構音障害はすぐ訓練する?経過観察になる場合とは

「発音の間違いが見つかったら、すぐに構音訓練を始めるのでしょうか?」

「言語聴覚士に相談したのに『しばらく様子を見ましょう』と言われました。大丈夫なのでしょうか?」

子どもの発音について相談すると、必ずしもすぐに構音訓練が始まるわけではありません。

発音の誤りがあっても、年齢や発達段階によっては自然に改善する可能性があります。

また、まだ訓練に取り組む準備が十分ではなかったり、聞こえや口腔内の状態を先に確認する必要があったりすることもあります。

そのため、構音障害の評価では、「発音を間違えているか」だけではなく、「今この時期に訓練を始めることが適切か」まで考えて方針を決めます。

この記事では、どのような場合に構音訓練を始めるのか、どのような場合に経過観察になるのかについて、言語聴覚士がわかりやすく解説します。


発音を間違えている=すぐ訓練ではない

子どもの発音は、成長とともに少しずつ完成していきます。

幼児期には、「さかな」→「たかな」のように、難しい音を言いやすい音へ置き換えることがあります。

このような誤りが年齢相応の発達過程としてみられている場合には、すぐに構音訓練を行わず、自然な発達を待つことがあります。

つまり、発音の誤りがあること構音訓練が必要であることは同じではありません。


経過観察とは?

経過観察とは、現在の状態を確認したうえで、一定期間、発音の変化を見ていくことです。

「何もしない」「放っておく」という意味ではありません。

例えば、

  • 言える音が増えているか
  • 発音の誤りが減っているか
  • 会話が聞き取りやすくなっているか
  • 同じ誤りが長く残っていないか

などを確認します。

必要に応じて数か月後に再評価し、その時点で訓練を始めるか検討します。


年齢的にまだ発達途中なら経過観察になることがある

構音訓練をすぐ行わない代表的な理由が、まだ発音の発達途中であることです。

特に幼児期では、すべての音が完成しているわけではありません。

一部の難しい音だけが言えず、それ以外の発音や言葉の発達に大きな問題がなければ、成長による改善を待つことがあります。


一部の音だけが未完成の場合

例えば、小さな子どもで「ら行」など一部の音だけが安定していない場合、すぐに構音訓練を行わないことがあります。

発音の獲得時期には個人差があり、成長とともに自然に正しくなる可能性があるためです。

一方、同じ年齢でも多くの音に誤りがある場合には、より詳しく評価します。


発音が少しずつ改善している場合

以前と比べて正しく言える音が増えている場合には、発音が自然に発達している途中と考えられることがあります。

例えば、

半年前は多くの音を間違えていた

現在は数個の音だけになった

という場合です。

このようなときには、しばらく発達を見守ることがあります。


「今言えない」だけでなく変化を見る

経過観察を判断するときには、現在の発音だけを見るのではありません。

例えば、「5歳でこの音が言えない」という情報だけではなく、「半年間ほとんど変化がない」のか、「最近少しずつ正しく言えるようになっている」のかで見方が変わります。

発音の発達経過は重要な判断材料です。


会話が十分伝わっている場合

発音に一部誤りがあっても、家族以外の人にも会話がほぼ問題なく伝わっている場合があります。

また、本人もまったく困っていないことがあります。

このような場合には、年齢や誤り方を考慮しながら経過観察になることがあります。

ただし、特徴的な歪みがある場合などは、会話が伝わっていても別に考えることがあります。


本人がまだ発音を気にしていない場合

本人が発音をまったく気にしておらず、日常生活にも大きな困りごとがない場合には、年齢や発達によっては急いで訓練しないことがあります。

一方、同じ程度の発音の誤りでも、本人が強く悩んでいる場合には支援の優先度が変わります。

構音訓練の必要性は、検査結果だけではなく本人の生活への影響も含めて判断します。


訓練に取り組む準備がまだできていないこともある

構音訓練では、言語聴覚士の説明を聞き、「舌をここにつけよう」「この音をまねしてみよう」などの課題に取り組むことがあります。

そのため、ある程度、

  • 指示を理解する
  • 大人の動きをまねする
  • 短時間でも課題に集中する

といった力が必要になります。

年齢が低く、まだこのような課題に取り組みにくい場合には、少し成長してから本格的な構音訓練を始めることがあります。


「訓練できない」という意味ではない

幼い子どもが経過観察になったからといって、「まだ何もできない」という意味ではありません。

必要に応じて、

  • 会話を楽しむ
  • 正しい発音を自然に聞かせる
  • 言葉を増やす
  • 聞こえを確認する

など、その時期に合った支援を行います。

本格的な構音訓練を始める時期を待つということです。


訓練への意欲も大切

構音訓練では、子ども本人がある程度「やってみよう」と思えることも重要です。

強く嫌がっている状態で何度も発音を練習させると、話すこと自体を嫌になる可能性があります。

子どもの性格や発達、本人の困りごとなども考えながら、訓練を始めるタイミングを検討します。


聞こえを先に確認することもある

発音の誤りに加えて、

  • 呼びかけへの反応が不安定
  • 中耳炎を繰り返している
  • 聞き返しが多い

などがある場合には、構音訓練より先に聴力を確認することがあります。

正しい発音を身につけるためには、ことばの音を十分に聞けることが重要だからです。


中耳炎がある場合は治療を優先することもある

滲出性中耳炎などによって一時的に聞こえにくい状態がある場合には、耳鼻咽喉科での治療や経過観察を優先することがあります。

聞こえの状態が安定した後に、発音がどのように変化するかを再評価します。

構音の問題だけを切り離して考えないことが大切です。


歯の生え変わりを待つこともある

子どもでは乳歯から永久歯へ生え変わる時期があります。

特に前歯が抜けている時期には、「さ行」など息の流れが重要な音が一時的に発音しにくくなることがあります。

対象となる音によっては、歯が生えるのを待ってから本格的に訓練する場合があります。


歯列矯正などを優先する場合

歯並びやかみ合わせの問題によって、正しい構音位置をつくることが難しい場合があります。

その場合には、歯科・歯科矯正での対応を先に検討することがあります。

ただし、歯並びに特徴があるから必ず訓練を待つわけではありません。

現在の口腔内の状態でも正しい音をつくれるかどうかを確認して判断します。


鼻咽腔閉鎖機能の評価を先に行うこともある

口蓋裂などがあり、開鼻声や鼻からの息漏れがみられる場合には、鼻咽腔閉鎖機能について詳しい評価が必要です。

構造的・機能的に鼻咽腔を十分閉鎖できない状態では、正しい子音をつくりにくい場合があります。

そのため、構音訓練を始める前に医学的な対応が必要か確認します。


構音訓練だけでは改善しない問題もある

発音の問題には、

  • 正しい音のつくり方が身についていない問題
  • 正しい音をつくるための身体的条件の問題

があります。

前者には構音訓練が有効な場合がありますが、後者では医学的な対応が必要になることがあります。

そのため、原因を確認せずにすぐ構音訓練を始めるとは限りません。


では、どんな場合に訓練を始める?

構音訓練を検討する代表的な状況の一つが、年齢に比べて特定の発音の誤りが長く残っている場合です。

例えば、自然な改善を期待して経過を見ていたものの、一定期間ほとんど変化がみられない場合には、本格的な構音訓練を検討します。


特徴的な歪みがある場合

側音化構音や口蓋化構音など、通常の発音発達ではあまりみられない特徴的な歪みがある場合には、構音訓練を検討することがあります。

これらは「さ→た」のような一般的な発達途中の置換とは異なり、独特の構音方法が習慣として定着している場合があります。

そのため、自然改善を長く待たずに評価・訓練を考えることがあります。


誤った発音方法が定着している場合

同じ音を長期間、毎回同じように誤っている場合には、その発音方法が習慣化している可能性があります。

例えば「し」をいつも独特に歪ませている場合などです。

このような場合には、正しい舌の位置や息の流れを新しく学ぶ構音訓練が必要になることがあります。


多くの音を間違えている場合

一つの音だけではなく、多くの音に置換や省略がある場合には、会話全体の聞き取りやすさが低下することがあります。

家族以外には何を話しているか分かりにくいなど、日常生活への影響が大きい場合には、年齢や発達を考慮したうえで早めに支援を検討します。


本人が発音を気にしている場合

例えば、「この音が言えない」と子ども自身が気にしていたり、人前で話すことを避けたりしている場合には、構音訓練を始めることがあります。

発音の誤りそのものが軽くても、本人の心理的な負担が大きければ支援する意味があります。


友達とのコミュニケーションに影響している場合

発音によって、

  • 何度も聞き返される
  • 友達に伝わらない
  • 発音をまねされる
  • 話すことを諦める

などがある場合にも、支援を検討します。

構音訓練は「発音をきれいにする」ためだけでなく、子どもが安心してコミュニケーションできるようにするためでもあります。


就学を控えている場合

就学前は、構音訓練を始めるかどうかを改めて考える時期の一つです。

小学校では、

  • 音読
  • 発表
  • ひらがなの読み書き
  • 友達との会話

など、ことばの音を意識する機会が増えます。

発音の誤りが多く残っている場合には、就学前から訓練を始めることがあります。


正しい音をつくる準備が整っている場合

構音訓練では、正しい音をつくれる可能性があることも重要です。

例えば、

  • 聴力に大きな問題がない
  • 構音に必要な口腔内の条件が整っている
  • 指示を理解できる
  • 模倣できる

などが確認できれば、訓練を進めやすくなります。


訓練を始めるかは一つの条件だけで決めない

例えば、「5歳になったから訓練」「さ行が言えないから訓練」というように、一つの条件だけで決定するわけではありません。

実際には、

  • 年齢
  • 誤っている音
  • 誤り方
  • 自然改善の可能性
  • 会話の聞き取りやすさ
  • 本人の困りごと
  • 訓練への参加しやすさ
  • 聞こえや口腔内の状態

などを総合的に考えます。


経過観察中はどのくらい待つ?

経過観察の期間は子どもの状態によって異なります。

数か月後に再評価する場合もあれば、半年程度の変化を見ることもあります。

大切なのは、「○か月待てば必ずよい」と決めることではなく、その間に発音がどう変化しているかを見ることです。


経過観察中に見るポイント

経過観察になった場合には、家庭で細かく採点する必要はありません。

例えば、

  • 言える音が増えたか
  • 誤りが減っているか
  • 家族以外にも伝わりやすくなったか
  • 独特な歪みが続いていないか
  • 本人が気にするようになっていないか

などを数か月単位で見ておくとよいでしょう。


経過観察中でも早めに再相談してよい

「半年後にまた見ましょう」と言われていても、途中で状況が変わった場合には予定を待つ必要はありません。

例えば、

  • 発音がさらに分かりにくくなった
  • 本人が強く気にし始めた
  • 園や学校から困りごとを指摘された
  • 聞こえが気になるようになった

などがあれば、早めに再相談して構いません。


家庭では正しい発音を自然に聞かせる

経過観察中に家庭でできることの一つが、正しい発音を自然な会話の中で聞かせることです。

例えば子どもが、「たかながいる!」と言った場合に、「本当だ、さかながいるね」と自然に返します。

子どもに何度も言い直させる必要はありません。


自己流で構音訓練を始めない

「経過観察と言われたけれど、何かした方がいいのでは」と思い、家庭で舌の体操や発音練習を始めることがあります。

しかし、誤り方によって必要な練習は異なります。

正しい構音方法が分からないまま同じ音を何度も繰り返すと、誤った発音を反復することもあります。

専門家から家庭練習を提案された場合には、その方法に沿って行いましょう。


「様子を見る」と言われても不安なときは質問してよい

経過観察と言われた場合には、

  • 何を見ながら様子を見ればよいか
  • どのくらいの期間を見るのか
  • どんな変化があれば再相談するのか
  • 次回はいつ評価するのか

を確認すると安心です。

単に「様子を見ましょう」だけではなく、経過観察のポイントを共有しておくことが大切です。


再評価で方針が変わることもある

最初の相談では経過観察だった子どもでも、数か月後の再評価で構音訓練を始めることがあります。

反対に、自然に発音が改善し、訓練が不要になることもあります。

子どもの発音は発達とともに変化するため、一度決めた方針がずっと続くわけではありません。


訓練開始後も途中で見直す

構音訓練を始めた後も、定期的に発音の状態を確認します。

正しい音が会話まで定着すれば訓練を終了することがあります。

一方、思うように改善しない場合には、

  • 訓練方法
  • 聞こえ
  • 口腔内の状態
  • 発達全体

などを改めて確認することがあります。


「早く始めれば早く治る」とは限らない

保護者としては、「少しでも早く訓練した方が早く治るのでは?」と思うことがあるでしょう。

しかし、まだ自然に発達する時期の音や、子どもが課題を理解できない段階で無理に訓練を始めても、十分な効果が得られないことがあります。

構音訓練では、早さだけではなく適切なタイミングが重要です。


反対に「大きくなれば自然に治る」と決めつけない

一方で、すべての発音の誤りが自然に改善するわけでもありません。

特徴的な歪みや長期間定着した構音の誤りでは、専門的な訓練が必要になることがあります。

そのため、「まだ子どもだから」という理由だけで何年も様子を見るのではなく、必要に応じて定期的に評価することが大切です。


言語聴覚士は何を見て判断する?

言語聴覚士(ST)は、構音検査だけでなく、

  • 子どもの年齢
  • 発音の発達経過
  • 置換・省略・歪みなどの誤り方
  • 発音の一貫性
  • 単音で正しい音を出せるか
  • 会話の聞き取りやすさ
  • 舌・唇・あごの状態
  • 聞こえ
  • 言葉の発達
  • 本人の困りごと

などを総合的に確認します。

その結果から、すぐ訓練するのか、経過観察するのか、別の評価を先に行うのかを考えます。


経過観察は「問題がない」という意味ではない

経過観察になった場合、「問題がないと言われた」と受け止めることもありますが、必ずしもそうとは限りません。

「現時点では発音の誤りはあるけれど、自然な発達の可能性もあるので変化を見ていく」という意味の場合があります。

今後の変化を確認することも評価の一部です。


まとめ

子どもの構音障害は、発音の誤りがあればすぐに構音訓練を始めるわけではありません。

幼児期の発達途中で自然な改善が期待できる場合、発音が少しずつ改善している場合、本人がまだ訓練に取り組みにくい場合などには、経過観察になることがあります。

また、聞こえ、歯並び、口蓋や鼻咽腔閉鎖機能などに問題が疑われる場合には、構音訓練よりも先に医学的な評価や治療を行うことがあります。

一方、特徴的な歪みがある、発音の誤りが長期間変化しない、会話が家族以外に伝わりにくい、本人が困っているなどの場合には、構音訓練を検討します。

重要なのは、「早く訓練を始めること」ではなく、「その子にとって適切な時期に適切な支援を始めること」です。

経過観察になった場合も、何もしないわけではありません。発音がどのように変化するかを確認し、必要なタイミングで再評価します。

「様子を見ましょう」と言われて不安な場合には、どのくらいの期間を見るのか、何を観察すればよいのか、どのような変化があれば再相談すればよいのかを言語聴覚士に確認しておくとよいでしょう。

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