舌の位置をどうやって子どもに教える?
「舌をもう少し上にして」と説明しても、子どもにはなかなか伝わらないことがあります。
構音訓練では、正しい発音をつくるために舌の位置を調整することがあります。しかし、舌は口の中にあり、子ども自身からは見えにくいため、言葉だけで正しい位置を理解するのは簡単ではありません。
そのため、構音訓練では、見る・聞く・感じるなど複数の手掛かりを使いながら、子どもが舌の位置を理解できるようにします。
この記事では、構音訓練で舌の位置をどのように子どもへ伝えるのかを解説します。
発音によって舌の位置は違う
日本語の音は、すべて同じ舌の位置でつくるわけではありません。
例えば「た」と「か」では、舌を使う場所が異なります。
また、「さ行」では舌と上の歯茎付近との間に狭い通り道をつくり、そこへ息を流すことが重要になります。
構音訓練では、練習する音に合わせて舌の位置や形を調整します。
「舌を正しく動かして」では分かりにくい
大人であれば「舌先を上の歯の後ろへ」といった説明を理解できますが、幼い子どもには難しいことがあります。
「舌を上げて」と伝えても、
- 舌全体を持ち上げる
- 舌を前へ出す
- 必要以上に力を入れる
など、意図した動きにならないことがあります。
そのため、子どもの年齢や理解力に合わせた伝え方が必要です。
まず言語聴覚士の口元を見せる
構音訓練では、言語聴覚士が見本を示すことがあります。
「先生の口を見てね」と伝え、唇や見える範囲の舌の位置を確認してもらいます。
子どもは大人の動きをまねすることが得意な場合も多いため、細かく説明するよりも、実際に見せた方が理解しやすいことがあります。
鏡で自分の舌を確認する
鏡もよく使われる手掛かりの一つです。
例えば舌が歯の間から出ている場合、「舌が見えているかな?」と鏡で確認します。
言語聴覚士の口元と自分の口元を見比べることで、「先生は舌が見えないけれど、自分は出ている」と違いに気付くことがあります。
「場所」を分かりやすく伝える
舌の位置を教えるときには、難しい専門用語ではなく、子どもが理解できる表現に置き換えます。
例えば、
「舌の先をここに置こう」
「上の歯の後ろを触ってみよう」
「舌をお口の中に隠そう」
などです。
子どもの年齢によっては、場所をイメージしやすい表現を使うこともあります。
まず舌で場所を探してみる
正しい発音をいきなり求めるのではなく、舌で口の中の場所を確認することがあります。
例えば、
「上の歯を舌で触ってみよう」
「上の歯の後ろを探してみよう」
などです。
目的となる場所を理解できてから、実際の発音につなげます。
「触れている感覚」を利用する
口の中は鏡では十分に見えません。
そこで重要になるのが、舌がどこに触れているかという感覚です。
子どもに、「今、舌はどこに当たっている?」と確認することがあります。
最初は分からなくても、繰り返すうちに、「歯に当たっている」「上に付いている」など、自分の舌の位置を意識できるようになることがあります。
舌だけでなく息も確認する
正しい舌の位置になっていても、それだけで正しい音になるとは限りません。
特に「さ行」などでは、舌によってつくられた狭い通り道へ息を流す必要があります。
そのため、
舌の位置を確認する → 息を出す → 音を確認する
というように、舌と息を組み合わせて練習します。
正しい音が出たときの感覚を覚える
訓練中に正しい音が出たら、
「今の舌はどこにあった?」
「さっきと何が違った?」
と確認することがあります。
正しい発音を偶然一回出すだけでなく、自分で同じ状態を再現できるようになることが重要だからです。
言葉だけでなく音も手掛かりになる
舌の位置を細かく説明しすぎると、かえって発音しにくくなる子どももいます。
その場合には、言語聴覚士が正しい音を聞かせ、
「同じ音を出してみよう」
と模倣してもらいます。
正しい音をまねする過程で、自然に適切な舌の位置へ近づくこともあります。
子どもによって分かりやすい方法は違う
舌の位置を理解する方法には個人差があります。
- 見本を見ると分かりやすい
- 鏡を見ると分かりやすい
- 言葉で説明すると理解できる
- 舌が触れる感覚を使うと分かりやすい
- 音をまねすると自然にできる
など、さまざまです。
一つの方法にこだわらず、その子が理解しやすい手掛かりを探します。
舌の体操をすれば発音が良くなる?
発音が気になると、
「舌を上下左右に動かす」
「舌をぐるぐる回す」
といった舌の体操をした方がよいのでは、と考えることがあります。
しかし、構音訓練では、単純に舌をたくさん動かせば発音が改善するわけではありません。
重要なのは、目的となる音をつくるために必要な位置や動きを学習することです。
舌の運動そのものが必要なケースもありますが、構音障害のすべての子どもに舌の筋力トレーニングが必要なわけではありません。
舌に力を入れすぎないことも大切
「舌を正しい場所へ動かそう」と意識するあまり、舌や口全体に力が入ってしまう子どももいます。
発音は非常に細かな運動なので、必要以上に力を入れればよいわけではありません。
正しい位置を確認しながら、自然に音を出せる状態を目指します。
できたら手掛かりを減らしていく
最初は、「舌をここに置こう」と毎回説明していても、最終的には説明なしで発音できる必要があります。
そのため、
詳しく舌の位置を教える
↓
簡単な合図だけにする
↓
自分で確認する
↓
何も言われなくても正しく発音する
というように、少しずつ手掛かりを減らしていきます。
家庭ではどう教えればいい?
家庭で発音練習をする場合には、言語聴覚士から教えてもらった方法をそのまま使うことが基本です。
保護者が自己流で、
「もっと舌を上げて」
「もっと奥にして」
と修正すると、本来とは違う位置を覚えてしまう可能性があります。
また、日常会話のたびに舌の位置を指摘する必要もありません。
家庭練習として指定された短い時間に行うとよいでしょう。
「正しい舌の位置」は目的ではなく手段
構音訓練では舌の位置を細かく確認することがありますが、最終的な目的は舌を決められた位置へ置くことそのものではありません。
目標は、正しい音を自然に発音できるようになることです。
正しい音が安定してきたら、舌の位置を毎回意識する必要はなくなります。
まとめ
構音訓練で舌の位置を子どもに教えるときには、言葉だけで説明するのではなく、
- 言語聴覚士の口元を見る
- 鏡で自分の口元を確認する
- 舌が触れている場所を感じる
- 正しい音を聞いてまねする
- 息の流れと組み合わせる
など、さまざまな手掛かりを使います。
大切なのは、子ども自身が正しい音を出すときには舌がこのような状態になると理解し、少しずつ自分で再現できるようになることです。
そして正しい発音が身についてきたら、鏡や言葉による指示などの手掛かりを減らし、最終的には舌の位置を意識しなくても自然に発音できる状態を目指します。

