遊びの中に発音練習を取り入れる方法
「発音練習を始めても、すぐに飽きてしまう」「机に座って練習するのを嫌がる」
小さな子どもの構音訓練では、このようなことも珍しくありません。
発音練習というと、絵カードを見ながら同じ音や単語を何度も繰り返すイメージがあるかもしれません。
しかし、子どもによっては遊びの中に練習を取り入れた方が、楽しみながら繰り返し発音できることがあります。
この記事では、家庭でも取り入れやすい発音練習の遊び方を紹介します。
なぜ遊びを取り入れるの?
構音訓練では、正しい発音を一度出せれば終わりではありません。
正しい音を安定して出せるようにし、単語、文章、会話へと広げていく必要があります。
そのためには、ある程度繰り返し練習することが必要です。
しかし、「『さかな』を10回言って」と繰り返すだけでは、子どもが飽きてしまうことがあります。
そこで、遊びの中に発音を入れることで、楽しみながら繰り返す機会をつくります。
遊びなら何でもよいわけではない
遊びを取り入れる目的は、単に楽しくすることだけではありません。
大切なのは、現在練習している音や単語を正しい方法で繰り返せることです。
まだ「さ」を正しく出せない子どもに、「さ」が入った単語をゲームの中で何十回も言わせても、適切な練習にならないことがあります。
言語聴覚士から家庭練習が出ている場合は、その課題を遊びに組み込むとよいでしょう。
絵カードを使ったゲーム
構音訓練で使いやすいのが絵カードです。
例えば「さ」を練習しているのであれば、「さかな」「さる」「さいふ」など、現在正しく言える単語のカードを用意します。
カードを裏返して並べ、「1枚引く → 絵の名前を言う」というルールにするだけでもゲームになります。
親子で交互にカードを引けば、子どもだけが練習させられている感じも少なくなります。
神経衰弱にする
同じ絵カードを2枚ずつ用意すれば、神経衰弱にもできます。
カードをめくるたびに、「さかな」「さくら」など、絵の名前を言います。
カードを探すことが遊びの中心になるため、自然に目的となる単語を繰り返すことができます。
すごろくに取り入れる
すごろくも発音練習に使えます。
例えば、
サイコロを振る → コマを進める → 止まったマスのカードを1枚引く → 単語を言う
というルールにします。
「発音できたら進める」というルールにすると、発音の成否が勝敗に結びつきすぎることがあります。
できた・できないにかかわらずゲームは進め、発音については必要なときだけ声をかける方が楽しみやすいでしょう。
宝探しゲームにする
練習する絵カードを部屋の中に隠します。
子どもがカードを見つけたら、「さかな見つけた!」「さるがあった!」などと言ってもらいます。
単語練習の段階なら絵の名前だけ、文章練習へ進んでいるなら「○○を見つけた」という文にするなど、訓練段階によって難易度を変えられます。
お店屋さんごっこにする
ままごとやお店屋さんごっこが好きな子どもなら、練習している音を含むものを商品にします。
例えば、
「これください」
「さかなください」
「○○を3つください」
など、遊びながらことばを使います。
単語だけでなく文章の中で正しい発音を使う練習にもできます。
釣りゲームにする
紙で魚やカードを作り、簡単な釣りゲームにする方法もあります。
釣ったカードの名前を言ったり、「さかなが釣れた」「赤いさかなが釣れた」と文章にしたりします。
子どもの訓練段階によって、
単語 → 短い文 → 自分で文章をつくる
と難しくすることができます。
サイコロを使う
普通のサイコロを使って、「出た数字の回数だけ練習する」という方法もあります。
ただし、6が出たから難しい音を必ず6回言わせる、といった使い方は避けましょう。
正しく言える課題を使い、子どもの集中力に合わせて回数を調整します。
クイズにする
練習単語を答えにしたクイズも使えます。
例えば「さかな」を練習するなら、「水の中を泳いでいる生き物は何でしょう?」と質問します。
子どもが、「さかな!」と答えます。
絵を見て名前を言うだけでなく、自分でことばを思い出して発音する練習になります。
「どっち?」ゲームも使いやすい
二つの絵を見せて、「食べたいのはどっち?」「好きなのはどっち?」などと質問します。
子どもは選んだものの名前を言います。
文章練習なら、「○○が好き」「○○が食べたい」と答えてもらうこともできます。
単語練習から文章練習へ移行するときにも使いやすい方法です。
親子で交互に言う
発音練習が、「親が問題を出す → 子どもが答える」だけになると、テストのように感じる子どももいます。
そこで、「次はお母さんの番」「今度はお父さんがカードを引くね」と交互に行います。
大人も一緒に参加することで、発音練習というよりゲームとして取り組みやすくなります。
わざと間違えるゲームもある
正しい音と誤った音を聞き分けられる段階では、大人があえて間違える方法もあります。
例えば、「さかな「たかな」と発音し、「今の合っていた?」と子どもに判断してもらいます。
子どもが先生役になって大人の発音をチェックする形にすると、楽しんで取り組めることがあります。
ただし、誤った発音を聞かせる課題が適しているかは、現在の訓練内容に合わせて判断します。
シールやスタンプを使う
練習が終わったらシールを貼ったり、スタンプを押したりする方法もあります。
「正しく言えたらシール」だけにすると、うまく言えないことが失敗として強調されることがあります。
そのため、「今日の練習が終わったら1枚」など、取り組んだこと自体を区切りにする方法もよいでしょう。
日常の遊びをそのまま使う
特別な教材を用意しなくても構いません。
積み木、ミニカー、人形、電車、お絵描きなど、普段好きな遊びの中に練習単語を少しだけ入れることもできます。
ただし、遊んでいる間ずっと発音を確認する必要はありません。
例えば10分遊ぶうち、最初の2~3分だけ発音を意識するなど、短く区切る方法があります。
子どもが好きな遊びを選ぶ
「発音訓練に良い遊び」を探すより、その子がすでに好きな遊びに発音練習を組み込む方がうまくいくことがあります。
電車が好きなら電車、カードが好きならカード、ままごとが好きならお店屋さんごっこといった具合です。
発音練習のために子どもを遊びへ合わせるのではなく、子どもの好きな遊びに発音練習を合わせると考えるとよいでしょう。
遊びに夢中になったら発音を優先しすぎない
遊びが盛り上がってくると、子どもが発音を間違えることがあります。
そのたびに、「違うよ」「もう一回」と遊びを止めると、楽しさが失われてしまいます。
そのような場合には、発音練習をいったん終え、そのまま自由に遊んでも構いません。
遊びの時間すべてを構音訓練にする必要はありません。
訓練段階に合わせて遊び方を変える
同じ遊びでも、子どもの段階によって内容を変えられます。
単音の段階
目的となる音を短く練習する
単語の段階
カードの名前を言う
文章の段階
「○○を見つけた」などの文を言う
会話への般化の段階
ゲームについて自由に話す
このように、一つの遊びを使いながら発音の難易度を少しずつ上げることもできます。
まとめ
家庭での発音練習は、必ずしも机に座って行う必要はありません。
絵カード、神経衰弱、すごろく、宝探し、お店屋さんごっこ、釣りゲーム、クイズなど、子どもが楽しめる遊びの中に現在の練習課題を少しだけ取り入れる方法があります。
ただし、遊びの中でたくさん発音させればよいわけではありません。
まだ正しく言えない音を何度も繰り返すのではなく、言語聴覚士との訓練で正しくできている課題を中心に取り入れます。
そして何より大切なのは、子どもにとって遊びが「発音を間違えないように気をつける時間」ばかりにならないことです。
短い時間だけ発音を意識し、その後は思いきり遊ぶ。
そのくらいのメリハリをつけながら、家庭で無理なく発音練習を続けていくとよいでしょう。

