側音化構音・口蓋化構音などの歪みはどう訓練する?
「音の置き換えではなく、なんとなく濁って聞こえる」「『し』や『ち』が独特な音になる」という場合には、発音の「歪み」がみられていることがあります。
子どもの構音障害でみられる代表的な歪みには、側音化構音や口蓋化構音などがあります。
こうした歪みでは、単に正しい音を繰り返して言わせるだけでは改善しにくいことがあります。舌の位置や形、息の通り道など、これまで身につけてきた発音方法そのものを修正する必要があるためです。
この記事では、側音化構音・口蓋化構音などの歪みに対する構音訓練の基本的な考え方を解説します。
「歪み」とはどのような発音?
構音障害の誤り方は、大きく「置換」「省略」「歪み」などに分けられます。
置換は、「さかな」→「たかな」のように、ある音が別の音へ置き換わるものです。
一方、歪みでは「さ」でも「た」でもないような、通常の日本語の音とは異なる発音になります。
子ども自身は目的となる音を言っているつもりでも、舌の位置や息の流れなどが通常とは異なるため、独特な音として聞こえます。
側音化構音とは?
側音化構音では、舌の使い方や息の流れが通常とは異なり、息が口の中央ではなく側方へ流れることで独特な歪みが生じます。
「い」「き」「ぎ」「し」「じ」「ち」などでみられることがあります。
例えば「し」が、濁ったような音や「ひ」に近いような独特な音に聞こえることがあります。
左右どちらかに口元が偏るような動きがみられる場合もありますが、外見だけで判断することはできません。
口蓋化構音とは?
口蓋化構音では、本来よりも舌の中央から奥の部分を使って音をつくる傾向があります。
舌先を使うべき音でも舌の前方が十分に使われず、舌の中央部などが口蓋へ接触することで、独特な歪みが生じます。
「た行」「だ行」「な行」「ら行」などでみられることがあります。
側音化構音と同様、単純に「もう一度正しく言って」と促すだけでは修正が難しいことがあります。
まず「どのように発音しているか」を確認する
歪みの訓練で重要なのは、最初に現在の発音方法を把握することです。
同じ「し」が歪んで聞こえても、すべての子どもが同じ舌の使い方をしているわけではありません。
言語聴覚士は、
- どの音が歪んでいるか
- 舌をどのように使っているか
- 息がどの方向へ流れているか
- どの音なら正しく出せるか
- 単音・単語・会話でどう変化するか
などを確認します。
そのうえで、正しい音を引き出しやすい方法を考えます。
いったん単語から離れて練習することがある
例えば「し」が歪んでいるからといって、「しか、しお、しま、しろ……」と単語を何度も繰り返すことが適切とは限りません。
すでに歪んだ「し」のつくり方が定着している場合、その方法を何度も繰り返すことになるからです。
そのため、いったん単語から離れ、正しい音を一音でつくるところから練習することがあります。
側音化構音では息の通り道を確認する
側音化構音では、舌の形や位置とともに、息がどのように流れているかを確認します。
目標となる音によって方法は異なりますが、口の中央から適切に息を出す感覚をつくり、側方へ息が流れる発音から正しい構音へ切り替えていきます。
ただし、「まっすぐ息を出せば治る」という単純なものではありません。
舌の位置・舌の形・息の流れを組み合わせて調整することが重要です。
口蓋化構音では舌の使い方を変える
口蓋化構音では、これまで使っていた舌の動きとは異なる構音方法を身につけていきます。
例えば、本来舌先を使う音であれば、舌先をどこに置くのか、舌の中央や奥が必要以上に持ち上がっていないかなどを確認します。
子どもに、「舌の先はどこにあるかな?」などと確認しながら、目的となる音に必要な舌の使い方へ近づけます。
鏡を使うこともある
舌や口元の動きを確認するため、鏡を使う場合があります。
言語聴覚士の口元と自分の口元を比べながら、
「舌が見えているかな?」
「口が横に偏っていないかな?」
などを確認します。
ただし、口の奥にある舌の状態は鏡では十分に見えません。そのため、鏡だけではなく、音や舌の感覚なども手掛かりにします。
正しい音を別の音から引き出すこともある
目的となる音を直接言わせると、いつもの歪んだ発音が出てしまうことがあります。
その場合、子どもがすでに正しく言える別の音や動きを利用し、少しずつ目的となる音へ近づけることがあります。
どの音を利用するかは、対象となる構音や子どもの状態によって異なります。
歪みの訓練では、「何度言わせるか」より「どうすれば正しい音を引き出せるか」が重要になります。
正しい音が一度出たら再現できるようにする
訓練中に正しい音が出たら、「今の音はよかったね」と確認します。
さらに、「舌はどこにあった?」「息はどんな感じだった?」など、正しく発音できたときの感覚を確認することがあります。
一度だけ偶然出た音を、自分で繰り返し再現できるようにするためです。
単音から単語、文章へ広げる
正しい音を一音で安定して出せるようになったら、
単音 → 単語 → 短い文章 → 長い文章 → 会話
と少しずつ広げていきます。
歪んだ発音を長く使っていた場合、一音では正しく言えても、会話になると以前の発音へ戻ることがあります。
そのため、正しい発音方法を日常会話へ定着させるところまで練習していきます。
「舌の筋力不足」が原因とは限らない
側音化構音や口蓋化構音があると、「舌の力が弱いのでは?」と思うことがあります。
しかし、これらの歪みは単純な舌の筋力不足として説明できるものではありません。
舌を上下左右に動かす体操をたくさん行えば、それだけで正しい発音になるわけでもありません。
重要なのは、目的となる音に必要な構音方法を身につけることです。
家庭で自己流に直そうとしすぎない
歪みのある発音は、保護者が聞いても「何か違う」と分かる一方で、舌が実際にどのような動きをしているか判断するのは難しいことがあります。
そのため、「もっと舌を引っ込めて」「もっと強く息を出して」など、自己流で修正することには注意が必要です。
言語聴覚士から家庭練習を提案されている場合には、訓練で正しくできた方法を短時間練習するとよいでしょう。
何度も言い直させない
日常会話で歪みが聞こえるたびに、
「違うよ」
「もう一回」
「ちゃんと言って」
と言い直させる必要はありません。
まだ正しい構音方法が十分に身についていなければ、本人もどのように直せばよいのか分かりません。
普段の会話では内容を大切にし、発音練習は決められた時間に行う方が取り組みやすくなります。
歪みは自然に治る?
幼い子どもの発音には発達途中の誤りもありますが、側音化構音や口蓋化構音などの特徴的な歪みは、
一般的な発音発達の途中でみられる置換とは異なることがあります。
長く続いている場合や、聞き取りにくさがある場合には、一度専門家へ相談するとよいでしょう。
訓練が必要か、経過を見てよいかは、年齢や発音の状態などを含めて判断します。
まとめ
側音化構音や口蓋化構音などの歪みでは、単純に正しい単語を繰り返すのではなく、
現在どのような方法で音をつくっているのかを確認し、正しい構音方法を新しく身につけていくことが重要です。
側音化構音では舌の状態と息の流れ、口蓋化構音では舌先を含めた舌の使い方などに注目しながら、正しい音を引き出します。
そして、
正しい一音をつくる → 安定させる → 単語 → 文章 → 会話
と段階的に広げていきます。
歪みは子どもによって発音の仕方が異なるため、「この体操をすれば治る」という一律の方法があるわけではありません。
その子がどのように音をつくっているのかを評価し、それに合わせて訓練方法を選ぶことが大切です。

