高次脳機能障害の方にやってはいけない声かけとは?
高次脳機能障害のあるご家族を支えていると、
- 「何度言っても忘れてしまう」
- 「どうしてできないの?」
- 「つい強い言い方をしてしまう」
と悩むことは少なくありません。
ご本人を思ってかけた言葉でも、伝え方によっては自信を失わせたり、やる気をなくしたりしてしまうことがあります。
もちろん、ご家族も毎日の介護やサポートの中で疲れがたまり、思わずきつい言葉が出てしまうこともあるでしょう。
大切なのは、「絶対に怒ってはいけない」ということではなく、高次脳機能障害の特徴を理解したうえで、できるだけ安心できる声かけを心がけることです。
この記事では、できるだけ避けたい声かけと、より良い伝え方についてご紹介します。
「どうしてできないの?」
高次脳機能障害のある方が最も傷つきやすい言葉の一つです。
例えば、
- 約束を忘れた
- 手順を間違えた
- 同じ質問を繰り返した
ときに、「どうしてできないの?」と言いたくなることがあるかもしれません。
しかし、ご本人自身も「なぜできないのか分からない」と感じていることがあります。
高次脳機能障害では、脳の障害によってできなくなっていることが多いため、責めるような言葉は自信を失う原因になってしまいます。
「さっきも言ったでしょ」
記憶障害がある方は、新しい出来事を覚えることが難しい場合があります。
そのため、同じ質問を何度も繰り返すことがあります。
そのたびに、「さっきも説明したよ」「何回言えば分かるの?」
と言われると、ご本人は不安や申し訳なさを感じることがあります。
何度も説明するのは大変ですが、メモやカレンダーを一緒に確認するなど、「思い出せる工夫」を取り入れる方が効果的です。
「ちゃんと集中して」
注意障害のある方は、集中したくても集中できないことがあります。
そのため、「ちゃんと集中して」と言われても、症状そのものが改善するわけではありません。
それよりも、
- テレビを消す
- 静かな場所で行う
- 一つずつ作業する
など、集中しやすい環境を整えることが大切です。
「頑張ればできるよ」
励ますつもりで言った言葉でも、ご本人には負担になることがあります。
もちろん、前向きな応援は大切です。
しかし、障害によって難しくなっていることに対して、「頑張ればできる」と言われると、
「自分の努力が足りないのかな」と感じてしまうことがあります。
努力を求めるよりも、「一緒にやり方を考えよう」という声かけの方が安心につながります。
「前はできたのに」
高次脳機能障害のある方は、発症前の自分と比べて落ち込んでいることが少なくありません。
そこへ、「前はできたよね」と言われると、失った能力を改めて意識し、つらい気持ちになることがあります。
大切なのは、過去ではなく、「今日はここまでできたね」「少しずつ慣れてきたね」と現在の成長に目を向けることです。
一度にたくさん指示を出す
例えば、「着替えて、薬を飲んで、バッグを持って玄関に来てね」と一度に伝えると、
どこまで覚えればよいか分からなくなることがあります。
一度に一つずつ伝えた方が理解しやすくなります。
必要に応じて、メモやチェックリストを活用することもおすすめです。
本人の代わりに何でもやってしまう
「時間がかかるから」「失敗しそうだから」と、ご家族がすべて代わりに行ってしまうことがあります。
しかし、これではご本人ができることまで減ってしまいます。
時間がかかっても、できる部分は本人に任せることが、自立につながります。
感情的に怒る
ご家族も人間です。
毎日支えていれば、イライラしてしまう日もあります。
しかし、大きな声で怒ったり責めたりすると、ご本人は萎縮し、さらに失敗が増えてしまうことがあります。
気持ちが高ぶったときは、少し距離を置いて気持ちを落ち着けることも大切です。
どんな声かけがよい?
避けたい声かけの代わりに、
例えば、
- 「一緒に確認してみましょう。」
- 「メモを見てみようか。」
- 「ここまではできていますね。」
- 「ゆっくりで大丈夫ですよ。」
- 「次はどうすればやりやすいかな?」
といった言葉は、ご本人が安心して取り組みやすくなります。
「責める」のではなく、「一緒に考える」姿勢が大切です。
家族も完璧を目指さなくてよい
毎日優しく接し続けることは簡単ではありません。
疲れている日や余裕がない日は、思わずきつい言葉が出てしまうこともあるでしょう。
そのようなときは、「自分は家族失格だ」と思う必要はありません。
大切なのは、次から少しずつ声かけを工夫していくことです。
困ったときは、リハビリスタッフや相談機関に相談しながら、一緒に方法を考えていきましょう。
まとめ
高次脳機能障害のある方への声かけでは、「どうしてできないの」「さっきも言ったでしょ」といった責める言葉は、ご本人の自信や意欲を低下させることがあります。
一方で、「一緒に確認しましょう」「ゆっくりで大丈夫ですよ」といった安心できる声かけは、ご本人が前向きに取り組む力につながります。
ご家族も毎日完璧に接する必要はありません。
高次脳機能障害の特徴を理解しながら、少しずつ伝え方を工夫していくことが、ご本人とご家族の双方にとって安心できる生活につながります。

