一音から正しい発音をつくる練習方法

「『さかな』がうまく言えないときは、『さかな』を繰り返し練習すればよいのでしょうか?」

構音訓練では、単語で正しく発音できない場合、いったん単語から離れて一つの音を正しくつくることから始める場合があります。

例えば「さ」を「た」と発音している子どもであれば、最初から「さかな」を何度も練習するのではなく、まず正しい「さ」を出せるようにします。

一音で正しい発音をつくれるようになることは、その後の単語・文章・会話へ発音を広げるための土台になります。

この記事では、一音から正しい発音をつくる構音訓練について解説します。


なぜ一音から練習するの?

単語を話すときには、複数の音を短時間で連続して発音しなければなりません。

まだ正しい音のつくり方が分かっていない段階では、単語になると普段使っている誤った発音が出やすくなります。

そこで、

単語を正しく言うことよりも、まず目的となる音そのものをつくること

に集中します。

例えば「さかな」の「さ」が難しければ、いったん「かな」から離れ、「さ」だけを練習します。


まず現在の発音を確認する

一音の練習を始める前に、どのような誤りになっているのかを確認します。

同じ「さ」が言えない場合でも、

  • 「さ」が「た」になる
  • 「さ」が独特に歪む
  • 舌が歯の間から出る
  • 息が横へ流れる

など、状態はさまざまです。

誤り方が違えば、正しい音を引き出す方法も変わります。

そのため、「さ行ならこの練習」と一律に決めるのではなく、その子の構音を評価して方法を選びます。


正しい音を聞いて確認する

実際に発音する前に、目標となる音を聞いてもらいます。

例えば言語聴覚士が正しい「さ」を聞かせ、「この音をつくってみよう」と伝えます。

正しい音と誤った音の違いが分かりにくい場合には、聞き分ける練習を行ってから発音へ進むこともあります。


言語聴覚士の発音をまねしてみる

正しい音をつくる方法として、まず見本をまねしてもらうことがあります。

言語聴覚士が音を出し、子どもが同じように発音します。

これだけで正しい音が出る場合もあります。

正しく模倣できるのであれば、舌の位置などを細かく説明する必要はなく、その音を安定させる練習へ進むことができます。


舌や唇の位置を調整する

見本をまねするだけでは難しい場合には、舌や唇の位置を確認します。

例えば音によって、

  • 舌先をどこに置くか
  • 舌をどのような形にするか
  • 唇を閉じるか開くか

などが異なります。

言語聴覚士の口元を見たり、鏡を使ったりしながら、正しい構音に近づけます。


息の流れから音をつくることもある

「さ行」などでは、息の流れを利用して音を引き出すことがあります。

例えば、適切な舌の位置をつくった状態で細く息を出し、摩擦する音をつくります。

その音が安定してきたら母音を組み合わせ、目的となる音へ近づけます。

このように、いきなり完成した音を求めるのではなく、音を構成する一部分から組み立てることもあります。


すでに言える音を利用することもある

目的となる音を直接練習してもうまくいかない場合、子どもがすでに正しく発音できる音を利用することがあります。

ある音を発音した状態から舌の位置や息の出し方を少し変え、目的の音へ近づけていく方法です。

どの音を利用するかは、目的となる音や子どもの発音によって異なります。


偶然でも正しい音が出たら大切にする

構音訓練では、練習中に突然きれいな音が出ることがあります。

このとき、「今の音、よかったね」と伝え、どのような状態で正しい音が出たのかを確認します。

そして、もう一度同じ音を出せるか試します。

大切なのは、一度だけ成功することから、自分で再現できる状態へ変えていくことです。


「一回言えた」と「身についた」は違う

正しい音が一回出ても、すぐに単語練習へ進めるとは限りません。

例えば、

1回目「さ」○
2回目「た」
3回目「さ」○
4回目「た」

という状態では、まだ発音方法が安定していません。

正しい音をある程度繰り返して出せるようにし、子ども自身が「こうすればこの音になる」と分かる状態を目指します。


正しく出たときの感覚を確認する

正しい音が出たときには、「今、舌はどこにあった?」「息はどんな感じだった?」と確認することがあります。

正しい音が出たときの感覚を覚えることで、次に同じ音をつくるための手掛かりになります。

年齢が低い子どもでは、細かな説明を求めず、簡単な表現や動作で確認することもあります。


自分で正誤を判断できるようにする

最初は言語聴覚士が、「今のは上手だったね」「もう一度やってみよう」と伝えます。

慣れてきたら、「今の音はどうだった?」と子ども自身にも判断してもらいます。

自分の発音を聞き、正しいかどうか判断できるようになることは、その後の自己修正にもつながります。


できない音を何度も繰り返さない

家庭で注意したいのが、まだ正しく発音できない音を何十回も繰り返させることです。

例えば「さ」が毎回「た」になる状態で、

「さ、さ、さ、さ……」と繰り返させても、正しい「さ」の練習になっているとは限りません。

場合によっては、誤った発音を何度も繰り返すことになります。

うまく出ない場合には回数を増やすのではなく、音をつくる方法そのものを見直すことが重要です。


一音で安定したら母音や音節へ広げる

子音だけを取り出して練習している場合には、正しくつくれるようになった後、母音と組み合わせます。

そして、日本語として使う音へ広げていきます。

一つの条件で成功したからといって、すべての母音との組み合わせで同じように発音できるとは限りません。

言いやすいものから少しずつ種類を増やします。


さらに単語へ進む

一音を安定して出せるようになったら、

一音 → 音節 → 単語

と進めます。

例えば正しい「さ」が安定してきたら、「さかな」「さくら」などの単語で使えるか確認します。

単語になると元の発音へ戻る場合には、再び一音へ戻って確認しても構いません。


一音の練習を長く続けすぎない

一音で100%完璧になるまで単語へ進めない、というわけでもありません。

ある程度安定してきたら単語へ進み、難しければ一音へ戻るなど、段階を行き来しながら練習します。

構音訓練では、成功できる範囲を少しずつ広げていくことが大切です。


家庭で自己流に舌の位置を教えない

発音がうまくいかないと、保護者が舌の位置を調べて家庭で教えたくなるかもしれません。

しかし、同じ音の誤りでも原因や構音の仕方は異なります。

特に独特な歪みがある場合には、適切な方法を選ぶ必要があります。

家庭では言語聴覚士から示された方法や課題を中心に行い、うまく出ない音を無理に繰り返さないようにしましょう。


一音から練習する流れ

基本的な流れを整理すると、

正しい音を聞く

見本をまねする

必要に応じて舌・唇・息を調整する

正しい一音を引き出す

同じ音を繰り返し再現する

自分で正誤を判断する

音節・単語へ広げる

という形になります。

子どもによって必要な段階は異なるため、すでにできているところは省くこともあります。


まとめ

一音から正しい発音をつくる練習では、まだ正しく言えない単語を繰り返すのではなく、まず目的となる音そのものを正しくつくれるようにします。

正しい音を聞いたり、言語聴覚士の見本をまねたりしながら、必要に応じて舌・唇の位置や息の流れを調整します。

そして一度正しい音が出たら、何度か同じように再現できる状態へ進めます。

重要なのは練習回数を増やすことではなく、正しい音をどのようにつくればよいのかを子ども自身が少しずつ身につけることです。

一音が安定したら、音節、単語、文章、そして会話へと発音を広げていきます。

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