聞こえているのに意味が分からない状態とは?
失語症のある方やご家族から、
「耳は聞こえているのに話の意味が分からない」
「音は聞こえるけれど内容が頭に入ってこない」
という相談を受けることがあります。
ご家族からすると、
「ちゃんと聞こえているなら理解できるはずでは?」
と思うかもしれません。
しかし、失語症では耳の問題ではなく、言葉を理解する脳の働きに障害が起こることがあります。
この記事では、「聞こえているのに意味が分からない状態」についてわかりやすく解説します。
耳と脳は別の役割を持っている
私たちが会話を理解するためには、
- 耳で音を聞く
- 脳で意味を理解する
という2つの段階が必要です。
耳は正常でも、脳が言葉の意味を処理できなくなることがあります。
そのため、「聞こえている」と「理解できる」は同じではありません。
音としては聞こえている
失語症の方は、相手の声そのものは聞こえています。
例えば、「おはようございます」と言われたとき、
音としては耳に入っています。しかし、その言葉の意味がうまく結び付かず、何を言われたのか理解できないことがあります。
外国語を聞いている感覚に近い
この状態を説明するときによく使われるのが、
「外国語を聞いているような感覚」
という例えです。
例えば、知らない外国語を聞くと、音は聞こえますが意味は分かりません。
失語症の理解障害も、これに近い状態になることがあります。
もちろん完全に同じではありませんが、ご家族にはイメージしやすい説明です。
ウェルニッケ失語でよくみられる
聞いた言葉の理解が難しくなる症状は、ウェルニッケ失語でよくみられます。
ウェルニッケ失語では、
- 相手の話を理解しにくい
- 長い説明が分からない
- 会話がかみ合わない
といった特徴があります。
一方で流暢に話せることも多いため、周囲から理解されにくいことがあります。
単語は分かるが文章になると難しいこともある
理解障害の程度は人によって異なります。
例えば、「お茶」という単語は分かるのに、
「お茶を飲んでから薬を飲んでください」
という文章になると理解が難しくなることがあります。
文章が長くなるほど、
- 言葉の意味を理解する
- 内容を記憶する
- 順番を整理する
必要があるためです。
会話がかみ合わなくなることがある
理解が難しくなると、質問と違う答えをしてしまうことがあります。
例えば、
「今日は何曜日ですか?」
と聞かれているのに、
「今日は天気が良いですね」
と答えることがあります。
これは聞いていないわけではなく、質問の意味を正しく理解できていないためです。
本人も困っていることが多い
理解障害があると、周囲からは
「話を聞いていない」
と思われることがあります。
しかし実際には、本人も何が分からないのか分からず困っている場合が少なくありません。
また、
- 会話についていけない
- 説明が理解できない
ことで不安やストレスを感じることもあります。
家族ができる工夫
理解しやすくするためには、
- ゆっくり話す
- 短い文で伝える
- 一度に一つの内容を話す
ことが大切です。
例えば、
「ご飯を食べて薬を飲んで歯を磨いてください」
ではなく、
「まずご飯を食べましょう」
「次に薬を飲みましょう」
と分けて伝える方が理解しやすくなります。
視覚的な情報を活用する
言葉だけでは理解が難しい場合、
- 指差し
- 写真
- 絵
- メモ
などを活用すると理解しやすくなります。
失語症の方は、視覚的な情報が大きな助けになることがあります。
リハビリで改善する可能性がある
理解障害に対しては、
- 単語理解訓練
- 聴理解訓練
- 指示理解訓練
- 読解訓練
などが行われます。
適切なリハビリによって理解力が改善することもあります。
まとめ
聞こえているのに意味が分からない状態とは、
耳では音を聞いていても、脳が言葉の意味をうまく処理できない状態です。
特にウェルニッケ失語ではこの症状がよくみられます。
ご家族は、
- ゆっくり話す
- 短く伝える
- 視覚的な情報を活用する
ことを意識すると、コミュニケーションが取りやすくなります。
「聞こえているのに理解できない」という状態を正しく理解することが、失語症のある方への大切な支援につながります。

