遂行機能障害のある家族をどう支える?
脳卒中や頭部外傷の後にみられる高次脳機能障害の一つに「遂行機能障害」があります。
遂行機能障害があると、
- 計画を立てられない
- 段取りが組めない
- 優先順位を決められない
- 最後までやり遂げられない
といった症状が現れます。
ご本人は「やろうと思っているのにうまくできない」と悩んでいる一方で、ご家族は、
- なぜ行動できないのだろう
- なぜ途中でやめてしまうのだろう
- なぜ同じ失敗を繰り返すのだろう
と戸惑うことがあります。
しかし、遂行機能障害は本人のやる気や性格の問題ではなく、脳の障害によって起こる症状です。
この記事では、遂行機能障害のある方に対してご家族ができるサポートについて解説します。
まずは「脳の障害による症状」と理解する
家族支援で最も大切なのは、遂行機能障害を正しく理解することです。
遂行機能障害のある方は、
- やるべきことが分かっていても始められない
- 計画を立てられない
- 作業を最後まで続けられない
ことがあります。そのため周囲からは、
- やる気がない
- 怠けている
- 真面目ではない
と誤解されることがあります。
しかし実際には、脳の司令塔ともいわれる前頭葉の働きが低下しているために起こる症状です。
まずは「本人の努力不足ではない」と理解することが支援の第一歩です。
一度に多くのことを求めない
遂行機能障害のある方は、大きな課題を前にすると何から始めればよいか分からなくなることがあります。
例えば、「部屋を片付けておいてね」と言われても、
- ゴミを捨てる
- 本を棚に戻す
- 机を片付ける
など、やるべきことが多すぎて混乱してしまうことがあります。
そのため、「まずゴミを捨てましょう」
というように、一つずつ具体的に伝える方が取り組みやすくなります。
作業を小さく分ける
遂行機能障害への支援では、課題を小さなステップに分けることが有効です。
例えば料理であれば、
- 材料を出す
- 野菜を切る
- 鍋を準備する
- 火をつける
というように細かく区切ります。
ご本人が一つずつ達成できるようにすることで、成功体験にもつながります。
チェックリストを活用する
遂行機能障害では、手順が目に見える形になっていると行動しやすくなります。
例えば、
外出前チェック
- 財布
- 鍵
- スマートフォン
- 診察券
家事チェック
- 洗濯機を回す
- 洗濯物を干す
- 畳む
などです。
チェックリストを活用することで、手順の抜けや漏れを減らすことができます。
予定を見える化する
予定管理が苦手になることも多いため、
- カレンダー
- ホワイトボード
- 手帳
- スマートフォン
などを活用します。
例えば、
- 病院の日
- リハビリの日
- 家族との予定
を目に見える場所に記載しておくと確認しやすくなります。
急がせない
遂行機能障害がある方は、考えながら行動するため時間がかかることがあります。
そのため、「まだ終わらないの?」「早くして」と急かされると混乱しやすくなります。
焦りはミスを増やす原因にもなります。
少し時間に余裕を持って見守ることも大切な支援です。
失敗を責めすぎない
遂行機能障害では、
- 手順を間違える
- 忘れ物をする
- 準備不足になる
といった失敗が起こりやすくなります。
ご本人も、「また失敗してしまった」と落ち込んでいることがあります。
そのため、「どうしてできないの?」ではなく、
「次はどうしたらうまくいくかな?」と一緒に考える姿勢が大切です。
できたことを評価する
支援の中では、どうしても失敗に目が向きがちです。
しかし、
- チェックリストを使えた
- 一人で準備できた
- 途中まで進められた
といった小さな成功も大切な前進です。
できたことを認めてもらえると、ご本人の自信や意欲につながります。
本人の代わりにすべてやらない
ご家族が心配するあまり、すべてを代わりに行ってしまうことがあります。
もちろん必要な支援は大切ですが、何でも代わりにしてしまうと、ご本人が練習する機会を失ってしまうこともあります。
大切なのは、「できない部分を補いながら、できる部分は本人に任せる」ことです。
そのバランスが自立支援につながります。
ご家族も無理をしない
遂行機能障害への対応は長期間続くことがあります。
ご家族が一人で抱え込むと、
- 疲れてしまう
- イライラする
- 気持ちに余裕がなくなる
ことがあります。
そのため、
- 主治医
- 言語聴覚士
- 作業療法士
- 医療ソーシャルワーカー
- 家族会
などの力を借りながら支援することも大切です。
ご本人だけでなく、ご家族自身の健康も大切にしてください。
まとめ
遂行機能障害のある方への支援で大切なのは、「やる気の問題ではなく脳の障害による症状である」と理解することです。
作業を小さく分けたり、チェックリストを活用したりすることで、ご本人が行動しやすくなります。
また、失敗を責めるのではなく、できたことを評価しながら支援することも重要です。
ご家族だけで抱え込まず、専門職の力も借りながら、ご本人に合った支援方法を見つけていきましょう。

