子どもの発音は何歳から相談すればいい?
「3歳ですが、まだ発音がはっきりしません。相談するのは早いでしょうか?」
「さ行が言えないのですが、何歳まで様子を見てよいのでしょうか?」
子どもの発音が気になったとき、多くの保護者が迷うのが「何歳になったら相談すればいいの?」ということです。
子どもの発音は成長とともに発達するため、幼児期にはまだ正しく言えない音があっても珍しくありません。特に「さ行」や「ら行」などは、ほかの音より遅く安定することがあります。
そのため、○歳でこの音が言えなければ必ず構音障害、という一律の基準だけで判断することはできません。
一方で、「まだ小さいから」と長く様子を見るより、早めに相談した方がよい発音もあります。
この記事では、子どもの発音は何歳から相談できるのか、年齢別の考え方や相談を検討したいサインについて、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
発音の相談に「早すぎる」ということは基本的にない
まず知っておきたいのは、発音が気になった段階で相談して構わないということです。
例えば3歳の子どもの発音が気になり、言語聴覚士へ相談したとしても、
「3歳だからすぐ構音訓練を始めましょう」となるとは限りません。
評価した結果、「現在は年齢相応の発達なので、しばらく経過をみましょう」となることもあります。
つまり、相談する時期と訓練を始める時期は別です。
気になることを早めに確認しておくこと自体には意味があります。
子どもの発音は少しずつ完成していく
子どもは、最初から大人と同じようにすべての音を発音できるわけではありません。
発音しやすい音から獲得し、舌や息の細かな調整が必要な音は少しずつ安定していきます。
そのため、幼児期には、
「さかな」→「たかな」
「らっぱ」→別の音になる
などの発音がみられることがあります。
このような発音があるからといって、すぐに構音障害とは判断しません。
年齢だけでは判断できない
「何歳まで様子を見ればいいですか?」という質問に対して、年齢だけで答えることが難しい理由があります。
同じ4歳でも、
- 「ら行だけ言えない」
- 多くの子音を間違える
- ほとんど家族にしか伝わらない
- 独特の歪んだ発音がある
では、評価の必要性が大きく異なるからです。
そのため、年齢に加えて、
- どの音を間違えているか
- どのように間違えるか
- 誤っている音の数
- 会話の聞き取りやすさ
- 発音が改善しているか
- 本人が困っているか
などを確認します。
2歳頃の発音はまだかなり発達途中
2歳頃は、使えることばそのものが増えていく時期であり、発音もまだ十分に完成していません。
一つ一つの音を正確に言えないことも多く、家族以外には話している内容が分かりにくい場合もあります。
この時期には「さ行が正しく言えるか」など特定の音だけを見るよりも、
- ことばが増えているか
- 簡単な指示を理解しているか
- 人とのやり取りを楽しんでいるか
など、言葉やコミュニケーション全体を見ることが重要です。
2歳でも相談した方がよい場合はある
「2歳だから発音は様子見でよい」と一律に考える必要はありません。
例えば、
- ことばそのものがほとんど増えない
- 呼びかけへの反応が気になる
- 聞こえに心配がある
- 口蓋裂など口腔内の疾患がある
- 食べるときの口や舌の動きにも気になる点がある
といった場合には、発音だけでなく言葉や聞こえなどを含めて早めに相談することがあります。
3歳頃は発音の個人差が大きい
3歳頃になると会話が増えてきますが、発音にはまだ個人差があります。
言いやすい音はかなり安定していても、難しい音は別の音へ置き換わることがあります。
そのため、特定の音が言えないだけであれば、発達途中として経過を見ることも少なくありません。
一方、同年代の子どもと比べて会話全体がかなり聞き取りにくい場合には、一度相談してみてもよいでしょう。
3歳で家族にしか伝わらない場合は?
家族はその子の発音を毎日聞いているため、不明瞭でも理解できます。
しかし、保育園の先生や親戚などにはほとんど伝わらない場合があります。
3歳ではある程度発音が不明瞭なことはありますが、家族以外にはほとんど何を言っているか分からない
という状態であれば、発音だけでなく言葉の発達や聞こえなども含めて相談することを検討してよいでしょう。
4歳頃になると会話はかなり分かりやすくなる
4歳頃になると、発音できる音が増え、家族以外の人にも会話が伝わりやすくなっていきます。
それでも一部の難しい音は安定していないことがあります。
そのため、「一つか二つの音だけが言えない」という場合と、
「多くの音を間違えていて会話全体が不明瞭」という場合は分けて考えます。
後者の場合には、専門的な評価を検討するとよいでしょう。
4歳頃から構音評価がしやすくなることもある
構音検査では、「舌をここにつけてみよう」「先生と同じ音を言ってみよう」など、ある程度指示を理解して取り組む必要があります。
4歳前後になると、このような課題に取り組みやすくなる子どもが増えてきます。
そのため、構音の特徴を詳しく評価したり、必要に応じて訓練を検討したりしやすくなる時期でもあります。
ただし、実際に訓練できる時期には個人差があります。
5歳頃は就学も意識して確認したい時期
5歳頃になると、小学校入学が近づいてきます。
この時期に、
- 多くの音の誤りが残っている
- 会話が家族以外に伝わりにくい
- 特徴的な歪みがある
- 本人が発音を気にしている
といった場合には、一度専門家へ相談しておくとよいでしょう。
就学後に初めて相談するよりも、必要な支援を事前に検討できる場合があります。
就学前に一度確認するメリット
小学校では、ひらがなの読み書きなど、ことばの音を意識する活動が増えます。
また、先生の前で発表したり、新しい友達と話したりする機会も増えます。
発音に困りごとがある場合には、就学前に状態を確認しておくことで、
- 訓練が必要か
- もう少し経過をみるか
- 学校へどのような情報を伝えるか
などを考えることができます。
小学生になってから相談しても遅くない
就学後に発音の誤りが残っていることに気付く場合もあります。
例えば、
- 国語の音読で気付いた
- 友達から発音を指摘された
- 本人が「うまく言えない」と言い始めた
といったケースです。
小学生になってからでも、構音の評価や訓練を受けることはできます。
「もう小学生だから遅い」と考える必要はありません。
年齢を待たずに相談したい「歪み」
発音には、発達途中によくみられる置換と、特徴的な「歪み」があります。
例えば、
- 側音化構音
- 口蓋化構音
- 声門破裂音
などです。
これらは「さ→た」のような一般的な発達途中の置換とは性質が異なります。
独特の発音が続いている場合には、年齢だけを理由に長期間待つのではなく、一度言語聴覚士などへ相談するとよいでしょう。
「し・ち・じ」が独特に聞こえる場合
例えば「し・ち・じ」などが、
- こもって聞こえる
- 横から息が漏れるように聞こえる
- どの日本語の音とも違う
と感じる場合には、側音化構音などの歪みがある可能性があります。
このような場合には、一般的な発音発達の遅れとは異なることがあるため、一度評価してもらうと安心です。
のどで音をつくっている場合
「た」「か」などが、のどを詰めるような独特の音に聞こえる場合には、声門破裂音などが疑われることがあります。
特に口蓋裂などがある子どもでは、鼻咽腔閉鎖機能なども確認する必要があります。
このような場合は「大きくなるまで様子を見る」というより、専門医療機関で経過を確認することが大切です。
発音が以前から変わっているかを見る
相談するタイミングを考えるときには、「現在言えるか」だけでなく、これまでの変化も重要です。
例えば半年前には多くの音を間違えていたものの、「最近はかなり正しくなってきた」という場合には、発音が発達していることが分かります。
一方、「1年以上ほとんど同じ発音のまま」という場合には、一度評価を検討してもよいでしょう。
誤っている音の数も重要
例えば5歳で「ら行」だけがまだ不安定な場合と、多くの子音が別の音になっている場合では見方が異なります。
複数の音を置換・省略していると、会話全体の聞き取りやすさにも影響します。
年齢にかかわらず、誤っている音が多く、家族以外に伝わりにくい場合には相談を検討します。
本人が困っていたら年齢に関係なく相談する
発音の程度が軽くても、本人が強く困っていることがあります。
例えば、
- 発音を友達にまねされる
- 「何て言ったの?」と何度も聞かれる
- 自分の名前を言うのを嫌がる
- 人前で話さなくなる
- 「この音が言えない」と悩んでいる
といった場合です。
本人の心理的な負担がある場合には、「まだこの年齢だから」と待つ必要はありません。
発音をからかわれている場合
発音を友達から指摘されたり、まねされたりしている場合には、発音の評価だけでなく、周囲の対応も重要です。
子どもに、「ちゃんと言えるようになればいい」とだけ伝えるのではなく、園や学校と情報を共有し、安心して話せる環境を整える必要があります。
必要に応じて専門家へ相談しましょう。
聞こえも気になるなら早めに相談
発音の問題に加えて、
- 呼びかけへの反応が安定しない
- テレビの音量が大きい
- 聞き返しが多い
- 中耳炎を繰り返している
といった場合には、年齢を待たずに耳鼻咽喉科などで聞こえを確認することが大切です。
聞こえにくさが発音や言葉の発達に影響することがあるためです。
言葉の発達もゆっくりなら発音だけを見ない
発音だけでなく、
- 使える単語が少ない
- 文がなかなか長くならない
- 言われたことの理解が難しい
- 会話のやり取りが続きにくい
といった特徴がある場合には、構音だけではなく言葉の発達全体について相談することが大切です。
発音の訓練より、別の支援を優先することもあります。
口や舌の形・動きが気になる場合
例えば、
- 舌をほとんど前へ出せない
- 舌先を上げられない
- 口蓋裂がある
- 歯並びやかみ合わせに大きな特徴がある
などの場合には、発音との関係を確認することがあります。
必要に応じて、言語聴覚士だけでなく歯科、耳鼻咽喉科、形成外科などと連携します。
相談すると何をする?
発音の相談では、まず保護者から普段の様子を聞きます。
その後、年齢や状態に応じて、
- 自然な会話
- 絵を見て名前を言う
- 大人の発音をまねる
- 単音を発音する
- 舌や唇の動きを確認する
などを行います。
必要に応じて、聞こえや言葉の発達についても確認します。
「相談=診断」ではない
相談に行くと、「構音障害と診断されるのでは」と心配する方もいるかもしれません。
しかし、相談の目的は必ず何かの診断をつけることではありません。
現在の発音を確認し、
- 発達途中として様子をみてよい
- 定期的に経過を確認する
- 構音訓練を検討する
- ほかの検査を受ける
など、今後の方針を考えることが目的です。
「様子を見ましょう」と言われたら?
専門家から「今は様子を見てよいでしょう」と言われることもあります。
この場合、何もしなくてよいという意味ではなく、発音がどのように変化していくか観察していきます。
例えば、
- 言える音が増えているか
- 会話が聞き取りやすくなっているか
- 同じ誤りが長く残っていないか
などを確認します。
必要であれば半年後などに再評価することがあります。
何歳から構音訓練を始める?
構音訓練を始める年齢は一律ではありません。
発音の状態だけでなく、
- 指示を理解できるか
- まねができるか
- 一定時間課題に取り組めるか
- 本人に練習する意欲があるか
なども関係します。
幼児でも訓練できる子どもはいますし、少し成長してから始めた方が取り組みやすい子どももいます。
早く訓練すれば必ずよいわけでもない
発達途中の音を必要以上に早く訓練する必要はありません。
年齢とともに自然に獲得される可能性が高い場合には、経過を見ることがあります。
重要なのは、「早く訓練すること」ではなく「必要な時期に必要な支援を行うこと」です。
そのためにも、気になる場合には一度専門家に状態を確認してもらうことが役立ちます。
家庭で様子を見るときのポイント
専門家へ相談するまでの間や、経過観察になった場合には、家庭で次のような変化を見るとよいでしょう。
- 半年前より言える音が増えているか
- 家族以外にも伝わりやすくなっているか
- 特定の音の誤りが減っているか
- 独特の歪みが続いていないか
- 本人が気にしていないか
毎日細かくチェックする必要はありません。
数か月単位で変化をみると分かりやすくなります。
家庭で何度も発音を直さない
相談するまでの間に、「早く治してあげなければ」と何度も発音を言い直させる必要はありません。
正しい音のつくり方が分からない状態で繰り返すと、同じ誤りを反復することがあります。
また、子どもが「話すと注意される」と感じてしまう可能性もあります。
まずは会話そのものを楽しむことを大切にしましょう。
どこに相談すればいい?
地域によって利用できる場所は異なりますが、子どもの発音については、
- 言語聴覚士がいる医療機関
- 耳鼻咽喉科
- 小児科
- 児童発達支援施設
- 自治体の発達相談
- ことばの教室
などに相談できます。
聞こえや口腔内の形態にも心配がある場合には、そのことも相談時に伝えましょう。
こんな場合は年齢を待たずに相談してみよう
特に次のような場合には、「○歳になるまで待とう」とせず、一度相談することをおすすめします。
- 家族以外にはほとんど話が伝わらない
- 多くの音を間違えている
- 発音が長期間ほとんど変化していない
- 独特の歪んだ発音がある
- 鼻にかかった声や鼻からの息漏れがある
- 聞こえに気になる点がある
- 言葉の発達にも気になる点がある
- 本人が発音を強く気にしている
- 発音をからかわれている
- 口蓋裂など発音に関係する疾患がある
相談した結果、「今は様子をみて大丈夫」と分かることもあります。
まとめ
子どもの発音について、「何歳から相談すればよい」という一律の年齢はありません。
幼児期は発音が発達途中にあるため、特定の音を間違えていても自然な発達の範囲であることがあります。そのため、年齢だけで構音障害かどうかを判断することはできません。
一方で、相談すること自体は年齢を待つ必要はありません。 気になる段階で相談し、現在は経過観察でよいのか、詳しい評価や訓練が必要なのかを確認することができます。
特に、家族以外には会話が伝わりにくい、多くの音を間違える、独特の歪みがある、発音が長期間変化しない、本人が困っているといった場合には、早めに相談してみるとよいでしょう。
就学が近づいても発音の誤りが多く残っている場合には、小学校生活を見据えて一度評価を受けることもおすすめです。
大切なのは「○歳までに完全に治さなければ」と焦ることではなく、子どもの発音の発達と日常生活での困りごとを見ながら、必要なタイミングで適切な支援につなげることです。

