発音の「般化」とは?練習した音を他のことばへ広げる方法
構音訓練では、「練習した単語なら正しく言えるのに、ほかのことばでは元の発音に戻ってしまう」ということがあります。
例えば「さ」の練習で「さかな」を正しく言えるようになっても、「さくら」や「やさい」では「たくら」「やたい」になってしまうことがあります。
構音訓練の目標は、練習した単語だけを上手に言えるようになることではありません。身につけた正しい発音を、練習していないことばや文章、日常会話へ広げていくことが重要です。
このような広がりを、構音訓練では「般化」と呼びます。
発音の「般化」とは?
般化とは、訓練で身につけた発音が、直接練習していないことばや場面でも使えるようになることです。
例えば「さ」の訓練で、
「さかな」
「さる」
「さいふ」
を練習したとします。
その後、練習していなかった、
「さくら」
「サンダル」
などでも自然に正しい「さ」が出るようになれば、般化が進んでいると考えられます。
つまり、単語を一つずつ暗記しているのではなく、正しい「さ」の発音方法そのものを身につけてきた状態です。
なぜ練習した単語だけ上手になるの?
構音訓練の初期には、発音するときに強く意識しています。
例えば「さかな」を言う前に、「舌の位置に気をつけよう」「息を前に出そう」などと考えています。
何度も練習した「さかな」では正しくできても、突然「さくら」と言おうとすると、以前から使っていた発音方法へ戻ることがあります。
これは珍しいことではありません。
正しい発音を一つの単語で使えることと、さまざまなことばで自由に使えることは別の段階だからです。
まず複数の単語へ広げる
般化を促すためには、一つの単語だけを繰り返すのではなく、少しずつ練習する単語を増やします。
例えば「さ」であれば、
- さかな
- さる
- さくら
- さいふ
- うさぎ
- やさい
などです。
さまざまな単語で正しい「さ」を使うことで、「この単語だけの発音」から「さという音の発音」へ広げていきます。
単語の中の位置を変える
同じ音でも、単語のどこに入っているかによって発音のしやすさが変わることがあります。
例えば「さ」であれば、
語頭: さかな、さくら
語中: うさぎ、やさい
など、条件を変えて練習します。
最初は言いやすい位置から始め、徐々にさまざまな位置でも正しく使えるようにします。
前後の音が違う単語も練習する
目的となる音の前後にどのような音があるかによっても、発音の難しさは変わります。
ある単語では簡単に言えても、別の単語では以前の発音へ戻ることがあります。
そのため、同じような単語だけではなく、少しずつ異なる音の組み合わせを経験します。
これによって、さまざまな条件でも正しい発音を使えるようにしていきます。
「練習していない単語」を言ってみる
般化を確認するためには、あえて訓練していない単語を使うことも大切です。
例えば「さかな」「さる」「さいふ」を練習した後、初めて、
「さくら」と言ってもらいます。
正しく言えれば、練習した単語以外にも発音が広がっていることが分かります。
間違えた場合も問題ありません。その単語を新しい練習材料として使いながら、正しい発音を広げていきます。
単語から文章へ広げる
単語で般化が進んできたら、文章へ広げます。
例えば、「さかなが泳いでいる」「さくらが咲いている」などです。
最初は練習した単語を使った短い文から始め、徐々に初めて見る文章や自分で考えた文章でも正しく発音できるか確認します。
自分で文章を考えてもらう
決められた文章を読むだけでは、日常会話とは少し違います。
そこで、絵を見ながら、「何をしているところ?」と質問し、子ども自身に文章を考えてもらいます。
内容を考えながら正しい発音を使うため、音読や復唱より難しくなります。
この段階が安定すると、自由会話へ近づいていきます。
会話の中へ広げる
さらに、
- 今日あったことを話す
- 好きなものについて話す
- 絵本の内容を説明する
- ゲームをしながら話す
など、自然な会話の中で目的となる音を使います。
会話では何を話すかを考える必要があるため、発音だけに注意を向けることができません。
そのため、単語や文章では正しく言えていても、会話になると以前の発音へ戻ることがあります。
これも構音訓練の途中ではよくみられます。
場所や話す相手も変えていく
訓練室では正しく言えるのに、自宅や学校では元に戻ることもあります。
そのため般化では、ことばだけでなく、発音を使う場面を広げることも重要です。
例えば、
言語聴覚士との訓練
↓
家庭
↓
園・学校
↓
友達との会話
というように、さまざまな相手や環境でも正しい発音を使える状態を目指します。
自分で間違いに気付けることも大切
般化が進む過程では、子ども自身が発音を確認できることも重要です。
例えば、「たかな……あ、さかな」と自分で言い直せる場合があります。
最初から常に正しく言える必要はありません。
間違える → 自分で気付く → 正しく言い直す
という段階を経ながら、少しずつ正しい発音が定着していきます。
できなければ前の段階へ戻る
会話で誤りが多くなった場合には、無理に会話練習を続ける必要はありません。
例えば、
会話で難しい
↓
文章へ戻る
↓
それでも難しければ単語へ戻る
というように調整します。
正しくできる段階を確認してから、再び少しずつ難しくしていきます。
家庭は般化に大切な場所
訓練室で身につけた発音を日常生活へ広げるためには、家庭も重要な場所になります。
言語聴覚士から家庭練習が出ている場合には、訓練で正しく言えるようになった単語や文章を短時間練習します。
慣れてきたら、生活の中で使うことばへ少しずつ広げることもあります。
ただし、普段の会話すべてを発音練習にする必要はありません。
会話のたびに訂正しない
般化させようとして、子どもが話すたびに、
「今の発音違うよ」「もう一度言って」と訂正すると、話すこと自体が負担になる場合があります。
発音を意識する練習時間と、自由に会話を楽しむ時間を分けることが大切です。
家庭でどの程度声をかけるかは、現在の訓練段階について言語聴覚士と相談するとよいでしょう。
般化から「自動化」へ
般化が進んでも、最初は正しい発音を意識していることがあります。
さらに練習を重ねると、舌の位置や息の流れを考えなくても自然に正しい音が出るようになります。
このように、正しい発音を意識せず使える状態を自動化といいます。
構音訓練では、
正しい一音をつくる
↓
単語で使う
↓
さまざまな単語へ般化する
↓
文章・会話へ般化する
↓
意識しなくても使えるようになる
という流れで、日常的な発音へ定着させていきます。
まとめ
発音の「般化」とは、訓練で身につけた正しい発音を、練習していないことばや文章、日常会話などへ広げていくことです。
一つの単語が正しく言えるようになったら、
さまざまな単語 → 文章 → 自分で考えた発話 → 会話
と少しずつ条件を広げていきます。
さらに、訓練室だけではなく、家庭や園・学校などでも使えることを目指します。
構音訓練のゴールは、練習した単語を上手に言えることではありません。
初めて使うことばや普段の会話でも、身につけた正しい発音を使えるようになることが、般化の大きな目的です。

