嚥下障害の重症度はどう評価される?
「嚥下障害には重症度があるのでしょうか?」
「『軽度』や『重度』は何を基準に決まるのですか?」
「検査で重症と言われたら、もう食べられないのでしょうか?」
嚥下障害と診断されても、その程度は人によって大きく異なります。
少しむせるだけの方もいれば、食べ物や飲み物をほとんど飲み込めない方もいます。
そのため、医療現場では「嚥下障害があるかどうか」だけではなく、
「どの程度の嚥下障害なのか」を評価し、その人に合った治療や食事方法を考えます。
この記事では、嚥下障害の重症度はどのように評価されるのかについて、わかりやすく解説します。
重症度を評価する目的
嚥下障害の重症度を評価する目的は、「重症だから食べられない」と判断するためではありません。
大切なのは、
- どのような食事なら安全に食べられるか
- どのようなリハビリが必要か
- 誤嚥性肺炎の危険性はどのくらいか
を判断することです。
そのため、重症度の評価は治療方針を決めるための重要な情報になります。
重症度は一つの検査だけでは決まらない
嚥下障害の重症度は、一つの検査だけで決まるものではありません。
医師や言語聴覚士は、
- 問診
- 食事中の様子
- 嚥下機能評価
- VE(嚥下内視鏡検査)
- VF(嚥下造影検査)
などを組み合わせて総合的に判断します。
重症度を判断するポイント
誤嚥の有無
まず重要なのが、誤嚥しているかどうかです。さらに、
- 少量だけか
- 毎回起こるか
- 咳で出せるか
なども確認します。
誤嚥があっても、咳でしっかり排出できる方と、不顕性誤嚥で気づかないまま誤嚥している方では、リスクが異なります。
食べ物の残り方
飲み込んだ後に、
- のどへ食べ物が残るか
- 何度も飲み込まないと飲み込めないか
も評価します。
食べ物が多く残ると、その後に誤嚥する危険性が高くなります。
食事を安全に続けられるか
実際の食事で、
- むせる頻度
- 食事時間
- 疲れやすさ
なども重要な評価項目です。
例えば、1時間以上かけてやっと食べ終わる場合は、栄養不足や疲労につながる可能性があります。
栄養状態
嚥下障害が進行すると、
- 食事量が減る
- 体重が減る
- 筋力が低下する
ことがあります。
そのため、体重や栄養状態も重症度を考えるうえで重要です。
誤嚥性肺炎の有無
誤嚥性肺炎を繰り返している場合は、
誤嚥の影響が大きいと考えられます。
発熱や肺炎の既往も評価に含まれます。
重症度を評価する代表的な指標
医療現場では、嚥下障害の重症度を評価するために、さまざまな評価尺度が用いられています。
代表的なものには、
- FOIS(Functional Oral Intake Scale:機能的経口摂取尺度)
- DSS(Dysphagia Severity Scale:嚥下障害重症度分類)
などがあります。
FOISとは?
FOISは、「どの程度口から食べられているか」を7段階で評価する尺度です。
例えば、
- 口からまったく食べられない状態
- 一部だけ口から食べている状態
- 制限なく食べられる状態
などを段階的に評価します。
リハビリの経過を見る際にもよく使用されます。
DSSとは?
DSSは、誤嚥の程度や安全性をもとに、嚥下障害の重症度を評価する尺度です。
VEやVFの結果も参考にしながら、誤嚥の危険性を評価します。
重症でも口から食べられることがある
「重症」と言われると、もう食べられないと思われる方もいます。
しかし実際には、
- 食形態を工夫する
- 食べ方を変える
- 嚥下リハビリを行う
ことで、安全に口から食べられる方も少なくありません。
反対に、「軽症だから安心」とは限らず、体調の変化によって誤嚥性肺炎を起こすこともあります。
重症度は変化する
嚥下障害の重症度は、一度決まったら変わらないものではありません。
例えば、
- リハビリによって改善する
- 病気の進行で悪化する
ことがあります。
そのため、定期的に評価を行い、食事内容やリハビリを見直すことが大切です。
まとめ
嚥下障害の重症度は、
- 誤嚥の有無
- 食べ物の残り方
- 食事中の様子
- 栄養状態
- 誤嚥性肺炎の有無
などを総合的に評価して判断されます。
また、FOISやDSSなどの評価尺度を用いて、飲み込みの状態を客観的に把握することもあります。
重症度を評価する目的は、「食べられる・食べられない」を決めることではなく、その人に合った食事やリハビリを選ぶことです。
適切な評価を受けることで、安全に口から食べ続けられる方法を見つけることにつながります。

