構音検査ではどんなことをするの?
「構音検査では、子どもに何をしてもらうのでしょうか?」
「まだ小さい子どもでも検査を受けられますか?」
子どもの発音が気になって言語聴覚士などへ相談すると、必要に応じて「構音検査」を行います。
構音検査では、いろいろなことばを発音してもらい、どの音を正しく言えるのか、どの音をどのように間違えるのかを詳しく確認します。
しかし、単純に「○か×か」をつける検査ではありません。
例えば、絵を見て自分から言ったときには間違えるのに、言語聴覚士の発音をまねすると正しく言える子どももいます。また、一音では言えても、単語や文章になると間違えることもあります。
このような違いを確認することで、その子がどの段階まで正しい発音を身につけているのかを考えることができます。
この記事では、子どもの構音検査では実際にどのようなことをするのか、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
構音検査とは?
構音検査とは、子どもの発音の状態を詳しく調べるための検査です。
日本語には「か」「さ」「た」「な」「は」「ま」「ら」など、さまざまな音があります。
構音検査では、それらの音を含んだことばを子どもに発音してもらい、
- 正しく発音できているか
- どの音を間違えるか
- どのように間違えるか
- どの条件なら正しく言えるか
などを確認します。
検査結果は、構音訓練が必要かどうか、どの音から練習するかなどを考える材料になります。
構音検査は誰が行う?
発音についての詳しい評価は、言語聴覚士(ST)などが行います。
言語聴覚士は、子どもが発音した音を聞き取り、どのような構音になっているのかを分析します。
必要に応じて耳鼻咽喉科医、歯科医師、形成外科医などと連携し、発音の背景に聞こえや口腔内の形態などの問題がないか確認することもあります。
最初から「検査らしい検査」をするとは限らない
小さな子どもの場合、初めて会った人の前で緊張して話さないことがあります。
そのため、最初から絵カードを何枚も見せて答えてもらうとは限りません。
まず、
- 好きな遊びをする
- おもちゃについて話す
- 保護者と一緒に会話する
- 絵本を見る
などを通して、子どもが安心して話せるようにすることがあります。
自然に出てきたことばも、発音を評価する大切な情報になります。
① 絵を見て名前を言ってもらう
構音検査でよく行われる方法の一つが、絵を見て名前を言ってもらう課題です。
例えば、子どもに身近な物の絵を見せ、「これは何かな?」と尋ねます。
子どもがその絵の名前を答えたときの発音を確認します。
この方法では、大人の発音を聞く前に、子どもが普段どのようにその単語を発音しているのかを確認できます。
なぜ大人が先に答えを言わないの?
例えば「さかな」の発音を調べたいとします。
最初から、「これは『さかな』だね。『さかな』って言ってみて」
と伝えると、子どもは言語聴覚士の発音を聞いてからまねすることになります。
すると、普段は「たかな」と言っている子どもでも、一時的に「さかな」と言えることがあります。
そのため、まず大人が正しい発音を聞かせず、子ども自身に名前を言ってもらうことがあります。
このように自分からことばを言うことを自発呼称といいます。
② 名前が分からないときはヒントを出す
絵を見せても、その名前が分からないことがあります。
これは必ずしも発音の問題ではありません。
例えば、その物を知らなかったり、名前を思い出せなかったりすることもあります。
その場合には、言語聴覚士が意味のヒントを出すなどして、目的となる単語を引き出すことがあります。
それでも難しい場合には、正しい単語を聞かせて復唱してもらうこともあります。
③ 大人の発音をまねしてもらう
子ども自身では目的のことばを言えなかった場合や、自発呼称で発音を間違えた場合には、言語聴覚士の発音を聞いてまねしてもらうことがあります。
これを復唱といいます。
例えば、「さかなって言ってみて」と正しい発音を聞かせます。
このとき、
自発呼称では「たかな」
↓
復唱では「さかな」
となる場合があります。
反対に、復唱しても「たかな」になることもあります。
この違いは、発音の状態を考える重要な情報になります。
自発呼称と復唱は何が違う?
自発呼称では、子どもが自分の中にあることばの音を使って発音します。
復唱では、大人が発音した音を聞き、それをまねします。
そのため、両方を比べることで、「正しい音を聞けば言えるのか」「正しい音を聞いても言えないのか」などを確認できます。
構音訓練を考えるうえでも大切なポイントです。
④ 一つの音だけ言ってもらう
単語で発音を間違える場合には、一つの音だけ取り出して確認することがあります。
例えば「さかな」が「たかな」になる子どもに、「さー」と発音してもらいます。
すると、「さ」だけなら言えるということがあります。
反対に、一音だけにしても「さ」を正しくつくれないこともあります。
一音で言えるかどうかは重要
「さ」だけなら言えるのに、「さかな」になると「たかな」になる場合、正しい「さ」という音そのものをつくる能力はあります。
しかし、単語の中で正しく使うところまでは定着していない可能性があります。
一方、「さ」だけでも正しい音をつくれない場合には、まず一音で正しい構音をつくるところから練習することがあります。
この違いによって、構音訓練の開始地点も変わります。
⑤ 母音と組み合わせて確認することもある
一つの子音でも、後ろにつく母音によって発音のしやすさが変わることがあります。
例えば、
- さ
- し
- す
- せ
- そ
がすべて同じように言えないとは限りません。
「さ」は言えるけれど「し」は難しい、といった場合もあります。
そのため、同じ行の音でもそれぞれ確認することがあります。
⑥ 単語の中で音を確認する
一音で正しく発音できても、単語では間違えることがあります。
そこで、目的となる音を含むさまざまな単語を使って確認します。
一つの単語だけ正しく言えたからといって、その音を完全に獲得しているとは判断できません。
複数の単語で発音を確認します。
単語のどこに音があるかも大切
同じ音でも、単語のどこに入っているかによって発音しやすさが変わることがあります。
例えば「さ」の場合でも、「さ○○」のように最初にある場合と、「○さ○」のように途中にある場合では、発音の難しさが異なることがあります。
そのため、検査では目的となる音が異なる位置に含まれる単語を使うことがあります。
⑦ 短い文章を言ってもらう
必要に応じて、単語だけではなく文章で発音を確認することがあります。
単語を一つずつゆっくり言えば正しく発音できても、文章では誤りが出る子どもがいるからです。
文章になると、多くの音を連続して素早く切り替える必要があります。
そのため、単語よりも実際の会話に近い状態で発音を確認できます。
⑧ 自然な会話を確認する
構音検査では、決められた課題だけではなく自然な会話も重要です。
例えば、「今日は何して遊んだの?」「好きな食べ物は何?」などと会話しながら発音を確認します。
自然な会話では、子ども自身が話す内容やことばを選ぶため、普段に近い発音が出やすくなります。
検査では言えるのに会話では間違えることもある
これは珍しいことではありません。
検査では、「さ」「さかな」と意識してゆっくり発音できても、会話では話す内容を考えながら次々にことばを発音する必要があります。
そのため、正しい発音がまだ十分に定着していないと、会話になると以前の発音へ戻ることがあります。
「検査で言えた=日常会話でも完全に言える」とは限りません。
発音をどのように記録する?
言語聴覚士は、子どもが発音したことばを聞きながら記録します。
単に、
○=正しい
×=間違い
と記録するだけではありません。
例えば、
「さ→た」
「ら→だ」
のように、どの音が何の音になったのかを確認します。
必要に応じて、通常の日本語の文字だけでは表しにくい発音について、より詳しく記録することもあります。
正しい音に近いけれど少し違う場合もある
子どもの構音障害では、別の日本語音へはっきり置き換わるとは限りません。
「さ」でも「た」でもないような、少し独特な音になることがあります。
このような歪みについても、実際の音を聞きながら評価します。
側音化構音など特徴的な構音が疑われる場合には、舌の位置や息の流れなども詳しく確認します。
同じことばを何度か言ってもらうこともある
発音の誤り方が安定しているか確認するため、同じことばを複数回言ってもらうことがあります。
例えば「さかな」を3回言ったとき、
「たかな」
「たかな」
「たかな」
と毎回同じ誤りになる場合もあれば、
「たかな」
「さかな」
「しゃかな」
のように変化する場合もあります。
このような違いも、発音の特徴を考える手掛かりになります。
口の動きを見ながら確認することもある
音によっては、子どもが発音しているときの口元を観察します。
例えば、
- 舌が前へ出ていないか
- 舌が横へ動いていないか
- 唇を適切に閉じているか
- あごが大きく動きすぎていないか
などです。
音を聞くだけではなく、「どこで、どのように音をつくっているのか」を確認することがあります。
息の出し方を確認することもある
「さ行」などの摩擦音では、息をどの方向へ出しているかが重要です。
本来は口の中央から前方へ息を出す音でも、構音の問題によって横方向へ息が流れていることがあります。
また、口蓋裂や鼻咽腔閉鎖機能の問題などが疑われる場合には、鼻から息が漏れていないか確認することもあります。
録音することもある?
医療機関や施設によっては、発音を詳しく分析したり、以前の発音と比較したりするために録音する場合があります。
録音しておくと、「以前は『さ』がほとんど言えなかったけれど、現在は単語では言えるようになった」
など、時間の経過による変化を確認しやすくなります。
録音・録画の方法や扱いは施設によって異なります。
検査にはどれくらい時間がかかる?
検査時間は、子どもの年齢や発音の状態、使用する検査、施設などによって異なります。
小さな子どもでは、集中できる時間も限られています。
一度ですべての課題を行うことが難しければ、無理に続けず、複数回に分けて評価する場合もあります。
大切なのは、できるだけ普段に近い発音を確認することです。
うまく答えられなくても大丈夫?
絵の名前が分からなかったり、緊張して話せなかったりしても、それだけで「発音に問題がある」と判断されるわけではありません。
言語聴覚士は、「名前を知らないのか」「発音できないのか」「緊張して話せないのか」などを区別しながら評価します。
子どもを試験のように採点することが目的ではありません。
保護者は検査前に練習させた方がいい?
基本的には、検査のために家庭で発音を練習させる必要はありません。
検査では、現在の自然な発音の状態を確認することが重要だからです。
直前に特定のことばを何度も練習すると、その単語だけ一時的に上手に言えることがあります。
普段どおりの状態で受けてもらう方が、現在の発音を把握しやすくなります。
構音検査の結果から何が分かる?
構音検査を行うことで、
- どの音を獲得しているか
- どの音に誤りがあるか
- どのような誤り方をしているか
- 一音なら正しく言えるか
- 復唱なら言えるか
- 単語や文章でどう変化するか
- 会話にどの程度影響しているか
などが分かります。
これらを年齢や発達などと合わせて考え、今後の対応を検討します。
検査結果は構音訓練にも役立つ
構音検査は、構音障害があるかどうかを判断するためだけに行うものではありません。
構音訓練を行う場合には、「どの音から始めるか」「一音から練習するか」「すでに単語まで言えるので文章から始めるか」などを考える材料にもなります。
また、一定期間訓練した後に再び評価することで、発音がどの程度変化したのかを確認することもできます。
検査だけで原因がすべて分かるとは限らない
構音検査によって発音の特徴を詳しく把握できますが、それだけですべての原因を確定できるわけではありません。
必要に応じて、
- 聞こえ
- 舌や唇の運動
- 歯並びやかみ合わせ
- 口蓋の状態
- 言葉の発達
なども確認します。
構音検査は、子どもの発音を総合的に評価するための重要な一部分です。
まとめ
構音検査では、絵を見て名前を言う自発呼称、大人の発音をまねする復唱、一つの音だけを発音する課題、単語・文章・会話など、さまざまな条件で子どもの発音を確認します。
大切なのは、「正しく言えたか、間違えたか」だけではありません。
自分から言うと間違えるけれど復唱なら言えるのか、一音なら言えるけれど単語では難しいのか、検査では言えるけれど会話では間違えるのかなどを詳しく確認します。
こうした違いを調べることで、子どもが正しい発音をどの段階まで身につけているのかが分かってきます。
また、発音を聞くだけでなく、必要に応じて舌や唇の使い方、息の流れなども確認します。
構音検査は子どもを「合格・不合格」で評価する試験ではありません。現在の発音の特徴を詳しく知り、その子に構音訓練が必要なのか、必要であればどこから練習を始めるのかを考えるための検査です。
子どもが緊張したり、絵の名前が分からなかったりする場合には、遊びや会話を取り入れるなど、その子に合わせた方法で評価していきます。

