり、面白がって真似したりすることは避けた方がよいでしょう。
子ども自身は、ふざけてそのように発音しているとは限りません。本人なりに正しく話そうとしている場合があります。
今回は、子どもの発音を家族がからかったり真似したりしない方がよい理由と、家庭での適切な関わり方について解説します。
子どもはわざと間違えているわけではない
まず知っておきたいのは、構音の誤りは本人が意図的に行っているとは限らないということです。
例えば「さかな」を「たかな」と言う子どもに、
「ちゃんと『さかな』って言えばいいのに」と思うかもしれません。
しかし、本人にとっては「さ」という音を正しくつくること自体が難しい場合があります。
舌の位置や動かし方など、さまざまな要因が関係します。
そのため、単純に「気をつければ正しく言える」とは限りません。
本人は正しく言っているつもりのこともある
子ども自身が、自分の発音の誤りに気付いていないこともあります。
本人は「さかな」と言っているつもりなのに、周囲には「たかな」と聞こえていることがあります。
そのような状態で家族から、「今また『たかな』って言った!」と笑われても、子どもには何がおかしいのか分からないかもしれません。
「普通に話しただけなのに笑われた」という経験になってしまうこともあります。
「かわいいから真似する」にも注意
幼い子どもの発音は、家族にとってかわいらしく感じられるものです。
そのため、からかうつもりはなくても、
子ども:「たかな!」
家族:「そうだね、たかなだね」
と同じ発音を真似することがあります。
家族にとっては愛情表現でも、子どもの年齢が上がり、自分の発音を意識するようになると、嫌だと感じる場合があります。
発音の誤りを面白さとして扱わないことが大切です。
発音を気にしすぎるようになる可能性がある
発音するたびに笑われたり真似されたりすると、
「また間違えたら笑われるかな」
と考えるようになる子どももいます。
すると、話す内容より、
「ちゃんと言わなきゃ」
「このことばは言いたくない」
と発音そのものへ注意が向くことがあります。
構音訓練では正しい発音を意識する時間も必要ですが、日常生活のすべてで発音を気にしながら話す必要はありません。
話すことを避けるようになることも
発音について繰り返し指摘されると、子どもによっては人前で話すことを避けるようになる可能性があります。
例えば、
- 発表したがらない
- 知らない人と話したがらない
- 発音しにくいことばを避ける
- 小さな声で話す
- 「言いたくない」と言う
といった変化がみられることがあります。
もちろん、こうした行動がすべて発音のからかいによって起こるわけではありません。
ただし、発音について本人が気にしている場合には、周囲の関わり方にも配慮が必要です。
きょうだいが真似することもある
家庭では、保護者だけでなく、きょうだいが発音を真似することもあります。
例えば兄や姉が、「○○って『さかな』言えないんだよ」と面白がることがあります。
子ども同士では悪気なく行っている場合もありますが、本人が嫌がっているのであれば、大人が止める必要があります。
「発音の間違いを笑わない」
「言い方ではなく、何を話しているのか聞こう」と家庭内で共有しておくとよいでしょう。
祖父母などにも伝えておく
祖父母や親戚から、
「まだその言い方しているの?」
「赤ちゃんみたいでかわいいね」
と言われることもあります。
本人が発音を気にしている場合には、このような言葉も負担になることがあります。
必要であれば、
「今、発音について練習しているから、間違えても指摘しなくて大丈夫だよ」
などと家族に伝えておきましょう。
発音を真似しても正しい発音の練習にはならない
子どもの誤った発音を大人が繰り返すことは、構音訓練にはなりません。
例えば子どもが、「たかな」と言ったとき、大人も、「たかなだね」と返すより、
「さかながいるね」と自然に正しいことばを返す方がよいでしょう。
子どもに言い直しを強制する必要はありません。
間違えたときは自然に正しいことばを返す
家庭では、次のような対応ができます。
子ども:「たかな見たよ」
保護者:「さかなを見たんだね。どこで見たの?」
発音の誤りを指摘することなく、正しい発音を自然に示しながら会話を続けます。
大切なのは「たかな」という誤りではなく、「魚を見た」という子どもの話したい内容です。
発音ではなく話の内容に反応する
子どもが、「きょうね、○○ちゃんと遊んだ!」と話したときには、
「何して遊んだの?」
「楽しかった?」
と内容に反応します。
発音が少し間違っていても、意味が分かるのであれば会話を続けて構いません。
家庭でのコミュニケーションが、常に「発音チェックの時間」にならないことが大切です。
発音練習の時間とは分けて考える
構音訓練を受けている場合には、家庭でも発音を意識して練習することがあります。
その時間には、言語聴覚士から示された方法で正しい発音を確認します。
一方で、
発音練習の時間 → 発音に注目する
普段の会話 → 話している内容に注目する
というように分けるとよいでしょう。
発音を練習することと、普段の会話を楽しむことは両立できます。
子ども自身が発音を笑う場合は?
子ども自身が、「ぼく『さかな』って言えない!」と笑って話すこともあります。
この場合でも、大人が必要以上に一緒になって笑う必要はありません。
「そうなんだね」
「今練習している音だね」
など、自然に受け止めます。
本人が困っている様子があれば、「言いにくいことばがあるんだね」と気持ちに寄り添うことも大切です。
友達からからかわれている場合
家庭だけでなく、園や学校で友達から発音を真似されたり、からかわれたりすることもあります。
その場合には、「気にしなくていい」だけで終わらせず、まず本人の話を聞きましょう。
そして必要に応じて、担任や園の先生などに状況を伝えます。
発音の問題を本人だけで解決させるのではなく、周囲の大人が安心して話せる環境を整えることが重要です。
家族が大切にしたいこと
家庭では、次のような関わりを意識するとよいでしょう。
- 発音の間違いを笑わない
- 面白がって真似しない
- きょうだいにも同じことを伝える
- 「赤ちゃんみたい」などと評価しない
- 間違えるたびに指摘しない
- 正しいことばを自然に返す
- 発音より話している内容に注目する
- 本人が気にしている場合は気持ちを聞く
発音の正確さだけでなく、子どもが安心してコミュニケーションできる環境をつくることが大切です。
まとめ
子どもの発音の間違いは、大人にはかわいらしく聞こえることがあります。
しかし、本人はふざけているのではなく、正しく発音しようとしても難しい場合があります。
家族が発音を笑ったり、面白がって真似したりすると、子どもによっては発音を必要以上に意識したり、人前で話すことに不安を感じたりする可能性があります。
子どもが「たかな」と言ったときには、
「また『たかな』って言った!」と笑うのではなく、「さかなを見たんだね」と自然に正しいことばを返し、そのまま会話を続けるとよいでしょう。
家庭は、発音の正しさを常にチェックされる場所ではなく、多少言いにくい音があっても、自分の話を安心して聞いてもらえる場所であることが大切です。

