子どもの構音訓練はどのような順番で進める?
「構音訓練では、最初から単語を何度も練習するのでしょうか?」
「一つの音が言えるようになったら、次は何をするのでしょうか?」
構音訓練は、いきなり難しい単語や会話から始めるわけではありません。子どもが現在どこまで正しく発音できるかを確認し、簡単な段階から少しずつ日常会話へ近づけていくのが基本です。
代表的には、
音を聞き分ける → 正しい音をつくる → 単語 → 文章 → 会話
という流れで進めます。
ただし、すべての子どもが同じ順番を最初から行うわけではありません。すでに一音では正しく言える子どもなら、単語から始めることもあります。
この記事では、構音訓練をどのような順番で進めるのかを解説します。
まず「どこから始めるか」を決める
構音訓練を始める前に、現在の発音を確認します。
例えば「さ行」に誤りがある場合でも、
- 「さ」だけでも正しく言えない
- 「さ」は言えるが「さかな」では間違える
- 単語なら言えるが文章では間違える
- 意識すれば言えるが普段の会話では間違える
など、子どもによって状態は違います。
そのため、すでにできている段階まで戻って練習する必要はありません。
「正しくできる段階の少し先」から始めることが基本になります。
① 正しい音を聞き分ける
必要に応じて、まず音を聞き分ける練習をします。
例えば「さ」を「た」と発音している場合、
「さ」と「た」を聞いて違いが分かるか確認します。
正しい発音を身につけるためには、自分が目指す音がどのような音なのかを聞き分けられることも大切です。
ただし、十分に聞き分けられている子どもでは、この段階を長く行わないこともあります。
② 正しい音のつくり方を練習する
次に、目的となる音を一音で正しく出すことを目指します。
例えば「さ」であれば、舌の位置や形、息の流れなどを調整します。
必要に応じて、
- 言語聴覚士の口元を見る
- 鏡で自分の口元を見る
- 舌の位置を確認する
- 息の方向を意識する
などの方法を使います。
ここでは、まず「正しい音を一回つくれること」が目標になります。
③ 一音を安定して出せるようにする
偶然一回だけ正しい音が出ても、すぐ単語へ進むとは限りません。
何度か繰り返しても同じ音を出せるようにします。
例えば「さ」が一回言えた後に、再び「た」へ戻ってしまう場合には、正しい舌の位置や息の出し方を確認します。
少しずつ、正しい音の出し方を自分で再現できるようにしていきます。
④ 母音と組み合わせて練習する
子音だけをつくる練習をした場合には、母音と組み合わせて日本語の音へ広げていきます。
例えば「s」の摩擦音をつくれるようになったら、
- さ
- す
- せ
- そ
などへつなげていきます。
「し」は舌の位置などがほかのさ行音とは異なるため、別に練習することもあります。
すべての音が同じ難しさとは限りません。
⑤ 単語で練習する
一音で安定して発音できるようになったら、単語の中で使います。
例えば「さ」であれば、
- さかな
- さくら
- やさい
- うさぎ
などです。
最初は発音しやすい単語から始め、少しずつ種類を増やします。
単語の中の位置も変える
同じ音でも、単語のどこにあるかによって言いやすさが違うことがあります。
例えば「さ」であれば、「さかな」のように最初にある場合と、「やさい」のように途中にある場合があります。
一つの単語だけで言える状態ではなく、さまざまなことばで正しく使えるようにしていきます。
⑥ 短い文で練習する
単語で安定してきたら、短い文へ進みます。
例えば、「さかながいる」「やさいを食べる」などです。
文章になると、目的となる音以外にも多くの音を続けて発音するため、単語より難しくなります。
最初は短い文から始め、徐々に長くしていきます。
⑦ 長い文章や音読へ広げる
短い文でも正しく言えるようになったら、さらに長い文章や音読などへ広げることがあります。
文章の中に練習している音が何度も登場すると、それだけ注意を保つ必要があります。
この段階では、「練習している音を意識しながら文章を話せるか」を確認します。
⑧ 自由な会話で使う
文章まで正しく発音できても、普段の会話では以前の発音へ戻ることがあります。
そこで、
- 今日あったことを話す
- 絵を説明する
- ゲームをしながら話す
- 質問に答える
など、自然な会話に近い状況で練習します。
決められた文章とは違い、何を話すかを考えながら発音する必要があるため、難易度が高くなります。
⑨ 練習していないことばにも広げる
構音訓練では、練習した単語だけ正しく言えるようになれば終了というわけではありません。
例えば「さかな」「さくら」を練習した後に、練習していない「サンダル」でも正しい「さ」が使えるようになることが大切です。
このように、身につけた発音がほかのことばや場面へ広がることを般化といいます。
⑩ 意識しなくても正しく発音できるようにする
最終段階では、発音について考えなくても自然に正しい音が出る状態を目指します。
訓練の途中では、「今は『さ』だから気をつけよう」と意識すれば正しく言えても、夢中になって話すと以前の発音へ戻ることがあります。
練習を重ねることで、発音への意識を少しずつ減らしていきます。
最終的には、友達や家族との普段の会話でも自然に正しい発音を使えることを目指します。
自分で間違いに気付くことも大切
訓練が進むと、「たかな……あ、さかな」のように、自分の発音の誤りに気付いて言い直せるようになることがあります。
最初は言語聴覚士に指摘されて修正していたものが、少しずつ自分で修正できるようになります。
こうした変化も、会話への定着に向けた大切な段階です。
途中で前の段階に戻ることもある
単語ではできていたのに、文章へ進んだ途端に誤りが増えることがあります。
その場合には、無理に文章練習を続けるのではなく、一度単語へ戻ることもあります。
例えば、
単語 → 短文 → 難しければ単語へ戻る → 再び短文
というように行き来しながら進めます。
構音訓練は、一方向に進み続けるものではありません。
すべての音を一度に練習するわけではない
複数の音に誤りがある場合でも、すべてを同時に練習するとは限りません。
まず一つの音や音のグループに取り組み、その音がある程度安定してから次の音へ進むことがあります。
一つの音を練習したことで、直接練習していない音まで改善することもあります。
子どもの発音全体を見ながら、訓練する順番を決めます。
家庭練習も現在の段階に合わせる
家庭で練習するときも、言語聴覚士との訓練で現在取り組んでいる段階に合わせることが大切です。
まだ一音を練習している段階なのに、家庭で長い文章を何度も言わせる必要はありません。
反対に、すでに文章までできている子どもが、一音だけを延々と繰り返す必要もありません。
今できることより少しだけ難しい課題を練習していきます。
進む速さには個人差がある
一音から単語へすぐ進める子どももいれば、一音を安定させるまで時間がかかる子どももいます。
また、単語や文章では早く正しくなっても、会話への定着に時間がかかる場合もあります。
そのため、「○回訓練すれば文章へ進む」と決まっているわけではありません。
その子の習得状況を確認しながら進めます。
構音訓練の順番をまとめると
一般的な流れは次のようになります。
① 正しい音を聞き分ける
↓
② 正しい音をつくる
↓
③ 一音で安定させる
↓
④ 母音と組み合わせる
↓
⑤ 単語で使う
↓
⑥ 短い文で使う
↓
⑦ 長い文章で使う
↓
⑧ 自由な会話で使う
↓
⑨ ほかのことばや場面へ広げる
↓
⑩ 意識しなくても自然に使えるようにする
ただし、必要のない段階は省いたり、途中で前の段階へ戻ったりしながら進めます。
まとめ
構音訓練は、最初から単語や会話を何度も練習するものではありません。
基本的には、正しい音を聞き分け、正しい音を一音でつくり、それを単語 → 文章 → 会話へ少しずつ広げていきます。
そして最終的には、練習したことばだけではなく、初めて話すことばや家庭・園・学校などさまざまな場面でも正しい発音を使えるようにしていきます。
重要なのは、決められた順番を急いで進むことではありません。
その子が現在どこまでできているのかを確認し、「できる段階の少し先」を練習することが大切です。

