病識低下とは?
脳卒中や頭部外傷の後、
- 「自分は何も問題ない」
- 「もうリハビリは必要ない」
- 「以前と変わらない」
と言う一方で、実際には、
- 忘れ物が増えている
- 仕事や家事でミスが増えている
- 周囲の助けが必要になっている
ということがあります。
ご家族は、「本人だけが障害に気づいていない」
と感じることがあるかもしれません。
このような状態は、高次脳機能障害の一つである病識低下(びょうしきていか)によって起こる場合があります。
病識低下は、リハビリや社会復帰にも大きく影響する重要な症状です。
この記事では、病識低下とはどのような症状なのか、なぜ起こるのかについてわかりやすく解説します。
病識低下とは?
病識低下とは、自分に障害や症状があることを十分に理解できなくなる状態を指します。
例えば、
- 麻痺があるのに歩けると思う
- 記憶障害があるのに問題ないと思う
- 注意障害があるのに仕事に支障はないと思う
といったことがあります。
ご本人が嘘をついているわけでも、現実から目を背けているわけでもありません。
脳の障害によって、自分の状態を客観的に把握することが難しくなっているのです。
病識とは何だろう?
病識とは、自分の病気や障害を理解する力のことです。
例えば、
- 「右手が動きにくい」
- 「忘れやすくなった」
- 「以前より疲れやすい」
と気づくことも病識の一つです。
私たちは普段、自分の状態を振り返りながら生活しています。
しかし脳に障害が起こると、その力が低下することがあります。
なぜ病識低下が起こるの?
病識低下には主に前頭葉が関係しています。
前頭葉には、
- 自分を客観的に見る
- 行動を振り返る
- ミスに気づく
- 状況を評価する
といった働きがあります。
脳卒中や頭部外傷などによって前頭葉や関連する神経ネットワークが損傷すると、
自分の状態を正しく把握することが難しくなります。
その結果、病識低下が起こります。
「認めたくない」とは少し違う
病識低下は、「障害を認めたくない」という心理的な反応とは少し異なります。
もちろん発症直後には、
- ショック
- 不安
- 否認
がみられることもあります。
しかし病識低下では、本当に問題に気づいていないことがあります。
そのため、周囲が何度説明しても理解できないことがあります。
病識低下でみられる具体例
リハビリを拒否する
「自分は問題ない」と思っているため、
リハビリの必要性を感じられないことがあります。
危険な行動を取る
歩行に介助が必要でも、「一人で歩ける」
と思い込み、転倒してしまうことがあります。
仕事復帰を急ぐ
実際には注意障害や記憶障害が残っていても、
「すぐに元の仕事ができる」と考えることがあります。
失敗を障害と結び付けられない
ミスをしても、「たまたま」
と考え、障害による影響だと認識できないことがあります。
病識低下が生活に与える影響
病識低下があると、
適切な支援やリハビリにつながりにくくなることがあります。
例えば、
- リハビリに積極的になれない
- 助言を受け入れにくい
- 安全管理が難しい
といった問題が起こります。
そのため、高次脳機能障害の中でも重要な症状の一つと考えられています。
ご家族が悩みやすい症状
病識低下は、ご家族にとっても大きな負担になることがあります。
例えば、
- 「何度説明しても分かってもらえない」
- 「危険性を理解してくれない」
- 「障害を軽く考えているように見える」
と感じることがあります。
しかし、ご本人も脳の障害によって気づけなくなっている状態です。
責めるよりも、症状として理解することが大切です。
病識は少しずつ高まることもある
病識低下は永続的とは限りません。
リハビリや経験を通して、
- 自分の苦手なことに気づく
- 周囲の助言を理解できるようになる
場合があります。
そのため、無理に認めさせようとするよりも、
気づきを支援することが重要です。
リハビリでも重要なテーマ
高次脳機能障害のリハビリでは、
病識を高める支援が重要なテーマになります。
例えば、
- 作業を振り返る
- 失敗の原因を考える
- 自分の得意・不得意を整理する
といった取り組みが行われます。
病識が高まることで、代償手段の活用や社会復帰につながりやすくなります。
まとめ
病識低下とは、自分に障害や症状があることを十分に理解できなくなる高次脳機能障害の症状です。
前頭葉などの障害によって起こり、リハビリや安全管理、社会復帰に大きな影響を与えることがあります。
ご本人がわざと認めないのではなく、本当に気づきにくくなっている場合も少なくありません。
まずは症状を正しく理解し、焦らず少しずつ気づきを支援していくことが大切です。

