言葉は理解しているのに話さないのはなぜ?
はじめに
「言っていることは分かっているのに、なかなか話し始めません。」
これは、言語聴覚士が保護者からよく受ける相談の一つです。
例えば、
- 「靴を持ってきて」と言うと持って来られる
- 「ご飯だよ」と言うと椅子に座る
- 「バイバイして」と言うと手を振る
このように、言葉を理解している様子はあるのに、自分から話す言葉が少ない子どもは少なくありません。
では、なぜ「理解できる」のに「話せない」のでしょうか。
この記事では、その理由についてわかりやすく解説します。
「理解する力」と「話す力」は別の能力
まず知っておきたいことは、言葉を理解する力と、話す力は同じではないということです。
言葉を理解するためには、
- 相手の話を聞く
- 言葉の意味を理解する
力が必要です。
一方、話すためには、
- 話したい内容を考える
- 言葉を選ぶ
- 順番に並べる
- 口や舌を動かして発音する
という複数の力を使います。
つまり、話すことのほうが理解することよりも複雑な作業なのです。
そのため、多くの子どもは「理解する力」が先に育ち、「話す力」はそのあとに発達していきます。
話すための準備をしている時期かもしれない
子どもは言葉を聞きながら、頭の中に少しずつ言葉をためています。
例えば、「りんご」という言葉を何度も聞くことで、
- 赤い果物
- 甘い
- 丸い
というイメージと言葉が結びついていきます。
こうした経験を積み重ねることで、ある日突然、言葉として話し始めることがあります。
「急にたくさん話すようになった」という話を聞くことがありますが、それは頭の中で準備が整った結果と考えられます。
話すことに慎重な性格の場合もある
子どもの性格も影響します。
例えば、
- 自信がついてから話したい
- 間違えたくない
- 観察することが好き
というタイプの子どもは、理解は十分できていても、言葉として表現するまでに時間がかかることがあります。
一方、おしゃべりが好きな子どもは、多少言い間違えても積極的に話す傾向があります。
どちらが良い・悪いということではなく、個性の一つです。
言葉以外の方法で伝えられている
子どもは話さなくても、
- 指さし
- 身振り
- 表情
- 大人の手を引く
などで、自分の気持ちを伝えることがあります。
これらで十分に意思が伝わっていると、急いで言葉を使う必要を感じないこともあります。
もちろん、ジェスチャーを使うこと自体はコミュニケーションの発達として大切なことです。
そのうえで、大人が言葉を添えながら関わることで、少しずつ話し言葉へとつながっていきます。
話す経験が増えることで言葉は育つ
言葉は、一人で練習して覚えるものではありません。
家族とのやり取りの中で、「これ、ワンワンだね。」「大きいね。」「おいしいね。」
など、たくさん言葉を聞き、自分でも使ってみる経験を繰り返しながら育っていきます。
子どもが話さないからといって、質問攻めにしたり、「言ってごらん」と何度も促したりするよりも、自然な会話を楽しむことが大切です。
相談したほうがよい場合もある
理解しているように見えても、
- 2歳を過ぎても意味のある言葉がほとんど出ない
- 話す言葉がなかなか増えない
- コミュニケーションが少ない
- 理解にも心配な点がある
- 一度話していた言葉が減ってきた
などの場合は、一度専門家へ相談することをおすすめします。
言葉の発達には個人差がありますが、早めに相談することで、お子さんに合った関わり方を知ることができます。
家庭でできる関わり方
言葉を理解しているのに話さない子どもには、
- 子どもの興味に合わせて話しかける
- 絵本を一緒に楽しむ
- 子どもの言いたいことを言葉にしてあげる
- 話すことを無理に強制しない
- 話せたときはたくさん褒める
といった関わりがおすすめです。
安心できる環境の中で会話を楽しむことが、言葉の発達につながります。
まとめ
言葉を理解しているのに話さない理由には、
- 理解する力のほうが先に発達するため
- 話すための準備をしているため
- 慎重な性格のため
- ジェスチャーなどで十分伝えられているため
- 話す経験を積み重ねている途中だから
など、さまざまな理由があります。
多くの場合、理解が育っていることは良い兆候ですが、言葉がなかなか増えない場合や、コミュニケーション全体に心配がある場合には、早めに専門家へ相談すると安心です。
焦らず、お子さんのペースに合わせて、毎日の会話を楽しみながら言葉の成長を見守っていきましょう。

