脳の働きと吃音の関係
吃音は脳の働きと深く関係しています
吃音は、「緊張しているから」「話し方の癖だから」と考えられていた時代がありました。
しかし現在では、吃音は脳の働きと深く関係するコミュニケーション障害であることが、多くの研究からわかってきています。
もちろん、脳に病気や大きな損傷があるという意味ではありません。
話すために必要な脳のネットワークの働き方に違いがあることが、吃音の一因と考えられています。
話すときには脳がフル活動している
私たちは何気なく会話をしていますが、話すためには脳の中で多くの処理が同時に行われています。
例えば、
- 話したい内容を考える
- 言葉を選ぶ
- 音の並びを決める
- 発音の動きを計画する
- 舌や唇、声帯を動かす
- 相手の反応を見ながら話し続ける
これらはほんの一瞬で行われています。
どこか一つでもタイミングが乱れると、言葉がスムーズに出にくくなることがあります。
脳のネットワークの違い
近年では、MRIなどを用いた脳画像研究が進み、吃音のある人では話すときの脳の活動に特徴があることが報告されています。
例えば、
- 言語を担当する脳の領域同士の連携
- 話す動きを調整するネットワーク
- 左右の脳の活動のバランス
などに違いがみられることがあります。
これらの違いによって、話すためのタイミングが合いにくくなり、音の繰り返しや詰まりが生じると考えられています。
左脳が中心となって話している
多くの人では、言葉を話す働きは左脳が中心となっています。
左脳では、
- 言葉を理解する
- 言葉を組み立てる
- 発音を計画する
といった役割を担っています。
一方、吃音のある人では、右脳の活動が通常より強くみられることがあると報告されています。
これは右脳が原因という意味ではなく、左脳の働きを補うために右脳も積極的に活動している可能性があると考えられています。
まだ研究が続いている分野であり、詳しい仕組みは完全には解明されていません。
話すタイミングの調整が難しくなる
話すためには、
- 呼吸
- 声帯
- 舌
- 唇
- あご
など、多くの器官を正確なタイミングで動かす必要があります。
吃音では、このタイミングの調整が難しくなることで、
- 音を繰り返す
- 音を引き伸ばす
- 言葉が詰まる
といった症状が現れると考えられています。
緊張すると症状が強くなる理由
「緊張するとどもりやすくなる」と感じる人は少なくありません。
これは、緊張によって、
- 呼吸が浅くなる
- 筋肉に力が入りやすくなる
- 話すことを強く意識する
などの変化が起こり、もともと調整が難しい話す動きがさらに乱れやすくなるためと考えられています。
つまり、緊張は症状を強めることはあっても、吃音そのものの原因ではありません。
脳の研究は今も進んでいる
吃音の研究は世界中で続けられています。
近年では、
- 脳画像検査
- 遺伝子研究
- 発達研究
などが進み、以前よりも多くのことがわかってきました。
しかし、「なぜこの人に吃音が起こるのか」を一つの理由だけで説明することはできません。
脳の働きだけでなく、遺伝や発達など、さまざまな要因が組み合わさって吃音が生じると考えられています。
脳の働きを知ることは安心につながる
吃音がある人や保護者の中には、
「本人の努力不足ではないか」「話し方を注意すれば治るのでは」と考えてしまう方もいます。
しかし、吃音が脳の働きと関係していることを知ることで、
- 本人を責めなくなる
- 保護者が自分を責めなくなる
- 周囲の理解が深まる
という大きな意味があります。
正しい知識を持つことは、安心して支援を受ける第一歩になります。
まとめ
吃音は、話すための脳のネットワークの働きと深く関係しているコミュニケーション障害です。話す内容を考え、発音を計画し、口や舌を動かすまでには多くの脳の働きが必要であり、その調整の難しさが吃音の症状につながると考えられています。
ただし、脳の働きだけで説明できるものではなく、遺伝や発達など複数の要因が関係しています。吃音は本人の努力不足や性格が原因ではないことを理解することが大切です。

