構音訓練の家庭練習はどのくらいやればいい?
「発音の練習は毎日した方がいい?」「1日何分くらいやればいい?」「たくさん練習した方が早く上達する?」
構音訓練を受けている子どもの保護者から、家庭練習の量について相談されることがあります。
家庭で繰り返し練習することは、訓練で身につけた発音を定着させるうえで役立ちます。
しかし、長時間やればやるほど早く改善するとは限りません。
大切なのは、子どもの年齢や訓練段階に合わせて、正しい方法で無理なく続けることです。
この記事では、構音訓練の家庭練習をどのくらい行えばよいのかについて解説します。
家庭練習はなぜ必要?
言語聴覚士などとの構音訓練は、週1回や月数回など限られた時間になることがあります。
訓練室で正しい「さ」を出せるようになっても、それだけで日常生活の発音がすぐに変わるとは限りません。
家庭でも適切な練習を行うことで、訓練で身につけた発音を繰り返し使う機会を増やすことができます。
特に単音から単語、文章、会話へと発音を広げていく段階では、日常生活の中で正しい発音を使う経験も大切になります。
1日何分くらい練習すればいい?
「必ず1日○分」という決まりはありません。
子どもの年齢、集中力、発音の状態、訓練内容などによって適切な時間は異なります。
一般的には、家庭では短時間で集中して取り組むことを基本にするとよいでしょう。
例えば幼い子どもであれば、5分程度でも十分に練習できることがあります。
10~20分と長く続けて集中力が落ちるのであれば、短時間で終えた方が効果的な場合もあります。
毎日やった方がいい?
家庭練習の頻度についても、一律の決まりはありません。
言語聴覚士から毎日の課題を出されている場合には、その指示に沿って行います。
毎日行う場合でも、一度に長時間練習する必要はありません。
例えば、1日5分程度を無理なく続けるという方法もあります。
週末にまとめて30分練習するより、短時間でも定期的に正しい発音を経験する方が取り組みやすい子どももいます。
「時間」より「正しく練習できているか」が大切
家庭練習では、練習時間だけを見るのではなく、内容にも注意します。
例えば「さ」を練習している子どもが、間違った「さ」を50回繰り返しても、正しい発音の練習になっているとは限りません。
むしろ、正しくできる課題を、少ない回数でも丁寧に行うことが重要です。
家庭では、言語聴覚士との訓練で成功している課題を中心に行います。
訓練室でできたことを家庭で復習する
家庭練習では、新しい発音を保護者が教えるというより、訓練でできたことを復習すると考えると分かりやすいでしょう。
例えば訓練で、
「さ」が正しく出せた
↓
「さる」「さかな」が言えるようになった
という段階であれば、家庭でも指定された単音や単語を練習します。
まだ訓練でも難しい文章や会話を、家庭で無理に練習する必要はありません。
子どもの集中力に合わせる
子どもの集中力には個人差があります。
最初の3分間は楽しそうに取り組んでいても、5分を過ぎると明らかに集中できなくなる子どももいます。
その場合には、「あと10分やらなければ」と続ける必要はありません。
集中できているうちに終えることも、家庭練習を継続するためには大切です。
回数を決める方法もある
時間ではなく、回数で区切る方法もあります。
例えば、
- 「さ」を5回
- 練習単語を5個
- 短い文章を3つ
などです。
「今日はこれができたら終わり」と分かると、子どもにとっても見通しが立ちやすくなります。
遊びの中に取り入れてもよい
幼い子どもでは、机に座って発音練習を続けることが難しい場合があります。
そのような場合には、
- 絵カードを使う
- すごろくをしながら発音する
- カードを引いて単語を言う
- 正しく言えたらシールを貼る
など、遊びの要素を取り入れる方法があります。
大切なのは、たくさん言わせることではなく、正しい発音を楽しく繰り返すことです。
できない日は休んでも大丈夫
毎日練習すると決めても、子どもが疲れていたり、眠かったり、機嫌が悪かったりする日もあります。
そのような日に無理に練習しても、集中できないことがあります。
家庭練習が親子双方の負担になるほど厳密に行う必要はありません。
長期的に続けられる方法を考えることが大切です。
発音を間違えるたびに練習しない
家庭練習で特に注意したいのが、日常会話の中で発音を間違えるたびに言い直させることです。
例えば食事中や遊んでいるときに、「今の『さ』違ったよ。もう一回」と何度も指摘されると、子どもが話すこと自体を嫌がる可能性があります。
発音を練習する時間と、自由に会話する時間を分けることが大切です。
家庭では「教える人」になりすぎない
保護者が、「舌をもっと上にして」「そこじゃない」「息をもっと強く出して」と細かく指導する必要はありません。
誤り方によって適切な舌の位置や息の使い方は異なります。
家庭では言語聴覚士から教えてもらった方法を使い、うまくいかない場合には次回の訓練で相談しましょう。
うまくいかない日は記録しておく
家庭では正しく言えない単語があった場合、無理に何度も練習するより、
「この単語は難しかった」
と記録しておく方法もあります。
次回の訓練で言語聴覚士に伝えれば、なぜ難しいのか確認できます。
家庭での様子は、訓練内容を調整するための重要な情報になります。
家庭練習の量は訓練段階でも変わる
構音訓練の初期と後半では、家庭練習の内容も変わります。
例えば、
初期
単音や決められた単語を短時間練習する
中期
さまざまな単語や短い文章を練習する
後期
文章や会話の中で正しい発音を使う
というように変化していきます。
同じ「5分間」でも、訓練段階によって内容は異なります。
家庭練習の一例
例えば、1日5分程度であれば、
1分:正しい音を確認する
2分:練習している単語を言う
1分:短い文章で使う
1分:できた音を確認して終わる
といった方法があります。
ただし、これはあくまで一例です。
単音を練習している段階の子どもに文章練習をさせる必要はありません。
その子が現在取り組んでいる段階に合わせます。
「もっとやりたい」で終わるくらいでもよい
幼い子どもの家庭練習では、嫌になるまで続けるより、「もう少しやりたい」くらいで終える方法もあります。
発音練習は一度で終わるものではなく、一定期間続けることが多いためです。
毎回長時間頑張ることよりも、嫌にならず継続できることを大切にしましょう。
まとめ
構音訓練の家庭練習には、「必ず1日○分」という決まりはありません。
子どもの年齢や集中力、発音の状態、現在の訓練段階によって適切な量は異なります。
家庭では、例えば1日5分程度の短時間から始め、無理なく続ける方法があります。
ただし、時間以上に重要なのが、正しい方法で練習できているかという点です。
間違った発音を長時間繰り返すより、訓練で正しくできた音や単語を短時間練習する方が適切です。
また、日常会話のすべてを発音練習にする必要はありません。
発音を意識する時間と、発音を気にせず親子で会話を楽しむ時間を分けることも大切です。
家庭練習は保護者が新しい発音を教える時間ではなく、言語聴覚士との訓練で身につけたことを、無理のない範囲で定着させていく時間と考えるとよいでしょう。

