自宅で安全に過ごすための環境づくり(高次脳機能障害)
高次脳機能障害のある方が退院すると、病院とは違う環境で生活を送ることになります。
退院後にご家族からよく聞かれるのが、
- 「家の中で転ばないか心配」
- 「火の消し忘れが不安」
- 「どんな工夫をすれば生活しやすくなる?」
- 「家の環境を変えた方がいい?」
という相談です。
高次脳機能障害では、身体の麻痺が軽くても、
- 注意障害
- 記憶障害
- 遂行機能障害
- 半側空間無視
などによって事故や失敗が起こりやすくなることがあります。
しかし、生活環境を少し工夫するだけでも、安全性を高め、ご本人が自分でできることを増やせる場合があります。
この記事では、自宅で安心して生活するための環境づくりについて解説します。
「危険を減らす」ことを意識する
環境づくりで最も大切なのは、危険をできるだけ少なくすることです。
例えば、
- 転倒しやすい場所はないか
- つまずく物が置かれていないか
- 火や刃物の管理は安全か
などを、ご本人の目線で確認してみましょう。
「大丈夫だろう」と思っていた場所でも、実際に生活してみると危険が見つかることがあります。
床はできるだけすっきりさせる
床に物が多いと、転倒の原因になります。
特に、
- 電気コード
- 新聞や雑誌
- 小さな家具
- 段ボール
などは、つまずきやすくなります。
歩く場所にはできるだけ物を置かず、安全に移動できる環境を作りましょう。
よく使う物は決まった場所に置く
記憶障害や注意障害がある方は、物の置き場所が毎回変わると混乱しやすくなります。
例えば、
- 鍵は玄関のトレー
- 財布は引き出し
- 眼鏡はテーブルの上
- 薬は食卓
というように、
置き場所を決めておくと探し物が減ります。
ご家族も同じ場所へ戻すように心がけることが大切です。
ラベルや目印を活用する
「どこに何があるか分からない」という場合は、ラベルやイラストを活用すると分かりやすくなります。
例えば、
- 引き出しに「靴下」「下着」と表示する
- 戸棚に食器の名前を書く
- ゴミ箱に種類を書く
などです。
視覚的な情報を増やすことで、ご本人が一人で行動しやすくなります。
カレンダーやホワイトボードを見やすい場所へ
予定や大切な情報は、家族だけが管理するのではなく、ご本人も確認できるようにしましょう。
例えば、
- リビングに大きなカレンダーを置く
- ホワイトボードへ予定を書く
- 今日やることを一覧にする
などの方法があります。
「自分で確認する習慣」を作ることが、自立にもつながります。
注意が散りにくい環境を作る
注意障害がある方は、周囲の刺激が多いと集中しにくくなります。
例えば、
食事や書類の確認をするときは、
- テレビを消す
- ラジオを止める
- 人の出入りが少ない場所を選ぶ
など、落ち着いた環境を作ることが大切です。
火や刃物の管理に気をつける
記憶障害や注意障害がある場合は、火の消し忘れや刃物の取り扱いに注意が必要です。
例えば、
- IHコンロを利用する
- タイマーを活用する
- 火を使うときは家族と一緒に行う
など、ご本人の状態に合わせた工夫を考えましょう。
必要以上に制限するのではなく、安全を確保しながらできる方法を探すことが大切です。
疲れたら休める場所を作る
高次脳機能障害では、疲れやすい方が少なくありません。
疲れると、
- 集中力が低下する
- ミスが増える
- イライラしやすくなる
ことがあります。
そのため、リビングや自室などに、安心して休める場所を作っておきましょう。
無理をせず、疲れる前に休む習慣が大切です。
家族も一緒に環境を整える
環境づくりは、ご本人だけで行うものではありません。
家族も一緒に、「どうしたら生活しやすくなるかな?」と考えることが大切です。
実際に生活してみると、「ここにも工夫が必要だ」という場所が見つかることがあります。
一度で完成させようとせず、生活に合わせて少しずつ改善していきましょう。
「できること」を増やす環境を目指す
環境づくりの目的は、危険を減らすことだけではありません。
ご本人が、
- 自分で予定を確認する
- 自分で着替える
- 自分で物を探せる
など、できることを増やすことも大切な目的です。
「何でも家族がやる」のではなく、自分で行動しやすい環境を整えることが、自立につながります。
まとめ
高次脳機能障害のある方が自宅で安全に過ごすためには、転倒や事故を防ぐだけでなく、ご本人が生活しやすい環境を整えることが大切です。
物の置き場所を決めたり、ラベルやカレンダーを活用したりすることで、安心して生活しやすくなります。
また、注意が散りにくい環境や、疲れたときに休める場所を作ることも重要です。
環境づくりは一度で終わるものではありません。ご本人やご家族が生活しながら工夫を重ね、
その人に合った暮らしやすい環境を一緒に作っていきましょう。

