なぜ自分の障害に気づけないの?
脳卒中や頭部外傷の後、
- 「自分は大丈夫」
- 「特に困っていない」
- 「リハビリはもう必要ない」
と言う一方で、実際には、
- 忘れ物が増えている
- 注意力が低下している
- 家事や仕事でミスが増えている
ということがあります。
ご家族は、「どうして本人だけ気づかないのだろう」「周りはみんな分かっているのに」
と感じることがあるかもしれません。
このような状態は、高次脳機能障害の一つである病識低下によって起こる場合があります。
この記事では、なぜ自分の障害に気づけなくなるのか、その理由についてわかりやすく解説します。
自分を客観的に見る力も脳の働き
私たちは普段、
- 自分の失敗に気づく
- 苦手なことを理解する
- 周囲との違いを認識する
といったことを自然に行っています。
例えば、
「最近疲れやすいな」「今日はミスが多かったな」
と振り返ることがあります。
こうした力は当たり前のように思えますが、実は脳の働きによって支えられています。
脳に障害が起こると、自分自身を客観的に見る力が低下することがあります。
前頭葉の障害が関係している
病識低下には主に前頭葉が関係しています。
前頭葉には、
- 自分の行動を振り返る
- ミスに気づく
- 状況を評価する
- 行動を修正する
といった役割があります。
脳卒中や頭部外傷などによって前頭葉や関連する神経ネットワークが損傷すると、自分の状態を正しく把握することが難しくなります。
その結果、「問題がない」と思い込んでしまうことがあります。
障害そのものに気づけなくなる
病識低下では、障害があることを認識する力そのものが低下しています。
例えば、記憶障害があっても、
「自分は忘れていない」と思うことがあります。
注意障害があっても、
「集中力は問題ない」と感じることがあります。
これはご本人が嘘をついているわけではありません。
本当に気づいていないのです。
失敗しても結び付けられない
病識低下のある方は、失敗に気づいても、
それを障害と結び付けられないことがあります。
例えば、約束を忘れてしまったとき、
「たまたま忘れただけ」と考えることがあります。
また、仕事でミスをした場合も、
「運が悪かった」「周囲のせいだ」と捉えることがあります。
障害の影響を客観的に評価することが難しくなっているためです。
半側空間無視と似た仕組みもある
半側空間無視では、左側の情報に気づけなくなることがあります。
病識低下も、ある意味では
「自分の障害に気づけない状態」と考えることができます。
脳の障害によって、本来気づくべき情報を十分に認識できなくなっているのです。
「認めたくない」とは違う場合がある
ご家族は、「障害を認めたくないだけでは?」
と思うことがあるかもしれません。
確かに発症直後には、
- ショック
- 不安
- 否認
といった心理的反応がみられることがあります。
しかし病識低下では、
心理的な問題ではなく脳の障害によって気づけなくなっている場合があります。
そのため、何度説明しても理解できないことがあります。
自信があるように見えることもある
病識低下のある方は、実際よりも自分の能力を高く評価することがあります。
例えば、
- 一人で外出できる
- 車の運転ができる
- 仕事に戻れる
と考えることがあります。
しかし実際には、注意障害や記憶障害が残っていることもあります。
そのため、安全面で問題が生じることがあります。
病識低下が起こると何が問題になる?
病識低下は生活やリハビリに大きな影響を与えます。
例えば、
- リハビリの必要性を感じない
- 助言を受け入れにくい
- 危険な行動を取る
といったことがあります。
そのため、高次脳機能障害の中でも特に重要な症状の一つとされています。
病識は少しずつ高まることがある
病識低下があるからといって、一生そのままとは限りません。
日常生活やリハビリを通して、
- 自分の苦手なことに気づく
- 周囲の助言を理解する
ようになることがあります。
また、実際の体験を通して気づきが生まれることもあります。
そのため、焦らず支援を続けることが大切です。
ご家族が知っておいてほしいこと
病識低下がある方に対して、
「どうして分からないの?」と責めたくなることがあるかもしれません。
しかし、ご本人も脳の障害によって気づけなくなっている状態です。
無理に認めさせようとするよりも、
- 具体的な体験を共有する
- 一緒に振り返る
- 安全を確保する
ことが重要になります。
まとめ
自分の障害に気づけなくなるのは、病識低下によって自分の状態を客観的に見る力が低下するためです。
前頭葉などの障害によって、
- ミスに気づく
- 状況を評価する
- 障害を理解する
ことが難しくなります。
これは本人がわざと認めないのではなく、脳の障害によって起こる症状です。
まずは病識低下について正しく理解し、焦らず少しずつ気づきを支援していくことが大切です。

