新しいことを覚えられないのはなぜ?

脳卒中や頭部外傷の後、

  • 「昨日説明されたことを覚えていない」
  • 「何度聞いても新しいことが覚えられない」
  • 「予定を聞いたはずなのに忘れてしまう」

といった症状がみられることがあります。

ご本人は「なぜ覚えられないのだろう」と不安になり、ご家族も「何度説明しても忘れてしまう」と戸惑うことがあります。

このような症状は、高次脳機能障害による記憶障害が原因となっている場合があります。

この記事では、新しいことを覚えられなくなる理由や脳の仕組み、日常生活への影響についてわかりやすく解説します。

記憶はどのように作られるの?

私たちは毎日たくさんの情報に触れています。

しかし、そのすべてを記憶しているわけではありません。

記憶が作られるためには、大きく3つの段階があります。

① 情報を受け取る

まずは見たり聞いたりした情報を脳に取り込みます。

例えば、

  • 人の名前を聞く
  • 予定を教えてもらう
  • 新しい仕事を教わる

といった段階です。

② 記憶として保存する

取り込んだ情報を脳の中に保存します。

この過程がうまくいくことで、後から思い出せるようになります。

③ 思い出す

必要な場面で記憶を取り出します。

例えば、

  • 約束の日時を思い出す
  • 教わった手順を思い出す

といった場面です。

高次脳機能障害では、この中でも特に「保存する過程」に問題が起こることがあります。

新しいことを覚えられないのは記憶の保存が難しくなるため

記憶障害では、新しい情報を脳に定着させることが難しくなります。

例えるなら、

「ノートに書き込む前に内容が消えてしまう状態」

です。

ご本人は話を聞いているつもりでも、脳の中に十分保存されないため、後になって思い出せなくなります。

そのため、

  • 病院で説明を受けた
  • 家族と約束した
  • リハビリの内容を聞いた

といったことを覚えていられないことがあります。

海馬という部分が重要

新しい記憶を作るうえで重要な役割を果たしているのが「海馬(かいば)」です。

海馬は脳の奥にある小さな構造ですが、新しい出来事を記憶として整理し保存する働きを担っています。

脳卒中や頭部外傷などによって海馬やその周囲のネットワークが損傷すると、新しいことを覚える力が低下することがあります。

その結果、

  • 今日の出来事を忘れる
  • 初めて会った人を覚えられない
  • 新しい情報が定着しない

といった症状が現れます。

注意障害が影響していることもある

実は「覚えられない」と感じる原因が、必ずしも記憶だけの問題とは限りません。

高次脳機能障害では注意障害を伴うことも多くあります。

例えば、

  • 話の途中で気が散る
  • 説明に集中できない
  • 最後まで聞けない

といった状態になると、そもそも情報が十分に頭に入っていません。

情報が入っていなければ記憶することもできません。

そのため、注意障害と記憶障害が重なっている場合も少なくありません。

昔のことは覚えているのに新しいことが覚えられない

記憶障害の特徴として、

「昔のことはよく覚えているのに最近のことを忘れる」

ということがあります。

例えば、

  • 子どもの頃の思い出
  • 学校時代の友人
  • 若い頃の仕事

などは覚えている一方で、

  • 今日の出来事
  • 昨日の会話
  • 今週の予定

を忘れてしまうことがあります。

これは古い記憶と新しい記憶が脳の中で異なる仕組みで管理されているためです。

日常生活ではどんな困りごとが起こる?

新しいことを覚えられないことで、さまざまな困りごとが生じます。

約束や予定を忘れる

病院の予約や家族との約束を忘れてしまうことがあります。

同じ質問を繰り返す

説明を受けても記憶に残らず、何度も同じことを聞いてしまうことがあります。

新しい環境に慣れにくい

退院後の生活や新しい仕事の手順を覚えることが難しくなります。

リハビリの内容を忘れる

前回の訓練内容や教わった方法を覚えていないことがあります。

本人の努力不足ではない

記憶障害があると、

  • 「ちゃんと聞いていない」
  • 「覚える気がない」
  • 「何度も同じことを言わせる」

と誤解されることがあります。

しかし、ご本人は覚えようとしていないわけではありません。

脳の障害によって記憶を作る仕組みに問題が生じているためです。

まずは病気による症状であることを理解することが大切です。

工夫によって生活しやすくなる

記憶障害があっても、工夫によって生活しやすくなることがあります。

例えば、

  • メモを取る
  • カレンダーを活用する
  • スマートフォンのアラームを使う
  • 家族と予定を共有する
  • 決まった場所に物を置く

などです。

こうした方法は「代償手段」と呼ばれ、生活の助けになります。

まとめ

新しいことを覚えられなくなるのは、高次脳機能障害によって記憶を保存する仕組みがうまく働かなくなるためです。

特に海馬や記憶に関わる脳のネットワークが損傷すると、新しい情報を定着させることが難しくなります。

また、注意障害が影響している場合もあります。

これは本人の努力不足ではなく、脳の障害による症状です。

適切なリハビリや代償手段を活用しながら、ご本人に合った方法を見つけていくことが大切です。

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