言語聴覚士への発音相談では何を聞かれる?
「子どもの発音について相談したいけれど、何を聞かれるのでしょうか?」
「初めての相談までに、何か準備しておいた方がよいですか?」
子どもの発音が気になって言語聴覚士(ST)へ相談すると、構音検査をする前に、保護者から普段の様子やこれまでの発達についていくつか質問されることがあります。
「発音の相談なのに、出産のことや中耳炎のことまで聞かれるの?」と思うこともあるかもしれません。
しかし、子どもの発音には、発音の発達だけでなく、聞こえ、言葉の発達、口腔内の状態、これまでの病気など、さまざまな要因が関係することがあります。
そのため、言語聴覚士は「どの音が言えないか」だけではなく、子どもの発達や生活全体について情報を集めながら発音の特徴を考えます。
この記事では、言語聴覚士への発音相談ではどのようなことを聞かれるのか、初回相談の流れに沿ってわかりやすく解説します。
最初に「何が一番気になりますか?」と聞かれる
初回相談では、まず保護者がどのようなことを気にしているのかを確認します。
例えば、
- 「さかな」が「たかな」になる
- 「し・ち・じ」が独特に聞こえる
- 多くの音を間違える
- 家族以外には聞き取りにくい
- 園から発音を指摘された
などです。
専門用語を使う必要はありません。
「『し』が何となく変に聞こえます」
「何の音か説明できないけれど、発音が気になります」
という伝え方でも十分です。
どの音が気になるか
次に、具体的にどのような音やことばで発音の誤りがみられるかを確認します。
例えば、
- さ行
- ら行
- か行
- し・ち・じ
- 特定の単語
などです。
保護者がすべての誤りを把握している必要はありません。
普段特に気になることばをいくつか伝えるだけでも、構音評価の参考になります。
実際にどんなふうに発音するか
「さ行が苦手です」だけでなく、
「さかなを『たかな』と言います」
「らっぱが『だっぱ』に聞こえます」
など、実際の発音例を聞かれることがあります。
同じ「さ行が言えない」でも、
- 別の音に置き換わる
- 音が抜ける
- 独特に歪む
など、誤り方によって構音の特徴が異なるからです。
いつ頃から発音が気になったか
保護者が最初に発音を気にした時期についても確認します。
例えば、
「3歳頃から気になっていた」
「最近、園の先生から指摘されて初めて気付いた」
などです。
いつ頃から現在の発音がみられるのかは、発音の発達経過を考える重要な情報になります。
以前と比べて発音が変わっているか
現在の発音だけでなく、以前からの変化も聞かれます。
例えば、
- 半年前より言える音が増えた
- 以前は多くの音を間違えていた
- 1年以上ほとんど変化がない
- 最近「さ」が時々正しく言えるようになった
などです。
発音が少しずつ改善しているのか、同じ誤りが長く続いているのかによって、今後の対応を考える材料になります。
いつも同じように間違えるか
発音の一貫性について質問されることもあります。
例えば「さかな」を、
いつも「たかな」と言うのか、
あるときは「たかな」、別のときは「しゃかな」、ときどき「さかな」と言うのかでは特徴が異なります。
保護者が正確に分析する必要はありませんが、
「いつも同じ間違いです」
「毎回違う気がします」
といった情報も参考になります。
家族にはどのくらい伝わるか
日常生活での会話の聞き取りやすさについても確認します。
例えば、
- 家族ならほとんど理解できる
- 家族でも分からないことがある
- 兄弟には伝わりにくい
などです。
ただし、家族は子どもの発音に慣れているため、家族だけの評価では実際の聞き取りやすさを判断しにくい場合があります。
家族以外の人には伝わるか
特に重要なのが、子どもの発音に慣れていない人とのコミュニケーションです。
例えば、
- 保育園・幼稚園の先生
- 友達
- 親戚
- 初めて会う大人
などにどの程度伝わっているかを確認します。
「家では困らないけれど、園では何度も聞き返される」という場合には、日常生活への影響があることが分かります。
園や学校から指摘されたことはあるか
保育園、幼稚園、学校などでの様子について質問されることもあります。
例えば、
「先生から『発音が少し気になります』と言われた」
「友達に聞き返されることが多いそうです」
「音読のときに特定の音を間違えます」
などです。
集団生活では家庭とは異なる話し方がみられることもあるため、園や学校からの情報は重要です。
子ども本人は発音を気にしているか
言語聴覚士は、発音そのものだけでなく本人の気持ちも確認します。
例えば、
- 本人はまったく気にしていない
- 「この音が言えない」と話している
- 人前で話すことを嫌がる
- 言いにくいことばを避ける
- 発音を指摘されると怒る
などです。
同じ程度の構音の誤りでも、本人がどの程度困っているかによって支援の優先度は変わります。
発音をからかわれたことはあるか
友達などから発音をまねされたり、からかわれたりしたことがないか確認する場合もあります。
これは発音の重症度を測るためだけではありません。
子どもが安心してコミュニケーションできているかを確認するためです。
もし発音を理由にからかわれている場合には、構音訓練だけでなく園や学校での環境調整も大切になります。
言葉を話し始めた時期
発音の評価では、言葉そのものの発達について質問することがあります。
例えば、
- 初めて意味のある単語を話した時期
- 二語文を話し始めた時期
- ことばがどのように増えてきたか
などです。
発音だけがゆっくりなのか、言葉全体の発達にも特徴があるのかを考えるための情報になります。
現在どのくらい話せるか
現在の言葉の発達についても確認します。
例えば、
- 単語中心
- 短い文章を話す
- 出来事を詳しく説明できる
- 会話のやり取りができる
などです。
子どもの年齢と合わせながら、構音だけの問題なのか、言葉全体について評価した方がよいのかを考えます。
言われたことを理解できているか
「話す力」だけでなく「聞いて理解する力」について質問される場合もあります。
例えば、
「簡単な指示は分かりますか?」
「複数の内容が入った指示も理解できますか?」
などです。
発音が不明瞭でも言葉の理解にはまったく問題がない子どももいます。
反対に、言葉の理解にもゆっくりさがある場合には、構音だけではなく言語発達全体を評価します。
聞こえについて聞かれる
発音の相談では、聞こえについて質問されることがよくあります。
例えば、
- 呼びかけへの反応
- 聞き返しの多さ
- テレビの音量
- 小さい声への反応
などです。
子どもは周囲のことばを聞きながら発音を学習するため、聴力の状態は重要です。
新生児聴覚スクリーニングの結果
乳児期に受けた新生児聴覚スクリーニングの結果について聞かれる場合があります。
結果が分かれば伝えればよいですが、覚えていなくても問題ありません。
また、新生児聴覚スクリーニングで問題がなくても、その後に中耳炎などによって聞こえにくくなることがあります。
現在の聞こえについて心配があれば、そのことも伝えましょう。
中耳炎になったことがあるか
中耳炎の既往についても質問されることがあります。
特に滲出性中耳炎では、痛みが目立たなくても一時的に聞こえにくくなる場合があります。
例えば、
- 中耳炎を何度も繰り返した
- 耳鼻咽喉科へ長く通っていた
- チューブを入れたことがある
などがあれば伝えます。
耳鼻咽喉科を受診したことがあるか
聞こえや発音について耳鼻咽喉科で相談した経験があるかも確認することがあります。
聴力検査を受けている場合には、その結果が発音評価の参考になることがあります。
検査結果を持っている場合は、相談先から求められれば持参するとよいでしょう。
舌の動きについて気になることはあるか
発音には舌の動きが関係するため、
- 舌を前に出せるか
- 舌を持ち上げにくそうか
- 舌小帯について指摘されたことがあるか
などを聞かれる場合があります。
「舌がハート型になると言われた」
「歯科で舌小帯が短いと言われた」
などがあれば伝えましょう。
歯並びやかみ合わせについて
歯科で、
- 開咬
- 受け口
- 歯列の問題
などを指摘されたことがあるか確認する場合があります。
歯並びやかみ合わせが特定の音に影響することがあるためです。
ただし、歯並びに特徴があるから必ず構音障害になるわけではありません。
実際の発音との関係を確認します。
口蓋裂などの既往
口唇裂・口蓋裂、粘膜下口蓋裂などがある場合には、必ず伝えましょう。
口蓋裂では、
- 鼻にかかった声
- 鼻からの息漏れ
- 声門破裂音などの代償性構音
がみられることがあります。
手術歴や現在通院している医療機関などについて確認されることもあります。
鼻にかかった声がないか
「声が鼻にかかっていると言われたことはありますか?」
と聞かれることがあります。
また、「発音すると鼻から息が漏れますか?」と確認されることもあります。
鼻咽腔閉鎖機能などについて評価する必要があるかを考えるためです。
出生時やこれまでの病気について
必要に応じて、出生や既往歴について尋ねることがあります。
例えば、
- 妊娠・出産時の大きな問題
- 早産
- 入院歴
- 神経疾患
- 発達に関係する病気
などです。
すべての発音相談で細かく聞かれるわけではありませんが、運動障害性構音障害などが疑われる場合には重要な情報になります。
運動発達について聞かれることもある
子どもの状態によっては、
- 首がすわった時期
- 座った時期
- 歩き始めた時期
などについて確認することがあります。
構音の問題だけでなく、運動発達全体にも特徴がある場合には、発話に必要な運動との関係を考えるためです。
食事の様子を聞かれることもある
舌・唇・あごは、発音だけでなく食事にも使います。
そのため、
- 食べ物をこぼしやすい
- かみにくい
- 舌で食べ物を動かしにくそう
- 飲み込みに気になることがある
などを聞かれる場合があります。
特に口腔運動そのものに問題が疑われる場合には、重要な情報になります。
指しゃぶりなどについて聞かれることもある
長期間の指しゃぶりなどが歯並びやかみ合わせへ影響することがあります。
そのため、必要に応じて指しゃぶりなどの習慣について確認することがあります。
ただし、「指しゃぶりをしていたから構音障害になった」と単純に判断するわけではありません。
口腔内の状態と実際の発音を総合的に確認します。
これまで発音の相談や訓練を受けたことがあるか
以前に、
- 言語聴覚士
- ことばの教室
- 児童発達支援
- 自治体の発達相談
などを利用した経験があるか確認します。
過去に構音検査を受けている場合には、以前の結果と現在を比較することで発音の変化が分かります。
家庭でどんな練習をしているか
すでに家庭で発音練習をしている場合には、その内容を聞かれることがあります。
例えば、「毎日『さ』を10回言わせています」「YouTubeを見ながら舌の体操をしています」などです。
現在の発音に合っていない方法を行っている場合には、家庭での対応について助言を受けられることがあります。
相談前に答えを全部準備しなくても大丈夫
ここまで読むと、「こんなにたくさん覚えていないといけないの?」と思うかもしれません。
もちろん、その必要はありません。
言語聴覚士は会話しながら必要な情報を確認します。
分からないことについては、「覚えていません」「分かりません」と答えて問題ありません。
母子手帳が参考になることもある
言葉を話し始めた時期や健診で指摘された内容などを覚えていない場合には、母子手帳に記録が残っていることがあります。
施設から持参を勧められた場合には、持っていくと参考になることがあります。
ただし、必ず必要とは限りませんので、予約時の案内を確認してください。
園や学校からの資料が役立つこともある
園や学校から発音について何か伝えられている場合には、
- 連絡帳
- 面談で言われた内容
- ことばの教室などの資料
が参考になることがあります。
正式な書類がなくても、「先生からこう言われました」と伝えるだけで十分です。
家庭で気になる発音をメモしておく
初回相談前に特に役立つのが、気になる発音の簡単なメモです。
例えば、
- さかな→たかな
- らっぱ→だっぱ
- 「し」が独特に聞こえる
など、普段気付いた例をいくつか書いておくと相談時に伝えやすくなります。
すべての発音を調べる必要はありません。
動画や録音が参考になる場合もある
検査室では緊張し、普段と違う話し方になる子どももいます。
そのため、普段の会話の録音や動画が参考になることがあります。
ただし、施設によって取り扱いが異なるため、事前に求められていない場合には無理に用意する必要はありません。
言語聴覚士は保護者の話だけで判断しない
保護者から聞いた内容は重要ですが、それだけで構音障害を判断するわけではありません。
実際には、
- 自然な会話
- 構音検査
- 復唱
- 単音
- 舌・唇・あごの動き
なども確認します。
必要に応じて、聞こえや言葉の発達についても評価します。
質問は「原因を責めるため」ではない
出産歴や指しゃぶり、家庭での関わり方などを質問されると、
「何か親のせいだと思われているのかな」と感じる方もいるかもしれません。
しかし、こうした質問は誰かに原因を求めるためではありません。
発音に影響する可能性のある情報を整理し、その子に必要な評価や支援を考えるために行われます。
保護者からも質問してよい
発音相談は、言語聴覚士から質問されるだけの場ではありません。
保護者から、
- この発音は年齢相応ですか?
- 構音訓練は必要ですか?
- 家庭ではどう関わればいいですか?
- 何歳頃まで様子を見ますか?
- 次はいつ評価しますか?
などを質問して構いません。
気になっていることがあれば、事前にメモしておくと聞き忘れを防ぎやすくなります。
初回相談で構音訓練が決まるとは限らない
初回の問診や評価の結果、
- 年齢相応なので経過観察
- 数か月後に再評価
- 構音訓練を開始
- 聴力検査を行う
- 医師や歯科医師へ相談
など、さまざまな方針が考えられます。
相談したからといって、必ずすぐ訓練が始まるわけではありません。
まとめ
言語聴覚士への発音相談では、どの音をどのように間違えているかだけでなく、子どものこれまでの発達や日常生活についても質問されることがあります。
例えば、
- いつから発音が気になったか
- どんな音を間違えるか
- 発音が以前より改善しているか
- 家族以外にも会話が伝わるか
- 本人が発音を気にしているか
- 言葉の発達
- 聞こえや中耳炎
- 舌や歯並び、口腔内の状態
- これまでの病気や発達
- 園・学校での様子
などです。
これらを確認するのは、単に「発音が間違っているか」を判断するためではありません。
発音の問題がどのような背景で起こっているのか、子どもが日常生活でどの程度困っているのか、今後どのような支援が必要なのかを総合的に考えるためです。
初回相談までにすべての情報を整理したり、専門用語を覚えたりする必要はありません。普段気になっている発音の具体例をいくつか思い出しておくだけでも十分です。
分からない質問には「分かりません」と答えて構いません。
発音相談は保護者が試される場ではなく、言語聴覚士と一緒に子どもの現在の発音を整理し、これからどうしていくかを考えるための場です。

