子どもの構音障害はなぜ起こる?主な原因を解説
「どうしてうちの子は発音がうまくできないのでしょうか?」
「舌の動きが悪いのでしょうか。それとも聞こえに問題があるのでしょうか?」
子どもの発音が不明瞭だと、保護者の方は「何が原因なのだろう」と心配になることがあります。
しかし、子どもの構音障害にはさまざまな原因があり、一つの原因だけで説明できるとは限りません。
発音の発達がゆっくりな場合もあれば、舌や口の形、聞こえ、発話に必要な運動機能などが関係している場合もあります。また、発音に関係する器官に明らかな問題がなくても、特定の音のつくり方がうまく身についていないこともあります。
この記事では、子どもの構音障害がなぜ起こるのか、代表的な原因について言語聴覚士がわかりやすく解説します。
発音にはたくさんの機能が関係している
私たちは普段、ほとんど意識せずに話していますが、ことばの音をつくるためには多くの機能が必要です。
例えば、
- 周囲の音を聞く
- ことばの音を聞き分ける
- 舌や唇を動かす
- あごを安定させる
- 息を適切に出す
- 声を出す
- 舌や唇を適切な位置へ動かす
といった働きを瞬間的に組み合わせています。
どこかに問題があると、正しい音をつくることが難しくなる場合があります。
① 発音の発達がまだ途中
まず考えられるのが、発音そのものがまだ発達途中であることです。
子どもは、生まれたときからすべての音を正しく発音できるわけではありません。
比較的つくりやすい音から身につけ、舌の細かな動きが必要な音は後から安定していきます。
そのため、幼児期には、「さかな」→「たかな」など、難しい音を発音しやすい音へ置き換えることがあります。
このような発音の誤りは、正常な発達の途中でもみられます。
発音の発達には個人差がある
同じ年齢でも、発音の発達には個人差があります。
ある子どもは早い時期から「さ行」を発音できても、別の子どもでは少し時間がかかることがあります。
そのため、単純に「○歳なのにこの音が言えないから構音障害」と判断することはできません。
どの音が言えないのか、どのように間違えるのか、会話がどの程度伝わるのかなどを合わせて考える必要があります。
② 音のつくり方がうまく身についていない
舌や唇、口の形に明らかな問題がなく、運動にも大きな問題がないにもかかわらず、特定の音をうまく発音できないことがあります。
このような場合にみられるのが機能性構音障害です。
発音を身につける過程で、正しい舌の位置や息の出し方とは異なる方法を覚え、その方法が定着していることがあります。
誤った発音方法が習慣になることもある
子どもがある音を初めて覚えるときに、本来とは異なる方法で音をつくることがあります。
その発音でも周囲に意味が伝われば、本人はその方法を繰り返します。
その結果、本来とは異なる舌の使い方や息の出し方が習慣として残ることがあります。
側音化構音や口蓋化構音など、特徴的な異常構音がみられることもあります。
③ 舌や唇などの動きが関係する
発音には、舌や唇を細かく動かす必要があります。
例えば「た」では舌先を適切な場所へつけ、「ぱ」では両唇を閉じてから開きます。
舌や唇を目的の位置へ動かしにくかったり、細かな調整が難しかったりすると、発音に影響することがあります。
ただし、「舌を動かすのが少し苦手だから構音障害」というように単純に判断することはできません。
実際の発音との関係を確認することが重要です。
④ 舌小帯が関係することもある
舌の裏側には、舌と口の底をつないでいる舌小帯という組織があります。
舌小帯が短い状態では、舌を前へ出したり上へ持ち上げたりする動きが制限される場合があります。
そのため、「舌小帯が短いと発音が悪くなるのでは?」と心配する保護者もいます。
しかし、舌小帯が短ければ必ず構音障害になるわけではありません。
実際の舌の動きや発音への影響を確認して判断することが大切です。
⑤ 歯並びやかみ合わせが関係する
歯やあごの状態も発音に関係しています。
特に「さ行」などの音では、舌と歯の位置関係や息の通り道が重要になります。
そのため、
- 歯列
- かみ合わせ
- 前歯の状態
- あごの形態
などによって、特定の音がつくりにくくなることがあります。
ただし、歯並びが悪い子どもすべてに構音障害が起こるわけではありません。
⑥ 口蓋裂など口の形態が関係する
発音に関係する器官の形態的な問題が原因になることもあります。
代表的なのが口唇裂・口蓋裂です。
口蓋裂では、口と鼻の間の形態や機能によって、発音時に鼻へ息が漏れたり、口の中に十分な圧力をつくれなかったりすることがあります。
その結果、正しい音をつくりにくくなる場合があります。
鼻咽腔閉鎖機能も発音に重要
発音するときには、軟口蓋などを使って口と鼻の通り道を調整します。
「ま」「な」などでは鼻へ息を流しますが、「ぱ」「た」「か」「さ」など多くの音では、鼻への通り道を閉じて口から息を出します。
この働きが十分でない状態を鼻咽腔閉鎖機能不全といいます。
鼻咽腔閉鎖機能不全があると、鼻にかかった声や鼻からの息漏れ、子音の弱さなどがみられることがあります。
代償的な発音を身につけることもある
口の中で音をつくることが難しい場合、子どもは何とかことばを伝えようとして、本来とは違う場所で音をつくることがあります。
例えば、口の中で「た」などをつくりにくいときに、のどの声門を使って音をつくる声門破裂音がみられることがあります。
これは子どもがわざと間違えているわけではなく、音をつくるために身につけた代償的な方法です。
⑦ 聞こえにくさが関係する
発音を身につけるためには、自分や周囲の人の声を聞くことも非常に重要です。
子どもは大人の話す音を聞き、それをまねしながら発音を身につけていきます。
そのため、難聴などによって音が十分に聞こえていない場合、正しい発音を学びにくくなることがあります。
中耳炎が影響することもある?
乳幼児期には中耳炎を繰り返す子どももいます。
中耳に液体がたまる滲出性中耳炎などでは、一時的に聞こえにくくなることがあります。
聞こえにくい状態が長期間続く場合には、発音や言葉の発達に影響する可能性があります。
発音が不明瞭で呼びかけへの反応なども気になる場合には、耳鼻咽喉科で聞こえを確認することも大切です。
⑧ 脳や神経・筋肉の問題が関係する
脳や神経、筋肉などの問題によって、話すために必要な運動を適切に行うことが難しい場合があります。
これを運動障害性構音障害(dysarthria:ディサースリア)といいます。
子どもでは、脳性麻痺などに伴ってみられることがあります。
運動障害性構音障害では発音以外にも影響する
運動障害性構音障害では、特定の音だけを間違えるというより、話し方全体に影響することがあります。
例えば、
- 発音が全体的に不明瞭
- 声が小さい
- 声質が不安定
- 息が続きにくい
- 話す速さを調整しにくい
- 抑揚が不自然
などがみられる場合があります。
そのため、発音だけでなく呼吸や発声なども含めて評価します。
⑨ 発達の特徴が関係する場合もある
子どもの発音の問題では、言葉やコミュニケーション、発達全体を確認することもあります。
例えば、発達障害のある子どもの中には、発音が不明瞭だったり、音の習得に時間がかかったりする場合があります。
ただし、発達障害があるから必ず構音障害になるわけではありません。
反対に、構音障害があるから発達障害というわけでもありません。
それぞれを分けて評価することが必要です。
発音だけでなく言葉全体を確認する
発音が不明瞭な子どもの中には、言葉そのものの発達にも特徴がある場合があります。
例えば、
- 使える単語が少ない
- 文が短い
- 指示の理解が難しい
- 言いたいことを言葉にしにくい
などがみられる場合です。
構音だけの問題なのか、言葉の発達全体について支援が必要なのかを確認することが大切です。
⑩ 原因が一つとは限らない
構音障害では、必ず一つの原因だけがあるとは限りません。
例えば、口腔内の形態的な特徴があり、その中で独特の発音方法を身につけている場合もあります。
また、聞こえの問題と言葉の発達が同時に影響していることもあります。
そのため、「舌が悪いから」「聞こえが悪いから」と一つの原因に決めつけず、子ども全体をみることが重要です。
保護者の話し方が原因なの?
子どもの発音が悪いと、「自分の話しかけ方が悪かったのではないか」と心配する保護者もいます。
しかし、構音障害には発達、口腔内の形態、聞こえ、運動機能など、さまざまな要因が関係します。
通常の家庭での話しかけ方だけが原因で構音障害になると考える必要はありません。
大切なのは原因を責めることではなく、現在どのような発音になっているのかを確認し、必要な支援を考えることです。
指しゃぶりは構音障害の原因になる?
長期間の指しゃぶりなどが歯列やかみ合わせへ影響する場合があります。
そして歯列やかみ合わせの状態によっては、発音に影響する可能性があります。
ただし、「指しゃぶりをしたから構音障害になった」と単純に考えることはできません。
発音、歯列、舌の使い方などを総合的に確認する必要があります。
原因によって対応方法が変わる
構音障害では、原因を確認することが非常に重要です。
例えば、機能性構音障害であれば、正しい舌の位置や息の出し方を身につける構音訓練が中心になります。
一方、口蓋裂や鼻咽腔閉鎖機能不全がある場合には、医学的な治療が必要なことがあります。
聞こえに問題がある場合には、まず聞こえへの対応が必要になることもあります。
すべての構音障害に同じ練習を行えばよいわけではありません。
言語聴覚士は原因をどう調べる?
言語聴覚士(ST)は、発音だけを見るのではなく、さまざまな視点から子どもの状態を確認します。
例えば、
- どの音を間違えているか
- 置換・省略・歪みのどれか
- 発音の誤りに規則性があるか
- 舌や唇の動き
- 口腔内の状態
- 声や呼吸
- 会話の聞き取りやすさ
- 言葉の発達
- 聞こえの状態
などを確認します。
必要に応じて医師や歯科医師などと連携しながら原因を考えます。
どこに相談すればいい?
子どもの発音が気になる場合は、地域によって異なりますが、
- 言語聴覚士がいる医療機関
- 耳鼻咽喉科
- 小児科
- 歯科・口腔外科
- 児童発達支援施設
- 自治体の発達相談
- ことばの教室
などが相談先になります。
発音だけでなく、聞こえ、口の形、身体の運動などにも気になることがあれば、そのことも相談時に伝えましょう。
まとめ
子どもの構音障害が起こる原因は一つではありません。発音がまだ発達途中である場合、正しい音のつくり方が身についていない場合、舌・歯・口蓋などの形態的問題、聞こえの問題、脳や神経・筋肉の運動機能など、さまざまな要因が関係します。
また、複数の要因が重なっていることもあります。
そのため、「発音が悪いから舌を鍛えればよい」と自己判断するのではなく、まずどのような原因が関係しているのかを確認することが大切です。
発音が長く改善しない、家族以外には伝わりにくい、独特の歪みがある、本人が発音を気にしているといった場合には、言語聴覚士などの専門家へ相談し、その子に合った支援方法を考えていきましょう。

