鏡を使った発音練習にはどんな意味がある?
構音訓練では、子どもの前に鏡を置いて発音を練習することがあります。
「発音は耳で聞くものなのに、どうして鏡を見るの?」
と思う保護者もいるかもしれません。
鏡を使う大きな目的は、自分では見えにくい口や舌の動きを目で確認することです。言語聴覚士の口元と自分の口元を見比べることで、「唇はこの形」「舌はこのあたり」といった発音のポイントを理解しやすくなることがあります。
ただし、すべての音が鏡だけで分かるわけではなく、鏡は構音訓練で使う手掛かりの一つです。
この記事では、鏡を使った発音練習の意味や使い方について解説します。
発音するときの口の動きは自分では見えない
私たちは普段、自分の口元を見ずに話しています。
そのため子どもに、「唇を丸くして」「舌をもう少し中に入れて」と説明しても、自分が実際にどのような動きをしているのか分かりにくいことがあります。
そこで役立つのが鏡です。
鏡を見ることで、自分の口の状態を視覚的に確認できるようになります。
言語聴覚士の口元と比べられる
構音訓練では、言語聴覚士が正しい発音の見本を示すことがあります。
例えば、「先生の口を見てみよう」と見本を示した後、子どもが鏡を見ながら同じ形をつくります。
言語聴覚士の口元を見る → 自分の口元を見る → 違いを確認する
という流れです。
言葉だけで説明されるよりも、理解しやすい子どももいます。
唇の形を確認できる
鏡で特に確認しやすいのが唇です。
例えば、
- 唇が閉じているか
- 唇が開いているか
- 丸くなっているか
- 横に広がっているか
などを目で確認できます。
「先生と同じ口にしてみよう」と伝えることで、幼い子どもでも取り組みやすくなる場合があります。
舌の位置を確認することもできる
舌が口の前方に出ている場合などは、鏡で確認できることがあります。
例えば、発音するときに舌が歯の間から出ている場合、
「舌が見えているかな?」
と一緒に確認できます。
子ども自身が、「本当だ。舌が出ている」と気付くこともあります。
このような気付きが、舌の位置を修正するきっかけになります。
ただし舌の奥までは見えない
鏡は便利ですが、口の中のすべてを確認できるわけではありません。
特に舌の奥の位置や、舌と上あごがどのように接触しているかなどは、鏡だけでは分かりにくいことがあります。
そのため、鏡だけで正しい構音位置を教えるのではなく、
- 言葉による説明
- 音を聞く
- 舌の感覚を意識する
- 息の流れを確認する
など、ほかの方法と組み合わせます。
「見て分かる」ことが理解の助けになる
「舌を出さないで」と言われても、自分では出しているつもりがない子どももいます。
鏡を見ることで、「この状態が『舌が出ている』ということなんだ」と理解できます。
このように、感覚だけでは分かりにくいことを目で確認できるのが鏡のメリットです。
自分で修正する練習にも使える
訓練が進んできたら、言語聴覚士が毎回、
「もう少し舌を中へ」と教えるのではなく、子ども自身に確認してもらうことがあります。
「今の口はどうだった?」と聞き、鏡を見ながら修正します。
少しずつ自分で発音を調整する力を身につけていきます。
視覚的な手掛かりとして使う
構音訓練では、正しい発音を身につけるためにさまざまな感覚を利用します。
例えば、
- 耳で音を聞く
- 目で口元を見る
- 舌の位置を感じる
- 息の流れを感じる
などです。
鏡は、この中の視覚的な手掛かりとして利用します。
耳からの説明だけでは分かりにくい子どもにとって、特に役立つことがあります。
鏡を見れば発音が治るわけではない
鏡はあくまで補助的な道具です。
鏡を見ながら何度も発音すれば、それだけで正しい発音になるわけではありません。
例えば「さ行」では、外から見える口の形だけでなく、舌と上の歯茎付近との位置関係や、息の通り道なども重要です。
見た目が似ていても、正しい音にならないことがあります。
音によって鏡の役立ち方は違う
すべての音で鏡が同じように役立つわけではありません。
唇や舌先など外から見えやすい部分が関係する音では、鏡が分かりやすい手掛かりになります。
一方、口の奥でつくる音などでは、鏡で確認できる情報が少なくなります。
対象となる音に合わせて使い分けます。
鏡を見すぎないことも大切
訓練の初期には鏡を見ながら正しい位置を確認していても、最終的には鏡なしで発音できる必要があります。
日常生活では、鏡を見ながら会話するわけではないからです。
そのため、
鏡を見ながら発音する
↓
時々鏡で確認する
↓
鏡なしで発音する
というように、少しずつ視覚的な手掛かりを減らしていくことがあります。
家庭でも鏡を使っていい?
言語聴覚士から家庭練習として勧められている場合には、鏡を使って構いません。
ただし、保護者が自己流で、
「舌はもっと右」
「もっと口を開けて」
などと細かく修正することには注意が必要です。
発音の誤り方によって、必要な舌の位置や練習方法は異なります。
家庭では、専門家から教えてもらったポイントを確認するために使うとよいでしょう。
小さな鏡でも練習できる
家庭練習では、大きな鏡を用意する必要はありません。
子どもが自分の口元を確認できる卓上鏡などでも十分です。
言語聴覚士の見本と自分の口元を交互に見られるようにすると、違いを確認しやすくなります。
子どもが鏡を嫌がる場合は?
鏡を見ることに集中できなかったり、鏡で遊んでしまったりする子どももいます。
その場合、無理に鏡を使う必要はありません。
構音訓練には、
- 見本を直接見る
- 音を聞く
- 息を感じる
- 舌の位置を言葉で確認する
など、さまざまな方法があります。
その子にとって分かりやすい方法を選ぶことが大切です。
まとめ
構音訓練で鏡を使う主な目的は、自分の口や舌の状態を目で確認することです。
言語聴覚士の口元と自分の口元を比べることで、唇の形や舌の位置などを理解しやすくなります。
また、
「自分は今どんな口の形をしているのか」
に気付き、自分で修正するための手掛かりとしても役立ちます。
ただし、発音に必要な動きのすべてが鏡で見えるわけではありません。音を聞く、舌の感覚を確認する、息の流れを感じるなど、ほかの方法と組み合わせることが大切です。
そして最終的には鏡を使わなくても正しく発音できることを目指します。
鏡は発音を治す道具そのものではなく、正しい発音の仕方を子ども自身が理解するための手掛かりの一つと考えるとよいでしょう。

