どんな発音なら一度相談した方がいい?
「発音が少し幼い気がするけれど、様子を見ていて大丈夫でしょうか?」
「どのくらい聞き取りにくかったら、専門家に相談した方がいいのでしょうか?」
子どもの発音は成長とともに発達していくため、幼児期には正しく言えない音があっても珍しくありません。そのため、「一つでも音を間違えたら構音障害」というわけではありません。
一方で、発音の中には、発達を見守るだけでなく、一度専門家に確認してもらった方がよいものもあります。
ポイントになるのは、子どもの年齢だけではなく、誤っている音の数、誤り方、会話の伝わりやすさ、発音の変化、本人の困りごとなどを総合的に見ることです。
この記事では、どのような発音がみられたら一度相談を検討するとよいのか、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
一つの音が言えないだけなら発達途中のこともある
幼児期には、すべての音が同じ時期に完成するわけではありません。
比較的発音しやすい音から身につき、「さ行」「ら行」など細かな舌の調整が必要な音は、後から安定することがあります。
そのため、年齢が低い子どもで一部の音だけが言えない場合には、発達途中として経過を見ることもあります。
大切なのは、「言えない音があるか」だけで判断しないことです。
多くの音を間違えている場合
相談を検討したいポイントの一つが、誤っている音の多さです。
例えば「さ行だけ」のように特定の音だけではなく、
- か行も違う
- さ行も違う
- ら行も違う
- 複数の音が抜ける
など、多くの音に誤りがある場合には、会話全体が不明瞭になりやすくなります。
このような場合には、年齢や言葉の発達も含めて一度評価してもらうとよいでしょう。
家族以外にはほとんど伝わらない
家庭では子どものことばを問題なく理解できるのに、保育園の先生や親戚などから、
「何を言っているのか分からないことが多い」と言われる場合があります。
家族は毎日その子の発音を聞いているため、独特な発音にも慣れています。また、話題や子どもの好みを知っているため、多少不明瞭でも内容を推測できます。
そのため、家族に伝わるかだけでなく、家族以外にどの程度伝わるかも重要です。
家族以外には頻繁に聞き返される場合には、一度相談を検討してよいでしょう。
発音の誤りが長期間ほとんど変わらない
発音の発達を見るときには、「今言えるか」だけでなく、以前からどのように変化しているかも重要です。
例えば半年前には多くの音を間違えていたものの、少しずつ正しく言える音が増えているのであれば、発音が発達していることが分かります。
一方、長期間にわたって同じ誤りがほとんど変化していない場合には、正しくない構音方法が定着している可能性もあります。
このような場合には一度専門的な評価を受けるとよいでしょう。
独特に歪んだ音がある
「さ」が「た」になるように、日本語の別の音へ置き換わっている場合は、幼児期の発達途中でもみられることがあります。
一方、
「何の音とも表現しにくい」
「こもったように聞こえる」
「独特の音になっている」
などの歪みがある場合には、一般的な発達途中の置換とは異なる可能性があります。
特徴的な歪みが続いている場合には、年齢だけを理由に長く様子を見ず、一度相談してみるとよいでしょう。
「し・ち・じ」などが独特に聞こえる
例えば、
- 「し」が濁ったように聞こえる
- 「ち」「じ」がこもって聞こえる
- 息が横から出ているように感じる
といった場合には、側音化構音などがみられることがあります。
側音化構音は、舌の使い方や息の流れが通常とは異なることで生じる特徴的な構音です。
発達途中の単純な音の置き換えとは異なるため、気付いた場合には言語聴覚士などへ相談するとよいでしょう。
舌を奥で使うような独特の発音がある
「た行」「さ行」などが、本来よりも口の奥でつくられているような独特の音に聞こえることがあります。
このような場合には、口蓋化構音などが考えられることがあります。
口蓋化構音では、本来とは異なる舌の位置で音をつくっています。
こうした特徴的な発音も、一度専門家に確認してもらうとよいでしょう。
のどを詰めるような音がある
本来、口の中でつくる「た」「か」などの音が、のどを詰めたように聞こえる場合があります。
特に口蓋裂などに関連して、声門を使って音をつくる「声門破裂音」がみられることがあります。
このような発音は、一般的な発音発達の遅れとは異なります。
口蓋裂がある場合や、のどで音をつくっているように感じる場合には、専門医療機関などへ相談することが大切です。
鼻にかかった声が強い
発音の間違いだけでなく、声の響きも重要です。
いつも強く鼻にかかったような声で話している場合には、鼻咽腔閉鎖機能などについて確認することがあります。
特に、
- 口蓋裂がある
- 口蓋裂の手術歴がある
- 鼻から息が漏れる
- 「ぱ・た・か」などが弱い
といった特徴もある場合には、専門的な評価を受けることを検討しましょう。
発音すると鼻から息が漏れる
「ぱ」「た」「か」「さ」などを発音するときに、鼻から明らかに息が漏れる場合があります。
多くの子音では、鼻への通り道を閉じて口から息を出す必要があります。
鼻からの息漏れが目立つ場合には、鼻咽腔閉鎖機能などの評価が必要になることがあります。
家庭で繰り返し発音練習をするより、まず原因を確認することが重要です。
音をたくさん省略する
子どもの発音では、一部の音を抜かしてしまう「省略」がみられることがあります。
幼児期には発達途中として省略がみられる場合もありますが、多くの音が省略されると単語の形が大きく変わります。
そのため、「何のことばを言ったのか分かりにくい」という状態になりやすくなります。
省略が多く、会話全体の聞き取りにくさが強い場合には一度相談するとよいでしょう。
同じことばを言うたびに発音が大きく変わる
例えば「さかな」を何度か言ったときに、
「たかな」
「しゃかな」
「さかな」
など、毎回大きく発音が変化することがあります。
幼児期の発音発達ではある程度の変動がみられることもありますが、同じ単語の発音が非常に不安定な場合には、詳しい評価を行うことがあります。
特に、長いことばになるほど発音が大きく崩れる場合などは、そのことも相談時に伝えましょう。
長いことばになると急に聞き取りにくくなる
短い単語では比較的きれいに発音できるのに、長い単語や文章になると急に発音が崩れることがあります。
例えば、「ねこ」は分かりやすいけれど、長い名前になると音が抜けたり順番が変わったりする場合です。
このような特徴が強い場合には、単純に特定の音の構音だけでなく、発話全体について評価することがあります。
話すたびに非常に努力しているように見える
発音するときに、
- 口を探るように動かす
- 音を出す前に何度も口を動かす
- 発音し直すことが非常に多い
など、正しい発音位置を探しているように見える場合があります。
このような特徴も、発音の評価で重要な情報になります。
家庭で「もっとゆっくり言って」と繰り返すだけではなく、専門家へ相談してみるとよいでしょう。
発音全体がゆっくり・不自然
構音障害では、特定の音だけでなく話し方全体に特徴がみられる場合もあります。
例えば、
- 発音全体が不明瞭
- 一音ずつ区切ったようになる
- 話す速度が非常に遅い
- リズムや抑揚が不自然
- 声が小さい
などです。
舌や唇などの発話運動が関係している可能性もあるため、発音だけでなく発話全体を評価します。
舌や唇を明らかに動かしにくそう
発音だけでなく、
- 舌を前へほとんど出せない
- 舌先を持ち上げられない
- 唇をしっかり閉じられない
- 口元に明らかな左右差がある
などがみられる場合には、口腔運動についても確認する必要があります。
ただし、家庭での簡単な動作だけで原因を判断することはできません。
実際の発音との関係を専門家に評価してもらいましょう。
食事にも口や舌の動かしにくさがある
舌や唇、あごは発音だけでなく、食べるときにも使います。
そのため発音の不明瞭さに加えて、
- 食べ物を口からこぼす
- かみにくそう
- 舌で食べ物を動かしにくい
- 飲み込みにも心配がある
といった場合には、口腔運動全体について相談することが大切です。
聞こえに気になる点がある
発音を身につけるためには、ことばの音を十分に聞くことが必要です。
そのため発音の問題とともに、
- 呼びかけへの反応が安定しない
- 聞き返しが多い
- テレビの音が大きい
- 中耳炎を繰り返している
などがあれば、聞こえの評価も検討します。
発音訓練だけを始めるのではなく、まず聴力を確認することが重要な場合があります。
言葉の発達にも気になる点がある
発音だけでなく、
- 単語が少ない
- 文がなかなか長くならない
- 質問を理解しにくい
- 指示の理解が難しい
などがある場合には、言葉全体の発達も確認します。
「発音の相談」として受診しても、必要に応じて語彙や言葉の理解などを評価することがあります。
本人が発音を気にしている
発音の程度だけでなく、子ども自身がどう感じているかも大切です。
例えば、「この音が言えない」と本人が話していたり、苦手なことばを避けたりすることがあります。
発音の誤りが比較的少なくても、本人の困りごとが大きいのであれば、相談する十分な理由になります。
何度も聞き返されて話すのを諦める
自分では一生懸命話しているのに、
「何?」
「もう一回言って」
と何度も聞き返される経験が続くと、子どもが話すことを諦めてしまう場合があります。
例えば、
- 「もういい」と言う
- 保護者に代わりに話してもらう
- 人前で話さなくなる
といった変化がみられることがあります。
このような場合には、構音そのものだけでなく、コミュニケーションへの影響も含めて早めに相談するとよいでしょう。
発音をからかわれている
園や学校で、「変なしゃべり方」などと発音をまねされたり、からかわれたりしている場合には、対応が必要です。
これは「発音が治れば解決する」という問題だけではありません。
園や学校と連携して、子どもが安心して話せる環境を整える必要があります。
同時に、必要であれば専門家へ発音について相談しましょう。
就学が近いのに誤りが多く残っている
小学校入学が近づくと、発音を一度確認しておくとよい場合があります。
特に、
- 多くの音を間違えている
- 家族以外に伝わりにくい
- 独特な歪みがある
- 本人が気にしている
といった場合です。
就学前に評価しておくことで、訓練が必要なのか、学校でどのような支援が必要なのかを考えやすくなります。
「何歳だから」だけで相談を決めない
発音の相談では、
「まだ3歳だから」
「5歳になってから」
と年齢だけで判断したくなることがあります。
しかし、同じ年齢でも発音の状態は大きく異なります。
例えば3歳で「さ行だけが未熟」な子どもと、3歳で家族以外にはほとんどことばが伝わらない子どもでは、対応は同じではありません。
年齢は重要な目安ですが、発音の特徴と生活上の困りごとを合わせて考えることが大切です。
相談したらすぐ訓練になるわけではない
「相談すると、毎週訓練へ通うことになるのでは」と心配する必要はありません。
評価した結果、
- 発達途中なので経過観察
- 数か月後に再評価
- 構音訓練を開始
- 聴力検査を先に行う
- 医師や歯科医師へ相談
など、対応はさまざまです。
相談する目的は、無理に訓練を始めることではなく、現在の発音を正しく把握することです。
迷ったら相談しても大丈夫
「相談するほどなのか分からない」という場合もあるでしょう。
そのような段階で相談しても構いません。
専門家に確認して、「現在は発達途中なので、このまま様子をみて大丈夫です」と分かれば、それも大切な結果です。
保護者だけで長期間悩み続ける必要はありません。
相談先はどこ?
地域によって異なりますが、子どもの発音については、
- 言語聴覚士がいる医療機関
- 耳鼻咽喉科
- 小児科
- 児童発達支援施設
- 自治体の発達相談
- ことばの教室
などで相談できます。
口蓋裂などの疾患がある場合には、治療を受けている専門医療機関へ相談するとよいでしょう。
相談時に伝えるとよいこと
専門家へ相談するときには、専門用語で説明する必要はありません。
例えば、
- 「し」が独特に聞こえる
- 家族以外にはよく聞き返される
- 半年前から発音がほとんど変わらない
- 中耳炎を繰り返している
- 本人が発音を気にしている
など、家庭で気付いたことをそのまま伝えれば十分です。
普段特に気になる単語があれば、それも伝えると評価の参考になります。
まとめ
子どもの発音には発達途中の誤りも多いため、一つの音を間違えているだけで、すぐに構音障害と考える必要はありません。
一方で、次のような特徴がある場合には、一度専門家への相談を検討するとよいでしょう。
- 多くの音を間違えている
- 家族以外には会話が伝わりにくい
- 発音の誤りが長期間ほとんど変わらない
- 独特に歪んだ発音がある
- のどで音をつくるような発音がある
- 鼻にかかった声や鼻からの息漏れがある
- 同じことばの発音が毎回大きく変わる
- 舌や唇の動きにも気になる点がある
- 聞こえや言葉の発達にも心配がある
- 本人が発音を気にしている
- 発音によって友達とのやり取りなどに困っている
重要なのは、「○歳だから大丈夫」「この音だけだから問題」と年齢や音の数だけで判断しないことです。
発音の誤り方、会話の伝わりやすさ、発達の経過、本人の困りごとを総合的に見ることが大切です。
相談したからといって、必ず訓練を始めるわけではありません。現在は発達途中として様子をみてよいのか、それとも詳しい評価や支援が必要なのかを確認するためにも、気になる状態が続いている場合には一度言語聴覚士などへ相談してみましょう。

