遺伝性難聴にはどのような種類がある?
「難聴は遺伝することがあるのでしょうか?」
「家族に難聴の人がいると、自分の子どもも難聴になるのでしょうか。」
難聴にはさまざまな原因がありますが、その中には遺伝子の変化が関係して起こる遺伝性難聴があります。
子どもの難聴の原因として比較的多くみられますが、大人になってから症状が現れるタイプもあります。
一方で、「遺伝する」と聞くと不安になる方も多いと思いますが、遺伝性難聴にはさまざまな種類があり、すべてが親から子へ同じように受け継がれるわけではありません。
この記事では、遺伝性難聴の種類や特徴について、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
遺伝性難聴とは?
遺伝性難聴とは、生まれつき、または成長する過程で、遺伝子の変化が関係して起こる難聴です。
子どもの先天性難聴では、遺伝性難聴が原因となっているケースが少なくありません。
一方で、遺伝子の変化があっても、大人になるまで症状が現れないこともあります。
遺伝性難聴には大きく2つのタイプがある
遺伝性難聴は、大きく分けると次の2つに分類されます。
① 難聴だけがみられるタイプ(非症候群性難聴)
最も多いタイプです。
聞こえ以外には大きな異常がなく、難聴が主な症状となります。
遺伝性難聴の多くは、このタイプに含まれます。
② 難聴以外の症状もみられるタイプ(症候群性難聴)
難聴に加えて、他の臓器にも症状が現れるタイプです。
例えば、
- 視力に影響が出る病気
- 腎臓の病気を伴うもの
- 心臓や甲状腺などに症状がみられるもの
などがあります。
難聴だけではなく、全身の健康管理も重要になります。
遺伝の仕方もさまざま
「遺伝する」と一言で言っても、遺伝の仕方にはいくつかの種類があります。
例えば、
- 両親から遺伝子を受け継いだときに発症する場合
- 親のどちらかから受け継ぐだけで発症する場合
- 母親から受け継がれるミトコンドリア遺伝子が関係する場合
などがあります。
そのため、家族に難聴の方がいても、必ず同じように子どもへ遺伝するわけではありません。
原因となる遺伝子はたくさんある
現在では、難聴に関係する遺伝子が数多く見つかっています。
日本人では、GJB2遺伝子の変化が比較的多くみられることが知られています。
また、SLC26A4遺伝子は、前庭水管拡大症などと関係することがあります。
このように、原因となる遺伝子によって、難聴の程度や進行の仕方は異なります。
遺伝性難聴は進行することもある
遺伝性難聴の中には、生まれたときから聞こえにくいタイプだけでなく、成長とともに少しずつ聞こえが変化するタイプもあります。
そのため、現在困っていなくても、定期的な聴力検査を受けることが大切です。
遺伝子検査を行うこともある
必要に応じて、耳鼻咽喉科などで遺伝子検査を行うことがあります。
遺伝子検査によって、
- 難聴の原因
- 今後の経過
- 家族への影響
などが分かる場合があります。
ただし、すべての難聴で原因遺伝子が特定できるわけではありません。
検査を受けるかどうかは、医師や遺伝カウンセリングの担当者と十分に相談しながら決めることが大切です。
治療や支援は原因に合わせて行う
現在のところ、遺伝子そのものを治療して難聴を改善する方法は一般的ではありません。
そのため、聞こえの状態に合わせて、
- 補聴器
- 人工内耳
- 聴覚リハビリテーション
- 学校や職場での支援
などを組み合わせながら生活を支えていきます。
家族が必要以上に自分を責める必要はない
遺伝性難聴と診断されると、「自分のせいではないか」と感じる保護者の方もいます。
しかし、遺伝子の変化は誰かの行動が原因で起こるものではありません。
大切なのは、原因を責めることではなく、必要な支援を早い時期から受けることです。
家族だけで悩まず、医療スタッフや専門家へ相談しながら進めていきましょう。
言語聴覚士ができる支援
言語聴覚士(ST)は、遺伝性難聴のある方やご家族に対して、聞こえや言葉の発達を評価し、年齢や生活に合わせた支援を行います。
補聴器や人工内耳を使用している場合は、聞き取りやコミュニケーションの練習、学校や家庭での関わり方についてもアドバイスします。
また、耳鼻咽喉科や教育機関などと連携しながら、長期的にサポートを行います。
正しい知識を持つことが安心につながる
「遺伝」という言葉だけが一人歩きすると、必要以上に不安を感じてしまうことがあります。
しかし、遺伝性難聴にはさまざまな種類があり、聞こえ方や経過も一人ひとり異なります。
正しい知識を持ち、必要な支援を受けることで、学校生活や仕事、日常生活を充実させている方もたくさんいます。
分からないことがあれば、一人で悩まず専門家へ相談することが大切です。
まとめ
遺伝性難聴は、遺伝子の変化が関係して起こる難聴で、難聴だけがみられる「非症候群性難聴」と、他の症状も伴う「症候群性難聴」に大きく分けられます。
遺伝の仕方や聞こえ方、症状の進み方は一人ひとり異なり、必ずしも親から子へ同じように受け継がれるわけではありません。
正しい知識を持ち、耳鼻咽喉科や言語聴覚士などの専門職と連携しながら、一人ひとりに合った支援を受けていくことが大切です。

