子ども自身が発音の違いに気付いたとき保護者はどう対応する?

構音訓練を始める前後や、子どもの成長に伴って、

「ぼく、『さ』がうまく言えない」
「○○ちゃんと僕の言い方、違うね」
「今、ちゃんと言えた?」

など、子ども自身が自分の発音に気付くことがあります。

保護者としては、「気にさせない方がいいのかな」「正しい発音をその場で教えた方がいい?」と迷うかもしれません。

自分の発音の違いに気付くこと自体は、必ずしも悪いことではありません。構音訓練を進めるうえでは、自分の音と正しい音の違いに気付くことが役立つ場合もあります。

一方で、発音を必要以上に気にして話すことを避けるようになる場合には配慮が必要です。

今回は、子ども自身が発音の違いに気付いたときの保護者の対応について解説します。


発音の違いに気付くことは悪いことではない

子どもが、「ぼく、『さかな』ってうまく言えない」と話すと、保護者は心配になるかもしれません。

しかし、自分の発音と周囲の発音の違いに気付くことそのものは、問題ではありません。

むしろ構音訓練では、「今の音と目標となる音は違う」と気付けることが、正しい発音を身につけるための一つの手掛かりになることがあります。

大切なのは、気付いたことを「恥ずかしい」「自分は話すのが下手」といった否定的な気持ちにつなげないことです。


「そんなことないよ」と否定しなくてもよい

子どもが、「ぼく、ちゃんと『さ』が言えない」と言ったとき、

「そんなことないよ!ちゃんと言えてるよ」と励ましたくなることがあります。

しかし、実際に本人が発音の違いを感じているのであれば、その気付きを無理に否定する必要はありません。

例えば、

「そうだね。『さ』はちょっと言いにくい音なんだね」

「自分で気付いたんだね」

と自然に受け止めます。

そのうえで、「少しずつ練習していけばいいよ」などと伝えるとよいでしょう。


「よく気付いたね」と受け止める

構音訓練中の子どもが、自分の発音の違いに気付いた場合には、

「今の音、自分で違うって分かったんだね」と、その気付きを認めることもできます。

これは「間違えたこと」を褒めるのではありません。

自分の発音を聞いて違いに気付けたことを認めています。

特に、正しい音と誤った音を聞き分ける練習をしている段階では、このような気付きが訓練につながることがあります。


「どこが違ったと思う?」と一緒に考えることもできる

本人が発音について前向きに興味を持っている場合には、

「どんなふうに違ったと思う?」と一緒に考えてみてもよいでしょう。

ただし、普段の会話のたびに行う必要はありません。

構音訓練を受けている場合には、言語聴覚士から教わった方法に沿って確認します。

発音への気付きが、そのまま家庭での厳しい発音チェックにならないようにしましょう。


自分で言い直したときは自然に受け止める

子どもが、「たかな……あ、さかな!」と自分で言い直すことがあります。

そのときは、

「そうだね」

「自分で言い直せたね」

など、自然に反応すれば十分です。

毎回、「すごい!今の完璧!」と大げさに反応する必要はありません。

発音を特別な出来事にしすぎず、自然に会話を続けることも大切です。


正しく言えたときだけ褒めすぎない

構音訓練では「できた」という経験を積むことは大切です。

一方、家庭で正しい発音が出るたびに、

「今の言い方すごく上手!」

「ちゃんと言えたね!」

と繰り返すと、子どもによっては「いつも発音をチェックされている」と感じることがあります。

発音練習の時間には具体的にフィードバックし、普段の会話では話の内容を中心に受け止めるという使い分けがおすすめです。


「じゃあ練習しよう」と毎回訓練にしない

子どもが自分の発音について話したからといって、

「じゃあ今から練習しよう!」

と毎回構音訓練につなげる必要はありません。

子どもは単純に、「自分と友達の言い方が違う」と気付いて話しただけかもしれません。

まずは、「そう感じたんだね」と受け止めます。

本人が練習したがっている場合や、家庭練習の時間であれば取り組んでもよいでしょう。


「何で僕だけ言えないの?」と聞かれたら

子どもから、「どうして僕は『さ』が言えないの?」と聞かれることもあります。

年齢に合わせて、簡単に説明するとよいでしょう。

例えば、

「音によって舌の使い方が違うんだよ。『さ』は今ちょっと難しいんだね」

「まだ舌の動かし方を練習しているところなんだよ」

などです。

「発音が下手だから」「練習が足りないから」と本人の能力や努力の問題として説明することは避けます。


友達との違いに気付いた場合

園や学校に通うようになると、友達との発音の違いに気付くことがあります。

「○○くんは言えるのに、僕は言えない」

と言われた場合には、「そうだね。今はその音が少し言いにくいんだね」と受け止めます。

そして必要に応じて、「言いやすくなるように練習しているところだよ」と説明します。

「○○くんと比べなくていい」とすぐに話を終わらせるより、本人が何を感じているのか聞いてみることも大切です。


「恥ずかしい」と言ったら気持ちを受け止める

子どもが、「うまく言えなくて恥ずかしい」と言うこともあります。

その場合、「全然恥ずかしくない!」とすぐに否定するより、

「言いにくいのが気になっているんだね」

「みんなに聞かれるのが嫌だったの?」

など、まず気持ちを受け止めます。

そのうえで、どのような場面で困っているのかを確認します。


「友達に笑われた」と言われたら

発音の違いに気付くきっかけが、友達からの指摘やからかいであることもあります。

子どもが、「○○って言ったら笑われた」と話した場合には、発音練習だけの問題として考えないことが大切です。

まず何があったのかを聞きます。

からかいが繰り返されている場合には、必要に応じて園や学校にも相談しましょう。

「正しく言えるようになれば笑われない」と、子どもだけに解決を求めないことが重要です。


「今の発音合ってた?」と何度も確認する場合

構音訓練が進むと、「今の『さ』合ってた?」と本人が確認することがあります。

練習中なら、

「今の音はよかったよ」

「少し舌の位置を確認してみよう」

など、具体的にフィードバックして構いません。

しかし、日常会話で何度も確認するようになっている場合には、発音を気にしすぎていないか様子を見ます。

「今は練習の時間じゃないから、普通にお話しして大丈夫だよ」

と伝える方法もあります。


自己修正できるようになるのは大切な変化

構音訓練が進んでくると、

「間違った音が出た」

「自分で気付く」

「正しい音に言い直す」

ということが増えてくる場合があります。

これは、練習した発音を日常会話へ広げていく過程でみられる大切な変化の一つです。

最初は大人に指摘されて修正していたものが、自分で気付いて修正できるようになっていきます。

さらに発音が自動化されてくると、毎回意識しなくても自然に正しい音が使えるようになっていきます。


気付きと「気にしすぎ」は分けて考える

発音の違いに気付くことと、発音を気にしすぎることは同じではありません。

例えば、「今の音、ちょっと違ったね」と自分で気付き、そのまま会話を続けられているのであれば、大きく心配する必要はありません。

一方で、

「間違えたら嫌だから話さない」

「みんなの前では言いたくない」

「このことばは言えないから使わない」

など、発音への意識によってコミュニケーションが制限されている場合には注意が必要です。


発音を気にしすぎている場合は相談する

次のような様子が続く場合には、構音訓練を担当している言語聴覚士などに相談してみるとよいでしょう。

  • 発音の間違いを極端に気にする
  • 何度も正しく言えたか確認する
  • 言いにくいことばを避ける
  • 人前で話したがらない
  • 音読や発表を嫌がるようになった
  • 発音について強く落ち込む
  • 友達からの指摘やからかいを気にしている

発音そのものだけでなく、子どもの気持ちや生活上の困りごとも含めて相談することが大切です。


家庭では「発音の気付き」を自然に扱おう

子どもが自分の発音の違いに気付いたとき、保護者が必要以上に慌てる必要はありません。

「気にしちゃダメ」と否定する必要も、

「じゃあ今すぐ直そう」と急いで練習させる必要もありません。

まず、「自分で違いに気付いたんだね」と自然に受け止めましょう。

そして、発音練習の時間には正しい音について一緒に確認し、普段の生活では発音ばかりを意識させず、会話そのものを楽しめる環境をつくります。


まとめ

子ども自身が発音の違いに気付くことは、必ずしも悪いことではありません。

構音訓練では、自分の発音と正しい発音の違いに気付き、自分で修正できるようになることが、正しい発音を日常会話へ広げていく一つのステップになる場合があります。

子どもが、「ぼく、『さ』がうまく言えない」と言ったときには、

「そんなことないよ」と否定するのではなく、

「『さ』が言いにくいって自分で気付いたんだね」と自然に受け止めるとよいでしょう。

一方で、発音を気にするあまり、話すことや音読、発表を避けるようになっている場合には注意が必要です。

大切なのは、発音の違いに気付けることを訓練につなげながらも、発音を気にしすぎてコミュニケーションの楽しさを失わないことです。

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