家族みんなで子どもが安心して話せる環境をつくるには?
子どもの発音に難しさがあると、家族は「どう接すればいいのだろう」と迷うことがあります。
保護者は発音を直さないよう意識していても、きょうだいが指摘したり、祖父母が何度も言い直させたりすることもあります。
子どもが安心して話すためには、家族の誰か一人だけでなく、家族全体で「発音の正しさより、伝えたいことを大切にする」という考え方を共有することが大切です。
この記事では、家庭の中で子どもが安心して話せる環境をつくるためのポイントを解説します。
家族みんなが同じ考え方を持つ
家庭で大切なのは、発音への対応が家族によって大きく違わないことです。
例えば、
保護者は発音を直さない
祖父母は毎回言い直させる
きょうだいは間違いを笑う
という状態では、子どもが戸惑ってしまいます。
細かい対応まで完全にそろえる必要はありませんが、
- 発音を笑わない
- 毎回言い直させない
- 普段は話の内容を聞く
といった基本的な方針は共有しておくとよいでしょう。
発音より「何を伝えたいか」を大切にする
例えば子どもが、「たかな見たよ!」と言ったとします。
家族が注目したいのは、「さかな」を正しく言えなかったことではなく、「魚を見たことを伝えたい」という内容です。
「さかなを見たんだね。どこで見たの?」
と返せば、正しいことばも自然に聞かせながら会話を続けられます。
家庭では、発音チェックより会話を楽しむことを優先する時間を十分につくりましょう。
間違えるたびに言い直させない
発音が気になると、
「違うよ」
「もう一回言って」
と声をかけたくなることがあります。
しかし、まだ正しい音をつくれない段階では、何度言い直しても同じ発音になることがあります。
日常会話で毎回修正するより、構音訓練や家庭練習の時間に正しい発音を練習し、それ以外では普通に会話する方がよいでしょう。
発音を笑ったり真似したりしない
幼い子どもの発音は、大人にはかわいらしく聞こえることがあります。
しかし、「また『たかな』って言った!」と笑ったり、同じ発音を真似したりすることは避けましょう。
本人が発音の違いを意識するようになると、からかわれたと感じることがあります。
きょうだいや祖父母にも、「言い方を笑わず、話している内容を聞こう」と伝えておくとよいでしょう。
「ちゃんと話して」と言わない
「ちゃんと話して」「はっきり言って」という声かけは、子どもにとって何を変えればよいのか分かりにくいことがあります。
本人はすでに一生懸命話しているかもしれません。
構音に問題がある場合には、注意しただけで正しい音になるとは限りません。
必要な発音練習は専門家と行い、家庭では安心して話せるやり取りを大切にしましょう。
聞き取れないときは一緒に伝え方を探す
子どもの話が分からないときには、無理に分かったふりをする必要はありません。
「ごめんね、もう一回教えて」と聞き、それでも分からなければ、
「○○のこと?」
「こっち?それともこっち?」
「指さして教えてくれる?」
など、別の方法を使います。
大切なのは、「うまく言えないから分からない」で終わらせず、「どうしたら伝わるか」を一緒に探すことです。
きょうだいには「先生役」ではなく会話相手になってもらう
年上のきょうだいが、「違うよ、こう言うんだよ」と教えたがることがあります。
悪気はなくても、毎回指摘されると負担になる場合があります。
「教えてくれようとしたんだね。でも、普段は直さなくて大丈夫だよ」と伝えましょう。
きょうだいには、発音の先生ではなく、一緒に遊び、自然に話せる相手でいてもらうことが大切です。
祖父母にも基本的な対応を伝える
祖父母と頻繁に会う場合には、
「今、この音を練習しているところ」
「普段は間違えても言い直させなくて大丈夫」
と簡単に共有しておくとよいでしょう。
専門的な説明をする必要はありません。
「間違えたら普通の発音で返して、そのまま話を続けてね」と具体的に伝えると分かりやすくなります。
家庭練習と普段の会話を分ける
構音訓練を受けている場合、家庭練習を行うことがあります。
その場合は、
練習の時間 → 発音に注意する
それ以外 → 普通に話す
と分けて考えます。
例えば1日5分だけ練習し、それが終わったら発音を気にせず会話します。
子どもにとって、家庭のすべての時間が「発音のテスト」にならないことが大切です。
子ども自身が発音を気にしたら話を聞く
子どもが、
「僕、『さ』が言えない」
「友達と話し方が違う」
と言うことがあります。
その場合、「そんなこと気にしなくていい」とすぐ否定する必要はありません。
「自分で気付いたんだね」
「その音が言いにくいんだね」
と受け止めます。
発音の違いに気付くこと自体は悪いことではありません。
ただし、気にするあまり話したがらなくなっている場合には注意が必要です。
話したくないときは無理に話させない
発音について何か言われた後などに、「今日は話したくない」ということもあります。
そのようなときに、「ちゃんと答えなさい」と無理に話させる必要はありません。
まずは本人の気持ちを確認し、安心できる場面から話せるようにします。
家庭では「無理に話さなくても大丈夫」と感じられることも大切です。
発音以外の部分にも目を向ける
発音の相談や訓練が続くと、家族の関心が発音に集中してしまうことがあります。
しかし、子どもには、
- 好きな遊び
- 得意なこと
- 面白い話
- 優しいところ
- 頑張っていること
など、発音以外にもたくさんの面があります。
家庭の会話が「今日は発音どうだった?」ばかりにならないようにしましょう。
「話してくれたこと」を喜ぶ
子どもが家族に何かを話してくれたときには、
「教えてくれてありがとう」
「それ面白いね」
「もっと聞きたいな」
など、内容に反応します。
発音が完璧でなくても、自分の話に興味を持ってもらえる経験は、安心してコミュニケーションすることにつながります。
家族の中に「安心して話せる相手」を増やす
保護者とはよく話すけれど、祖父母やきょうだいの前では話しにくいという場合もあります。
家族全体で同じように、
「発音を間違えても大丈夫」
「言いたいことを聞くよ」
という姿勢を持つことで、子どもが安心して話せる相手を増やすことができます。
家庭全体が安全なコミュニケーションの場になることが理想です。
園や学校とも必要に応じて共有する
家庭では安心して話せていても、園や学校では発音を気にしていることがあります。
その場合には、「家庭では発音を毎回直さず、話の内容を大切にしています」など、家庭での対応を先生に伝えてもよいでしょう。
特に発音をからかわれている場合や、発表を避けている場合には、園・学校との連携が重要です。
家族で決めておきたい基本ルール
家庭では、例えば次のようなルールを共有すると分かりやすいでしょう。
- 発音を笑ったり真似したりしない
- 普段の会話では毎回訂正しない
- 「ちゃんと話して」と言わない
- 分からないときは優しく聞き返す
- 話している内容に興味を持つ
- 発音練習は決めた時間だけ行う
- 困っているときは本人の気持ちを聞く
難しいルールをたくさん作る必要はありません。
家族が同じ方向を向いていることが大切です。
まとめ
子どもが安心して話せる家庭をつくるためには、保護者だけでなく、きょうだいや祖父母を含めて、家族全体で発音への基本的な関わり方を共有することが大切です。
発音を間違えたときには、
「違うよ」と毎回直すのではなく、
「さかなを見たんだね」と正しいことばを自然に返しながら、話の内容を受け止めます。
また、発音を笑ったり真似したりせず、「ちゃんと話して」と求めすぎないことも重要です。
構音訓練が必要な場合には、発音を練習する時間を設け、その時間以外は安心して自由に話せるようにしましょう。
家庭で目指したいのは、「正しく言えなければ話せない場所」ではなく、「少しくらい言いにくい音があっても、自分の話を最後まで聞いてもらえる場所」です。
家族みんながその姿勢を持つことで、子どもが安心してことばを使い、コミュニケーションを楽しめる環境につながります。

