子どもの発音が気になるとき家庭でまず大切にしたいこと
「同じ年齢の子と比べて発音が幼い気がする」「何を言っているのか分からないことがある」「このまま様子を見ても大丈夫?」
子どもの発音が気になり始めると、保護者は「家で練習させた方がいいのでは」と考えることがあります。
しかし、家庭でまず大切にしたいのは、発音を正しく直すことより、子どもが安心して話せる環境を守ることです。
発音には発達の途中でみられる誤りもあります。また、発音がうまくできない理由によって必要な対応も異なります。
この記事では、子どもの発音が気になったとき、家庭でどのように関わればよいのかを解説します。
子どもの発音には発達の途中がある
子どもは最初からすべての音を大人と同じように発音できるわけではありません。
ことばを覚えていくのと同時に、舌や唇などを使った発音も少しずつ発達していきます。
そのため幼い時期には、
「さかな」→「たかな」
「つくえ」→「ちゅくえ」
など、大人とは異なる発音がみられることがあります。
発音を間違えているからといって、すぐに構音障害と判断できるわけではありません。
まず子どもの「伝えたいこと」を受け止める
家庭で特に大切なのが、発音よりも子どもの伝えたい内容に注目することです。
例えば子どもが、「きょう、たかな見た!」と言ったとします。
このとき、「『たかな』じゃなくて『さかな』でしょ」と発音を訂正するより、「さかなを見たんだね。大きかった?」と会話を続けます。
子どもにとって大切なのは、「魚を見た」という経験を家族に伝えられたことです。
発音を毎回直さなくてもよい
発音が気になると、間違えるたびに訂正したくなるかもしれません。
しかし、「違うよ」「もう一回言って」「舌をこうして」と毎回言われると、子どもが発音を気にしすぎることがあります。
特に、まだ正しい音を出すことが難しい段階では、何度言い直しても同じ発音になることがあります。
日常会話では、発音の正確さよりもコミュニケーションを優先してよいでしょう。
正しい発音を自然に聞かせる
発音を間違えたときは、子どもに言い直させるのではなく、大人が正しいことばを自然に返す方法があります。
例えば、
子ども:「たかながいた」
保護者:「さかながいたんだね」
という形です。
「違う」と指摘せず、会話の中で自然に正しい発音を聞かせることができます。
ただし、正しい発音を聞かせれば必ず発音が改善するという意味ではありません。構音訓練が必要な場合には、専門的な評価や練習が必要になります。
分からないときは聞き返しても大丈夫
発音が不明瞭で、何を言っているのか分からないこともあります。
そのようなときに、分かったふりをする必要はありません。
「ごめんね、もう一回教えてくれる?」
「○○のことかな?」
「こっち?それともこっち?」
など、子どもが伝えやすい方法を使います。
大切なのは、「ちゃんと発音して」ではなく、「あなたの話を分かりたい」という姿勢で聞き返すことです。
家族が発音をからかわない
子どもの独特な発音は、家族にとってかわいらしく感じることがあります。
しかし、「また『たかな』って言った」と笑ったり、わざと同じ発音をまねしたりすることは避けた方がよいでしょう。
本人が発音の違いを意識し始めると、からかわれたと感じる可能性があります。
きょうだいにも、「発音を笑わず、話している内容を聞こう」と伝えておくとよいでしょう。
「ゆっくり話して」だけでは解決しないこともある
発音が聞き取りにくいと、「もっとゆっくり話して」と声をかけることがあります。
早口によって聞き取りにくくなっている場合には役立つこともありますが、構音そのものに問題がある場合、ゆっくり話すだけで正しい発音になるとは限りません。
「落ち着いて話せばできるはず」と考えず、その子がどのような発音をしているのかを見ることが大切です。
自己流の発音練習を始めすぎない
インターネットなどで、「舌を動かす体操」「ストローで吹く練習」「この音は舌をここに置く」といった情報を見つけることがあります。
しかし、同じ音が言えない子どもでも、誤り方や原因は異なります。
必要のない練習を繰り返すより、気になる状態が続いている場合には、まず専門家に発音を確認してもらう方がよいでしょう。
家庭で発音の様子を観察しておく
専門家へ相談するときには、家庭での情報が役立ちます。
例えば、
- どの音が言いにくそうか
- いつ頃から気になっているか
- 家族には通じるか
- 家族以外にはどの程度通じるか
- 本人が発音を気にしているか
- 園や学校から指摘されたことがあるか
などです。
細かく記録する必要はありませんが、気付いたことを簡単にメモしておくと相談しやすくなります。
動画や音声を残しておく方法もある
家庭では発音が気になるのに、相談場面ではあまり話さない子どももいます。
そのような場合、普段の会話を録音・録画しておくと参考になることがあります。
例えば絵本について話している場面や、遊びながら自然に会話している場面などです。
相談先で提示してよいか確認したうえで、普段の発音を伝える資料として利用できます。
発音だけでなく聞こえも確認する
発音が気になる場合には、聞こえにも目を向けます。
例えば、「呼んでも気付かないことがある」「何度も聞き返す」「テレビの音を大きくする」「中耳炎を繰り返している」などがあれば、聞こえについても相談するとよいでしょう。
子どもは周囲の音声を聞きながらことばや発音を身につけるため、聴力の確認が必要になる場合があります。
ことば全体の発達も見る
発音だけを見るのではなく、
「ことばをどのくらい理解しているか」
「どのくらい話せているか」
「文章で話せているか」
「やり取りができているか」
など、ことば全体の発達も大切です。
発音だけが気になる場合と、ことばの発達全体について気になる場合では、相談や支援の考え方も変わります。
本人が困っているかにも注目する
発音の状態だけでなく、本人がどう感じているかも重要です。
例えば、
「友達に聞き返される」
「発音を笑われた」
「言いにくいことばを避ける」
「人前で話したがらなくなった」
といった様子がある場合には、早めに相談を検討してもよいでしょう。
発音の正確さだけではなく、生活やコミュニケーションへの影響を見ることが大切です。
気になったら相談してよい
「まだ小さいから相談するほどではないかも」と迷う保護者もいます。
しかし、相談したからといって、必ずすぐに構音訓練を始めるわけではありません。
評価した結果、「年齢的にもう少し様子を見ましょう」となることもあります。
反対に、特徴的な発音の歪みや口腔の問題などが疑われ、詳しい評価を勧められることもあります。
迷っている段階で相談することにも意味があります。
相談先にはどんなところがある?
地域によって異なりますが、子どもの発音については、
- 言語聴覚士がいる医療機関
- 耳鼻咽喉科
- ことばの教室
- 自治体の発達相談
- 児童発達支援などの相談機関
などが相談先になることがあります。
発音だけでなく、聞こえや口腔の状態などが気になる場合には、必要に応じて医療機関での評価につながることもあります。
家庭は「安心して話せる場所」にする
発音が気になると、家庭でも「訓練しなければ」と考えてしまいがちです。
しかし、家庭の重要な役割の一つは、子どもが、
「今日こんなことがあった」
「これが好き」
「これを見て!」
と安心して話せる環境をつくることです。
発音を間違えるたびに止められるより、「もっと話したい」と思えるやり取りを増やすことも、子どものコミュニケーションにとって大切です。
家庭でまず意識したいこと
子どもの発音が気になったら、まず次のような関わりを意識するとよいでしょう。
- 発音より伝えたい内容を受け止める
- 間違えるたびに言い直させない
- 正しいことばを自然に返す
- 分からないときは優しく聞き返す
- 発音をからかったりまねしたりしない
- 自己流の訓練を急いで始めない
- 聞こえやことば全体の発達にも目を向ける
- 気になる状態が続けば専門家へ相談する
特に、「家庭で何とか治さなければ」と保護者だけで抱え込まないことが大切です。
まとめ
子どもの発音が気になったとき、家庭でまず大切にしたいのは、発音を正しく直すことより、安心して話せる環境をつくることです。
例えば「たかな」と言ったときには、「違うよ。『さかな』って言って」と毎回言い直させるのではなく、
「さかなを見たんだね」と話の内容を受け止めながら、正しいことばを自然に返すことができます。
また、発音の誤りには発達途中のものもあれば、専門的な評価や構音訓練が必要なものもあります。
家庭だけで判断して練習を繰り返すのではなく、気になる状態が続く、聞き取りにくさが強い、本人が困っているなどの場合には専門家へ相談するとよいでしょう。
家庭では、発音の正しさだけを見るのではなく、子どもが「話したい」「伝えたい」と思えるコミュニケーションを大切にしていきましょう。

