発音の発達がゆっくりだと構音障害になる?
「同じ年齢の子より発音が幼い気がします。」
「発音の発達がゆっくりだと、構音障害なのでしょうか?」
子どもの発音は、成長とともに少しずつ発達していきます。最初からすべての音を正確に発音できるわけではなく、幼児期には「さかな」が「たかな」になるなど、発音の間違いがみられることも珍しくありません。
そのため、発音の発達がゆっくりだからといって、必ず構音障害になるわけではありません。
一方で、年齢が上がっても特定の発音の誤りが続く場合や、通常の発達ではあまりみられない独特の発音がある場合には、専門的な評価が必要になることがあります。
この記事では、発音の発達がゆっくりな子どもと構音障害の違い、相談を考えたいポイントについて、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
子どもの発音は少しずつ発達する
子どもは、大人のような発音を最初からできるわけではありません。
乳幼児期には、唇や舌を動かしながらさまざまな声を出し、その経験を重ねながら日本語の音を身につけていきます。
比較的簡単につくれる音から安定し、舌の細かな調整が必要な音は後から獲得していきます。
そのため、小さい頃に発音が不明瞭なのは自然なことでもあります。
発音しやすい音と難しい音がある
日本語の音は、すべて同じ難しさではありません。
例えば「ぱ・ば・ま」などは唇を使ってつくるため、比較的早い時期から安定しやすい音です。
一方、
- さ行
- ざ行
- つ
- ら行
などは、舌の位置や息の流れを細かく調整する必要があるため、発音が安定するまで時間がかかることがあります。
したがって、「ある音がまだ言えない」というだけで構音障害とは判断できません。
発達途中では音を簡単な形にする
まだ難しい音を発音できない子どもは、自分が言いやすい音に置き換えることがあります。
例えば、「さかな」→「たかな」のように、本来の「さ」を「た」に置き換えることがあります。
これは発音発達の途中でみられることがあります。
子どもがわざと間違えているのではなく、現在できる発音を使ってことばを表現していると考えると分かりやすいでしょう。
「発音がゆっくり」と「構音障害」は同じではない
発音の発達がゆっくりな場合は、成長するにつれて少しずつ言える音が増えていくことがあります。
一方、構音障害では、特定の音の誤りが長く残ったり、本来とは異なる舌の使い方が習慣化したりすることがあります。
つまり、発音の発達がゆっくり=構音障害ではありません。
現在の発音だけでなく、時間とともにどのように変化しているかを見ることが重要です。
少しずつ改善しているかを見る
発音の発達を考えるときに重要なのが、以前と比較することです。
例えば半年前には多くの音を間違えていたものの、現在は正しく言える音が増えているのであれば、発音が発達していることが分かります。
反対に、何年経っても同じ誤りがほとんど変化していない場合には、一度専門家へ相談してみてもよいでしょう。
「今できないか」だけでなく、発音が変化しているかどうかを見ることがポイントです。
発音の誤り方も大切
構音障害を考えるときには、どの音を間違えているかだけでなく、どのように間違えているかも重要です。
代表的な誤り方には、
- 置換
- 省略
- 歪み
があります。
発達途中では、難しい音を簡単な音へ置き換える「置換」がみられることがあります。
一方、独特に歪んだ発音が続いている場合などは、一般的な発達途中の誤りとは異なる可能性があります。
特徴的な「歪み」には注意する
例えば、側音化構音や口蓋化構音などでは、本来とは異なる方法で舌や息を使って音をつくります。
このような発音は、一般的な発音発達でみられる「さ→た」のような置換とは性質が異なります。
独特の発音が長く続いている場合には、「まだ発達途中だから」と長期間様子を見るだけではなく、一度評価を受けることも検討しましょう。
年齢だけでは判断できない
保護者の方からよく聞かれるのが、「何歳まで様子を見ればいいですか?という質問です。
発音には年齢ごとのおおまかな発達の目安がありますが、個人差があるため、年齢だけで判断することはできません。
例えば、
- 誤っている音の種類
- 誤り方
- 誤っている音の数
- 改善しているか
- 会話の聞き取りやすさ
- 本人が困っているか
などを合わせて考えます。
3歳ではまだ不明瞭なこともある
3歳頃では、まだ発音が完成していない子どもが多くいます。
家族には伝わっていても、初めて会った人には一部聞き取りにくいこともあります。
この時期には、発音だけでなく、語彙が増えているか、文が長くなっているか、コミュニケーションを楽しんでいるかなど、言葉全体の発達を見ることが大切です。
4〜5歳になると発音が分かりやすくなる
4〜5歳頃になると、言える音が増え、会話全体も徐々に聞き取りやすくなっていきます。
ただし、「さ行」や「ら行」など一部の難しい音は、まだ安定しない場合があります。
この時期に特定の音だけが言えない場合と、多くの音が不明瞭で家族以外にはほとんど伝わらない場合とでは、見方が異なります。
就学前は一度確認するよい時期
小学校へ入ると、ひらがなの読み書きが始まり、ことばの音を意識する機会が増えます。
また、友達との会話も広がります。
就学が近づいても発音の誤りが多く残っている場合や、本人が発音を気にしている場合には、一度言語聴覚士などへ相談してみるとよいでしょう。
必要であれば就学前から構音訓練を検討することもあります。
家族には伝わるから大丈夫?
家族は毎日子どもの話を聞いているため、不明瞭な発音にも慣れています。
そのため、「家では全部分かるから問題ない」と感じることがあります。
しかし、保育園や幼稚園の先生、友達、初めて会う人には伝わりにくい場合があります。
家族以外の人にどの程度伝わっているのかも、発音の状態を考える一つのポイントです。
子ども本人が困っているかも大切
発音の問題では、発音そのものだけでなく、本人の気持ちも重要です。
例えば、
- 友達から「何て言ったの?」と何度も聞かれる
- 発音をまねされる
- 名前を言うことを嫌がる
- 人前で話したがらない
- 「この音が言えない」と本人が悩んでいる
といった場合には、発音の程度にかかわらず相談を考えてもよいでしょう。
ことば全体の発達も確認する
発音の発達がゆっくりな子どもの中には、ことばそのものの発達もゆっくりな場合があります。
例えば、
- 単語がなかなか増えない
- 文が短い
- 言われたことを理解しにくい
- 会話が続きにくい
などがある場合です。
発音だけの問題なのか、言葉全体の発達も含めた支援が必要なのかを確認することが大切です。
聞こえも確認する
正しい発音を身につけるためには、周囲の人のことばを十分に聞くことが必要です。
難聴や中耳炎などで聞こえにくい状態が続いていると、ことばの細かな音を聞き分けにくくなり、発音にも影響する可能性があります。
例えば、
- 呼びかけへの反応が悪い
- テレビの音量が大きい
- 聞き返しが多い
- 中耳炎を繰り返している
などがあれば、耳鼻咽喉科で聞こえについて相談することも大切です。
「舌を鍛えれば治る」とは限らない
発音がゆっくりだと、「舌の力が弱いのではないか」と考えることがあります。
しかし、構音には舌の力だけでなく、舌をどこへ動かすか、どのように息を出すか、正しい音を聞き分けられるかなど、さまざまな要素が関係します。
そのため、発音が遅いからといって、舌を動かす運動をたくさんすればよいとは限りません。
原因に合った支援を考えることが重要です。
家庭ではどうすればいい?
発音が気になると、家庭で何度も言い直させたくなるかもしれません。
しかし、「違うよ」「もう一回」と繰り返し指摘すると、子どもが話すこと自体を嫌がることがあります。
子どもが、「たかな!」と言ったときには、「そうだね、さかながいるね」と、会話の中で自然に正しい発音を聞かせる程度でよいでしょう。
家庭では発音を直すことより、たくさん話したくなるコミュニケーションを大切にすることが基本です。
相談したらすぐ訓練になる?
専門家へ相談したからといって、必ずすぐ構音訓練を始めるわけではありません。
評価した結果、「発達途中なので、もう少し経過をみましょう」となることもあります。
一方、特徴的な歪みがある、本人が困っている、就学が近いなどの場合には、訓練を検討することがあります。
早めに相談することは、「早く訓練を始めなければならない」という意味ではありません。
言語聴覚士は何を確認する?
言語聴覚士(ST)は、一つの音が言えるかどうかだけではなく、発音全体を確認します。
例えば、
- どの音を間違えているか
- 置換・省略・歪みのどれか
- 誤りに規則性があるか
- 年齢に対してどの程度の発達か
- 会話がどのくらい伝わるか
- 舌や唇の状態
- 聞こえ
- 言葉全体の発達
などを評価します。
そのうえで、経過観察がよいのか、構音訓練が必要なのかを考えます。
こんな場合は相談してみよう
発音の発達がゆっくりでも、すぐに心配する必要はありません。
ただし、次のような場合は一度相談してみるとよいでしょう。
- 発音がなかなか変化しない
- 誤っている音が多い
- 家族以外には伝わりにくい
- 独特の歪んだ発音がある
- 就学が近い
- 本人が発音を気にしている
- 言葉の発達にも気になる点がある
- 聞こえにも心配がある
相談先には、言語聴覚士がいる医療機関、自治体の発達相談、児童発達支援施設、ことばの教室などがあります。
まとめ
発音の発達がゆっくりだからといって、必ず構音障害になるわけではありません。幼児期には発音がまだ発達途中であり、難しい音を言いやすい音へ置き換えることもあります。
大切なのは、今その音が言えるかどうかだけではなく、時間とともに発音が改善しているか、誤り方が年齢相応か、家族以外にもことばが伝わっているかなどを総合的にみることです。
一方、特徴的な歪みが続いている、発音が長期間ほとんど変わらない、本人が困っている、就学が近づいているといった場合には、一度専門家へ相談してみましょう。
家庭では無理に何度も言い直させるのではなく、子どもが「話したい」と思える楽しいコミュニケーションを大切にしながら、発音の成長を見守っていきましょう。

