正しい音を聞き分ける練習はなぜ必要?
「発音の訓練なのに、なぜ音を聞く練習をするのでしょうか?」
「舌や口の動きを練習するだけではだめなのでしょうか?」
構音訓練では、正しい音を発音する練習だけでなく、正しい音と誤った音を聞き分ける練習を行うことがあります。
例えば「さ」を「た」と発音する子どもに、「さ」と「た」を聞かせて、どちらの音なのかを判断してもらいます。
正しい発音を身につけるためには、舌や唇を動かす力だけではなく、「自分が目指す音はどんな音なのか」「今の自分の発音は正しいのか」を音として捉えることも大切だからです。
この記事では、構音訓練で音の聞き分けを行う理由と、どのような練習をするのかについて解説します。
発音することと音を聞くことはつながっている
私たちは話すとき、自分の声を耳で聞きながら発音しています。
例えば「さかな」と言ったとき、自分がどのような音を出したのかを聞き、その音が普段聞いている「さかな」と合っているかを確認しています。
このように、発音は口だけで行っているわけではありません。
聞くことと話すことを組み合わせながら、発音を調整しています。
正しい音のイメージをつくる
構音訓練では、まず「どの音を目指すのか」を理解することが重要です。
例えば「さ」と「た」は、舌の使い方だけでなく、聞こえてくる音も違います。
「さ」はこんな音、「た」はこんな音という違いを捉えられると、正しい「さ」をつくるときの手掛かりになります。
「さ」と「た」を聞き分ける練習
例えば「さ」を「た」と発音している場合、言語聴覚士が、
「さ」
「た」
のどちらかを言い、子どもにどちらだったか答えてもらうことがあります。
文字が読める子どもなら、「さ」「た」と書かれたカードを選ぶ方法もあります。
最初は違いが分かりやすい条件から始めます。
単語で聞き分けることもある
一音だけでなく、単語を使うこともあります。
例えば、「さかな」と「たかな」のように、目的となる音だけを変えて聞いてもらいます。
「どっちが『さかな』だった?」などと確認しながら、音の違いに注意を向けます。
他人の発音から始めることがある
最初から自分の発音を判断するのは難しいことがあります。
そのため、まず言語聴覚士が出した音について、
「正しい」
「違う」
と判断する練習から始めることがあります。
他人の音を聞き分けられるようになった後、自分の発音にも注意を向けていきます。
自分の発音に気付くためにも大切
構音訓練が進むと、自分が正しく発音できたかどうかを判断する力が重要になります。
例えば子どもが、「たかな……あ、さかな」と自分で言い直せるようになることがあります。
これは、自分が出した音と目標となる音の違いに気付けているということです。
こうした自己修正ができるようになると、日常会話への定着にもつながります。
言語聴覚士が毎回直さなくてもよくなる
訓練の初期には、「今の音は少し違ったね」と専門家が伝えることがあります。
しかし、最終的には言語聴覚士がいなくても正しい発音を使えるようになる必要があります。
そのためには、
「今の発音は合っていた」
「今は少し違った」
と自分で判断できることが役立ちます。
「聞こえている」ことと「聞き分ける」ことは同じではない
ここで注意したいのが、音の聞き分けが苦手だからといって、すぐに難聴を意味するわけではないことです。
音が耳に入っていることと、似たことばの音の違いに注意を向けて区別することは同じではありません。
例えば日常会話は問題なく聞こえていても、「さ」と「た」の違いを意識的に判断する課題では難しさがみられることがあります。
聞こえそのものが気になる場合は別に確認する
一方、
- 呼びかけへの反応が悪い
- 聞き返しが多い
- 中耳炎を繰り返している
- テレビの音量が大きい
などがある場合には、音の聞き分け練習だけではなく、聴力について確認することも大切です。
聞こえに問題がある場合には、耳鼻咽喉科などでの評価が必要になります。
聞き分けができないと発音できない?
必ずしもそうとは限りません。
構音障害がある子どもでも、正しい音と誤った音を十分に聞き分けられている場合があります。
その場合には、聞き分け練習を長く行う必要はありません。
むしろ、舌の位置や息の出し方など、実際に正しい音をつくる練習を中心に進めます。
すべての子どもに長期間行うわけではない
音の聞き分けは、構音訓練の重要な要素の一つですが、すべての子どもが同じ量を練習するわけではありません。
評価した結果、「正しい音は十分分かっている」と判断できれば、短時間の確認だけで次の段階へ進むこともあります。
反対に、音の違いを捉えることが難しい場合には、聞き分けを丁寧に練習します。
正しい音と間違った音を極端に示すこともある
訓練の初期には、違いを分かりやすくするために、言語聴覚士が音の特徴を少し強調して聞かせることがあります。
子どもが違いを理解してきたら、より自然な発音でも聞き分けられるか確認します。
最初から難しい課題にするのではなく、成功しやすい条件から進めます。
ゲーム形式で行うこともできる
幼い子どもでは、単純に何十回も音を聞かせると飽きてしまいます。
そこで、
- 正しい音ならカードを取る
- 聞こえた音の絵を選ぶ
- ○と×で答える
- すごろくと組み合わせる
など、遊びの要素を取り入れることがあります。
目的はゲームそのものではなく、音へ注意を向けながら違いを捉えることです。
自分の録音を聞く方法もある
年齢によっては、自分の発音を録音して聞く方法もあります。
発音している最中には気付かなかった違いでも、録音された音を聞くと、
「今のは違った」と分かることがあります。
自分の発音を客観的に聞くことで、自己修正につながる場合があります。
聞き分けから発音練習へつなげる
聞き分け練習だけを長く続けることが目的ではありません。
例えば、
「今のは『さ』だったね」
↓
「では同じように言ってみよう」
と、聞く課題から実際の発音へつなげていきます。
聞く → 発音する → 自分の音を聞く → 必要なら修正する
という流れをつくることが大切です。
会話への定着にも聞く力が役立つ
構音訓練の後半では、言語聴覚士が一回一回発音を確認してくれるわけではありません。
普段の生活では、自分自身で発音を調整していく必要があります。
自分の発音を聞いて、
「今は正しく言えた」
「少し違ったから言い直そう」
と判断できることは、正しい発音を会話へ定着させるうえでも役立ちます。
家庭で無理に聞き分け練習をする必要はない
家庭で保護者が自己流の聞き分け問題を大量に作る必要はありません。
どの音を比較するか、どの程度の難しさにするかは、子どもの構音の状態によって異なります。
家庭練習として提案された場合には、言語聴覚士から示された方法や範囲で行うとよいでしょう。
まとめ
構音訓練では、正しい音を発音するだけでなく、正しい音と誤った音を聞き分ける練習を行うことがあります。
これは、「どのような音を目指せばよいのか」を理解し、自分の発音が正しかったかを判断できるようにするためです。
最初は言語聴覚士が出した音を聞き分け、徐々に自分の発音にも注意を向けていきます。
最終的には、
正しい音を聞く → 自分で発音する → 自分の音を確認する → 必要なら言い直す
という力につなげていきます。
ただし、すでに音の違いを十分に理解できている子どもでは、聞き分け練習を長く行う必要はありません。
構音訓練では、子どもがどこにつまずいているのかを確認し、その子に必要な練習を選ぶことが大切です。

