認知症と嚥下障害
認知症になると、物忘れや判断力の低下だけでなく、食べることや飲み込むことにも影響が現れることがあります。
「食事に時間がかかるようになった」
「食べ物を口に入れたまま飲み込まない」
「最近よくむせるようになった」
このような変化は、認知症による嚥下障害のサインかもしれません。
すべての認知症の方に嚥下障害が起こるわけではありませんが、病気の進行とともに飲み込みが難しくなる方も少なくありません。
この記事では、認知症と嚥下障害の関係について、わかりやすく解説します。
認知症でも嚥下障害は起こる
認知症では、脳の働きが少しずつ低下していきます。
その影響は記憶だけでなく、
- 食べ物を認識する
- 食べ方を思い出す
- 飲み込むタイミングを判断する
といった食事に関わる機能にも及びます。
さらに病気が進行すると、飲み込みに必要な筋肉の動きや反射も低下し、嚥下障害が起こることがあります。
なぜ認知症で飲み込みにくくなるの?
認知症による嚥下障害には、いくつかの原因があります。
食べ物だと認識しにくくなる
認知機能が低下すると、目の前にある食べ物を見ても、
「これは食べ物だ」と理解しにくくなることがあります。
そのため、食事が始められなかったり、食べ方がわからなくなったりすることがあります。
食べる動作がわからなくなる
スプーンの使い方や、口へ運ぶ動作など、これまで自然にできていた動作が難しくなることがあります。
このような状態は失行と呼ばれ、認知症の種類によっては早い段階からみられることもあります。
飲み込むタイミングが合わなくなる
食べ物を口の中に入れても、
- なかなか噛まない
- 飲み込まない
- 口の中にためたままになる
ことがあります。
これは飲み込みの準備やタイミングがうまくとれなくなっているためです。
飲み込みの機能そのものが低下する
認知症が進行すると、舌やのどの動き、飲み込み反射などにも影響が現れることがあります。
その結果、
- むせる
- のどに食べ物が残る
- 誤嚥しやすくなる
など、一般的な嚥下障害の症状がみられるようになります。
認知症でみられる食事中のサイン
次のような様子がみられる場合は、嚥下障害が関係している可能性があります。
- 食べ物を口に入れたまま飲み込まない
- 食事にとても時間がかかる
- よくむせる
- 水分で咳き込む
- 食後に声がガラガラになる
- 食べ物を口からこぼす
- 食事量が減った
- 原因不明の発熱を繰り返す
このような変化が続く場合は、医療機関へ相談することをおすすめします。
誤嚥性肺炎に注意
認知症では、嚥下障害によって誤嚥性肺炎のリスクが高くなります。
さらに、
- 咳をする力が弱くなる
- 口腔ケアが十分にできなくなる
- 本人がむせを訴えない
ことも重なり、肺炎が起こりやすくなることがあります。
そのため、毎日の口腔ケアや食事中の観察がとても重要です。
家族ができる工夫
認知症の方への食事では、安心して食べられる環境を整えることが大切です。
例えば、
- テレビを消して食事に集中できる環境を作る
- 一口ずつゆっくり食べてもらう
- 飲み込んだことを確認してから次の一口を勧める
- 本人のペースを大切にする
- 食事を急がせない
といった工夫が役立ちます。
また、「早く食べて」「飲み込んで」と繰り返し声をかけるよりも、落ち着いた雰囲気で食事を進める方が、スムーズに食べられることもあります。
リハビリや食事の工夫で安全に食べられることもある
認知症があっても、その人の状態に合わせた対応を行うことで、安全に食事を続けられる場合があります。
例えば、
- 食べやすい食形態に変更する
- 食事姿勢を整える
- 嚥下リハビリを行う
- 口腔ケアを徹底する
などが効果的です。
病気の進行に合わせて方法を見直しながら、その人に合った食事方法を考えていくことが大切です。
まとめ
認知症では、記憶だけでなく、食べることや飲み込むことにも影響が現れることがあります。
食べ物を認識しにくくなったり、食べ方がわからなくなったり、飲み込みの機能そのものが低下したりすることで、嚥下障害が起こります。
その結果、
- むせる
- 食事に時間がかかる
- 誤嚥性肺炎のリスクが高まる
などの問題につながることがあります。
一方で、食事環境や食形態の工夫、口腔ケア、リハビリなどによって、安全に食べ続けられる可能性もあります。
食事中の小さな変化に気づき、早めに医療機関へ相談することが大切です。

