保育園・幼稚園・学校から発音を指摘されたらどうする?
「園の先生から『少し発音が気になります』と言われました。すぐ病院へ行った方がいいのでしょうか?」
「学校で発音を指摘されたのですが、家庭では普通に聞き取れています。」
保育園・幼稚園・学校から子どもの発音について指摘されると、「構音障害なのでは?」「すぐ訓練しないといけない?」と心配になる保護者もいるでしょう。
しかし、発音を指摘されたからといって、必ず構音障害があるわけではありません。幼児期には発音がまだ発達途中で、一部の音をうまく言えないこともあります。
一方で、園や学校は家庭とは異なる環境で子どもの話し方を見ています。友達にどの程度伝わっているのか、集団の中で聞き返されていないかなど、家庭では気付きにくい情報が得られることがあります。
そのため、先生から発音について指摘されたときには、心配しすぎるのでも、そのまま聞き流すのでもなく、「具体的にどのような場面で、どの発音が気になったのか」を確認することが大切です。
この記事では、保育園・幼稚園・学校から子どもの発音を指摘されたときに、どのように対応すればよいのかを言語聴覚士がわかりやすく解説します。
まず「指摘された=構音障害」と考えなくてよい
先生から、「発音が少し気になります」と言われると、不安になるかもしれません。
しかし、この一言だけで構音障害と判断することはできません。
発音には年齢による発達があり、小さな子どもでは難しい音を別の音へ置き換えることがあります。
例えば、「さかな」→「たかな」などです。
このような発音は発達途中でもみられます。
園や学校からの指摘は大切な情報
一方で、先生からの指摘を「そのうち治るから」と完全に無視することもおすすめできません。
園や学校では、家庭とは違った場面で子どもの発音を聞いています。
例えば、
- 友達との会話
- 集団での発表
- 先生への報告
- 音読
- 自由遊び
などです。
家庭では気付かなかった問題が、集団生活で目立つことがあります。
家族には聞き取れてしまうことがある
家庭では、「普通に話せています」と感じていても、園では聞き返されている場合があります。
これは、家族が子どもの発音に慣れているためです。
例えば子どもがいつも「さかな」を「たかな」と言う場合、家族は自然に、
「『たかな』=『さかな』」と理解できます。
しかし、その子の発音を初めて聞く人には伝わりにくいことがあります。
まず先生に「具体的な様子」を聞いてみる
発音を指摘されたら、まず先生に少し詳しく聞いてみましょう。
例えば、
- どの音が気になりますか?
- どんな単語で気付きましたか?
- 友達には伝わっていますか?
- 聞き返されることは多いですか?
- いつ頃から気になっていますか?
- 一対一でも聞き取りにくいですか?
- 集団の中だけで目立ちますか?
などです。
「発音が悪い」という抽象的な情報より、具体的な場面が分かると今後の対応を考えやすくなります。
気になる単語を聞いておく
先生が具体的な単語を覚えている場合には、教えてもらうと参考になります。
例えば、
「『さかな』が『たかな』になります」
「『し・ち・じ』が独特に聞こえます」
などです。
専門家へ相談するときにも、「園ではこのような発音を指摘されました」と伝えることができます。
家庭でも同じ発音があるか確認する
先生から聞いた内容をもとに、普段の会話を少し意識して聞いてみましょう。
例えば「さ行が気になる」と言われた場合、自然な会話で同じような誤りがあるか確認します。
ただし、
「『さかな』って言って」
「もう一回言って」
と何度も検査のように言わせる必要はありません。
普段の自然な会話を聞く程度で十分です。
家で正しく言えていることもある
園では間違えていると言われたのに、家庭では正しく言えている場合もあります。
子どもの発音は状況によって変化することがあります。
例えば、
- ゆっくり話している家庭では正しく言える
- 集団で急いで話すと崩れる
- 興奮すると早口になって不明瞭になる
などです。
そのため、家庭と園で違いがあっても、どちらかが間違っているとは限りません。
「一対一」と「集団」で違うことがある
静かな場所で大人と一対一で話せば分かりやすいのに、教室のようなにぎやかな環境では聞き取りにくくなることがあります。
また、友達との会話では話すスピードが速くなり、発音が崩れる場合もあります。
そのため、先生には、「どんな場面で特に気になりますか?」と聞いてみるとよいでしょう。
保育園・幼稚園では発達途中の発音も多い
幼児期はまだ発音が完成していません。
そのため園から指摘されても、専門的に評価した結果、
「現在は発達途中なので経過をみましょう」となることもあります。
特に一部の音だけが未完成で、会話全体は十分伝わっている場合などです。
指摘されたことだけで焦って訓練を始める必要はありません。
多くの音が不明瞭なら相談を検討する
一方、一つの音だけではなく、
- 多くの子音を間違える
- 音が頻繁に抜ける
- 家族以外にはほとんど伝わらない
などの場合には、一度言語聴覚士などへ相談するとよいでしょう。
発音だけでなく、聞こえや言葉の発達についても確認することがあります。
特徴的な歪みを指摘された場合
先生から、「『し』が独特に聞こえる」「何の音か分からないような発音があります」と言われることがあります。
側音化構音などの特徴的な歪みでは、一般的な発達途中の置換とは異なることがあります。
独特の歪みが続いている場合には、一度構音評価を受けることを検討しましょう。
「さ行が言えない」と言われたら?
さ行は子どもにとって比較的難しい音の一つです。
そのため、幼児期に「さ」が「た」など別の音になることがあります。
年齢が低く、ほかの発音は明瞭で、少しずつ改善しているのであれば経過を見ることもあります。
一方、就学が近づいてもさ行がまったく安定しない、独特な歪みがあるといった場合には相談を検討します。
「ら行が言えない」と言われたら?
ら行も比較的遅く安定することがある音です。
そのため、幼児期に一部のら行が正しく言えなくても、すぐ構音障害とは判断しません。
年齢、誤り方、これまでの変化などを見ながら考えます。
学校で指摘された場合は少し見方が変わる
小学生になると、発音できる音はかなり増えています。
そのため学校で継続的に発音を指摘された場合には、
- どの音が残っているか
- 本人が気にしているか
- 音読や発表に影響しているか
などを確認します。
必要に応じて、ことばの教室や言語聴覚士への相談を検討します。
音読で初めて気付かれることもある
日常会話ではあまり気にならなかった発音が、小学校の音読で目立つことがあります。
音読では決められた文章を読むため、特定の音を避けることができません。
また、先生が一音一音を聞くため、発音の誤りに気付きやすくなります。
そのため、就学後に初めて構音相談につながる子どももいます。
先生に本人の様子も聞いてみよう
発音そのものだけでなく、子ども本人の反応についても確認するとよいでしょう。
例えば、
- 聞き返されても気にせず話している
- 聞き返されると黙ってしまう
- 発音をからかわれたことがある
- 発表を嫌がるようになった
などです。
本人への心理的な影響がある場合には、発音の程度にかかわらず早めに対応を考える必要があります。
発音をからかわれている場合は別の対応も必要
友達が発音をまねしたり、からかったりしている場合には、
「発音を治せばいい」という問題ではありません。
まず、子どもが安心して話せる環境を守ることが重要です。
園や学校と情報を共有し、発音をからかうことが続かないよう対応してもらいましょう。
必要に応じて構音評価も並行して行います。
先生に「言い直させ続けない」ようお願いすることもある
発音が気になると、周囲の大人が、
「もう一回言って」
「違うよ」
「ちゃんと言って」
と毎回訂正してしまうことがあります。
しかし、子どもが正しい構音方法をまだ知らない場合、何度繰り返しても改善しないことがあります。
また、話すことへの負担になる可能性もあります。
必要に応じて、「発音は専門家と確認しますので、普段の会話では内容を受け止めてもらえると助かります」と先生に伝えてもよいでしょう。
正しい発音を自然に返してもらう
例えば子どもが、「たかなを見た」と言った場合、「そうなんだ、さかなを見たんだね」と自然に返してもらう方法があります。
「違うよ、さかなって言いなさい」と訂正するのではなく、会話の流れの中で正しい音を聞かせます。
家庭でも同じような対応ができます。
園や学校だけで構音障害を判断するわけではない
先生は日常生活の中で重要な情報を持っていますが、構音障害の専門的な評価は別に行う必要があります。
例えば、「さ行が変です」と指摘されても、
- 発達途中の置換
- 側音化構音
- 別の歪み
など、実際にはさまざまな可能性があります。
必要に応じて言語聴覚士による構音検査を受けます。
相談するなら先生からの情報を伝える
専門家へ相談するときには、「園の先生から発音を指摘されました」と伝えましょう。
さらに、
- どの音と言われたか
- どんな場面で気になるか
- 友達にどの程度伝わるか
- 聞き返される頻度
などが分かれば、評価の参考になります。
園や学校の資料があれば持参してもよい
先生が発音について記録している場合や、ことばの教室などから資料がある場合には、相談先に持参すると役立つことがあります。
ただし、正式な書類を新たに作ってもらう必要はありません。
口頭で聞いた情報だけでも十分です。
相談先はどこ?
発音だけが気になる場合には、言語聴覚士に構音評価を受けられる場所が主な相談先です。
例えば、
- 言語聴覚士がいる医療機関
- 自治体の発達相談
- 発達支援センター
- 言語聴覚士がいる児童発達支援施設
などがあります。
就学後であれば、学校のことばの教室などへ相談する方法もあります。
聞こえも気になるなら耳鼻咽喉科
先生から、「呼びかけても反応しないことがあります」「聞き返しが多いです」など、聞こえについても指摘された場合には、耳鼻咽喉科で聴力を確認することが大切です。
聞こえにくさが発音へ影響することがあります。
言葉の発達も指摘された場合
発音だけでなく、
- 言葉が少ない
- 文が短い
- 指示を理解しにくい
- 会話がかみ合いにくい
なども指摘されている場合には、言葉や発達全体の評価も検討します。
発音だけを訓練すればよいとは限らないためです。
園や学校と専門家が連携できるとよい
構音訓練を始めた場合には、家庭と専門家だけでなく、園や学校と情報を共有できると役立つことがあります。
例えば、「現在『さ』は単語で練習中なので、会話中に毎回直さなくて大丈夫です」などを共有できます。
子どもに関わる大人が同じ方向性を理解していると、負担を減らしながら支援しやすくなります。
構音訓練中であることを先生に伝える
すでに構音訓練を受けている場合には、園や学校へ伝えておくとよいでしょう。
先生が発音の間違いに気付いたときにも、「専門家と練習しているところなんだな」と理解してもらえます。
必要以上にその場で訂正されることを防ぐことにもつながります。
本人の前で発音の話をしすぎない
先生と保護者が、「この子、まだ『さ』が言えなくて」「この発音が変なんです」と本人の目の前で何度も話すと、子どもが自分の発音を必要以上に意識することがあります。
発音について詳しく相談するときは、可能であれば子どもへの配慮も意識しましょう。
子どもに「先生が発音悪いって言ってたよ」と伝えない
園から指摘されたことをそのまま、「先生が発音がおかしいって言ってたよ」と子どもへ伝える必要はありません。
専門家へ相談する場合でも、「ことばの先生と一緒にお話ししてみよう」など、否定的にならない伝え方をするとよいでしょう。
家庭で急に発音練習を始めない
先生から指摘されると、不安になってすぐに、「さ・し・す・せ・そを言ってみよう」と家庭で練習を始めたくなるかもしれません。
しかし、誤り方によって必要な練習は異なります。
特に歪みがある場合、自己流で同じ音を繰り返しても改善しないことがあります。
まず現在の構音を評価してもらうことが大切です。
「様子を見ましょう」と言われた場合
専門家へ相談した結果、経過観察になることもあります。
その場合には、園や学校にも、「今は発達を見ながら経過観察になりました」と伝えておくとよいでしょう。
さらに、
- どのような変化を見るか
- いつ頃再評価するか
を共有できれば、園での様子も参考にできます。
園の先生に経過を聞く
経過観察中には、数か月後に先生へ、「最近、発音はどうですか?」と確認する方法があります。
家庭では毎日聞いているため変化に気付きにくいことがありますが、先生が、「前より友達に伝わっています」と感じることもあります。
家庭と園の両方から発音の変化を見ることができます。
小学校では「ことばの教室」につながることもある
小学校で発音の誤りが残っている場合、学校からことばの教室などを紹介されることがあります。
ことばの教室では、通常の学級に在籍しながら、必要に応じて発音などについて指導を受けます。
利用方法や対象は地域によって異なるため、学校や教育委員会へ確認します。
学校から紹介されたら必ず通わないといけない?
学校からことばの教室などを勧められたからといって、すぐ利用が決定するわけではありません。
まず現在の発音や本人の困りごとを確認し、保護者と相談しながら支援方法を考えます。
必要であれば医療機関で構音評価を受けることもあります。
こんな指摘なら一度相談を検討しよう
園・学校から次のような内容を指摘された場合には、一度専門家へ相談してみるとよいでしょう。
- 多くの音が聞き取りにくい
- 家族以外には伝わりにくい
- 友達から頻繁に聞き返されている
- 独特に歪んだ音がある
- 同じ発音の誤りが長く続いている
- 就学が近いのに誤りが多い
- 本人が発音を気にしている
- 発音をからかわれている
- 聞こえにも気になる点がある
- 言葉の発達にも心配がある
一つでも当てはまれば必ず構音障害という意味ではありません。
先生の指摘と保護者の印象が違っても大丈夫
先生は「聞き取りにくい」と感じているのに、保護者は「全然気にならない」ということもあります。
逆に、家庭では強く気になっていても、先生は問題を感じていないこともあります。
生活環境によって聞き取りやすさは変わるため、この違い自体も重要な情報です。
どちらが正しいかを決めるのではなく、専門的な評価に両方の情報を活用します。
「指摘してくれたこと」を今後の支援に活かす
発音について先生から伝えられると、保護者としてはショックを受けることもあるでしょう。
しかし、園や学校での様子を知ることができれば、家庭だけでは分からなかった困りごとに早く気付ける場合があります。
指摘を診断のように受け取る必要はありません。
「家庭とは違う環境で得られた一つの大切な情報」として活用するとよいでしょう。
まとめ
保育園・幼稚園・学校から子どもの発音を指摘されたからといって、必ず構音障害があるわけではありません。
幼児期には発音がまだ発達途中で、年齢とともに自然に改善する音もあります。
一方、園や学校では家庭とは異なる環境で子どもの発音を聞いているため、友達に伝わりにくい、集団では聞き返されるなど、家庭では気付きにくい困りごとが見つかることがあります。
指摘された場合には、まず、
「どの音が気になるのか」
「どのような場面で目立つのか」
「友達や先生にどの程度伝わっているのか」
「本人が困っているのか」
を具体的に確認しましょう。
そのうえで、多くの音を間違える、家族以外には伝わりにくい、独特な歪みがある、発音が長期間変化しない、本人が気にしているといった場合には、言語聴覚士などへの相談を検討します。
また、聞こえが気になる場合には耳鼻咽喉科、言葉や発達全体にも気になる点がある場合には小児科や発達相談など、必要に応じて相談先を選びます。
園や学校からの指摘をきっかけに、家庭・教育機関・専門家が情報を共有し、子どもが安心して話せることを最優先にしながら必要な支援を考えることが大切です。

