単語から文章へ発音を広げるには?
「『さかな』だけなら正しく言えるのに、『さかなが泳いでいる』になると発音を間違えてしまいます」
構音訓練では、このようなことは珍しくありません。
単語で正しい発音ができるようになったら、次は文章の中でも正しい音を使えるようにしていきます。しかし、文章では発音だけでなく、内容を考えながら複数のことばを続けて話す必要があるため、単語よりも難しくなります。
そのため、短く簡単な文から始め、少しずつ長い文章や自分で考えて話す課題へ広げていくことが大切です。
この記事では、単語で身につけた発音を文章へ広げる方法について解説します。
単語で言えても文章では難しくなる
例えば「さ」を練習している子どもが、
「さかな」なら正しく言えるようになったとします。
ところが、「さかなが泳いでいる」と言うと、「さ」が以前の発音へ戻ることがあります。
文章になると、目的となる音だけでなく、ほかの音も次々と発音しなければなりません。
さらに「何を話すか」にも注意を向ける必要があります。
そのため、発音だけに集中できる単語より難しくなります。
まず短い文から始める
単語で安定してきたからといって、いきなり長い文章を練習する必要はありません。
例えば「さかな」なら、
「さかなです」
「さかながいる」
「さかなを見た」
など、短い文から始めます。
単語に少しだけことばを加えることで、難易度を小さく上げることができます。
練習した単語を文章に入れる
最初は、すでに正しく言える単語を使って文章をつくります。
例えば「さかな」「さくら」「うさぎ」が安定しているのであれば、
「さかながいる」
「さくらが咲いた」
「うさぎが走る」
などです。
まだ単語だけでも難しいことばを文章に入れるより、成功しやすい単語を使って文章練習を始める方が取り組みやすくなります。
言語聴覚士の後に続いて言う
文章練習の初期には、言語聴覚士が見本を示して復唱してもらうことがあります。
例えば、「さかなが泳いでいます」と見本を示し、子どもが続いて発音します。
見本を聞いた直後なので、練習している音に注意を向けやすくなります。
文を見ながら読む
文字を読める子どもでは、短い文章を音読する方法もあります。
文章の中に練習している音が含まれていることを確認しながら読みます。
必要に応じて目的となる文字に印をつけ、
「ここに『さ』があるね」と意識してから読むこともあります。
絵を見て文章をつくる
復唱や音読で正しく言えるようになったら、自分で文章を考える課題へ進みます。
例えば魚が泳いでいる絵を見せて、
「何をしているところ?」と質問します。
子どもが、「さかなが泳いでいる」と自分で文章をつくります。
決められた文章を読むよりも、内容を考えながら正しい発音を使う必要があるため難易度が上がります。
少しずつ文章を長くする
短い文で安定してきたら、徐々に文章を長くします。
例えば、
さかなです
↓
さかなが泳いでいます
↓
大きなさかなが海を泳いでいます
というように進めます。
一度に難しくするのではなく、子どもが正しく発音できる範囲を少しずつ広げます。
練習する音の数を増やす
最初は、目的となる音が文章に一つだけ入っている文から始めることがあります。
慣れてきたら、
「さくらのそばで、さかなの絵を描きました」
のように、目的となる音が複数含まれる文章へ進めます。
正しい音を何度も使う必要があるため、難易度が上がります。
話す速さにも注意する
文章になると、急いで話したときに以前の発音へ戻ることがあります。
その場合には、最初は少しゆっくり話します。
ただし、最終的には普段の自然な速さで話せることが目標です。
正しい発音が安定してきたら、徐々に自然な話し方へ戻していきます。
間違えたら単語へ戻ってもよい
文章で誤りが増えた場合には、無理に何度も文章を言わせる必要はありません。
例えば、「さかなが泳いでいる」の「さ」が崩れた場合には、一度、
「さ」
↓
「さかな」
↓
「さかなが泳いでいる」
と戻って確認します。
単語と文章を行き来しながら練習することも大切です。
自分で発音を確認する
文章練習が進んできたら、
「今の文章はどうだった?」
と子ども自身に確認してもらうことがあります。
最初は言語聴覚士が間違いを伝えていても、徐々に自分で誤りに気付けるようにします。
自分で、「今の『さ』は違った」と気付いて言い直せるようになることは、会話への定着にもつながります。
音読だけで終わらせない
文章を正しく音読できても、普段の会話で同じように発音できるとは限りません。
音読では、話す内容がすでに決まっているからです。
そのため、
復唱 → 音読 → 絵の説明 → 自分で文章をつくる
というように、少しずつ自発的な発話へ近づけていきます。
質問に答える練習もできる
文章から会話へ近づける方法として、質問に答える練習があります。
例えば、「好きな野菜は何?」「昨日どこへ行った?」など、練習している音を含むことばが自然に出やすい質問をします。
子どもは答える内容を考えながら発音するため、文章の復唱よりも実際の会話に近い練習になります。
練習していない文章でも確認する
決められた文章だけを繰り返していると、その文章だけ上手に言えるようになることがあります。
そこで、初めて見る文章を読んだり、新しい絵について説明したりします。
練習していない文章でも正しい発音が使えれば、発音の般化が進んでいると考えられます。
最終的には会話へつなげる
文章練習は最終目標ではありません。
最終的には、
- 家族との会話
- 友達との会話
- 園や学校での発言
- 遊びながらの会話
などでも自然に正しい発音を使えることを目指します。
文章で安定してきたら、徐々に発音以外のことにも注意を向けなければならない自由会話へ進めていきます。
家庭では短い文から練習する
家庭練習を行う場合にも、いきなり長文を読ませる必要はありません。
言語聴覚士から示された単語を使って、
「○○がある」
「○○を食べる」
など、短い文から練習すると取り組みやすくなります。
また、日常会話のすべてを発音練習にする必要はありません。
練習時間と普段の会話を分けることが大切です。
単語から文章への基本的な流れ
大まかには、
単語で正しく発音する
↓
短い文を復唱する
↓
短い文を音読する
↓
文章を少しずつ長くする
↓
絵を見て自分で文章をつくる
↓
質問に文章で答える
↓
初めての文章でも正しく発音する
↓
自由な会話へ広げる
という流れになります。
子どもの状態によって、必要な段階を選びながら進めます。
まとめ
単語で正しい発音ができるようになっても、文章になると以前の発音へ戻ることがあります。
文章では複数のことばを続けて発音しながら、話す内容にも注意を向ける必要があるためです。
そのため、最初は**「さかながいる」のような短い文から始め、少しずつ文章を長くしていきます。**
さらに、
復唱 → 音読 → 自分で文章をつくる
と進めることで、徐々に日常会話へ近づけていきます。
大切なのは、決められた文章を上手に言えるようになることだけではありません。
単語で身につけた正しい発音を、自分で考えた文章や普段の会話でも自然に使えるようにすることが、文章練習の大きな目的です。

