高次脳機能障害のある方への接し方の基本
高次脳機能障害のあるご家族と生活していると、
- 「どう声をかければいいの?」
- 「何度説明しても伝わらない……」
- 「つい強く言ってしまう」
と悩むことがあるかもしれません。
高次脳機能障害では、記憶障害や注意障害、遂行機能障害などにより、ご本人の行動や反応が発症前とは変わることがあります。
しかし、その多くは「わざと」ではなく、脳の障害による影響です。
そのため、接し方を少し工夫するだけで、ご本人の不安が軽くなり、ご家族も負担を減らせることがあります。
この記事では、高次脳機能障害のある方への基本的な接し方について解説します。
まずは「障害」を理解する
接し方を考えるうえで最も大切なのは、「本人の努力不足ではない」と理解することです。
例えば、
- 約束を忘れる
- 話を最後まで聞けない
- 同じことを何度も質問する
といった行動は、脳の障害によって起こることがあります。
「どうしてできないの?」ではなく、
「障害の影響で難しいのかもしれない」という視点を持つことが大切です。
ゆっくり、分かりやすく話す
高次脳機能障害では、一度に多くの情報を処理することが難しい場合があります。
そのため、
- ゆっくり話す
- 短い文章で伝える
- 一つずつ説明する
ことを意識しましょう。
例えば、「着替えて、薬を飲んで、そのあと病院へ行こうね」ではなく、
「まず着替えましょう。」着替えが終わったら、
「次は薬を飲みましょう。」というように順番に伝える方が分かりやすくなります。
否定よりも肯定を意識する
失敗が続くと、「違うよ」「また忘れたの?」と言いたくなることがあります。
しかし、否定されることが続くと、ご本人は自信を失いやすくなります。
例えば、「ちゃんとできていないね」ではなく、
「ここまではできていますね。」「次は一緒に確認してみましょう。」
というように、できたことを認めながら伝えることが大切です。
本人のペースを尊重する
高次脳機能障害では、考えたり思い出したりするまでに時間がかかることがあります。
質問をした後は、すぐに答えを急がせず、少し待ってみましょう。
周囲が先に答えてしまうと、ご本人が考える機会を失ってしまいます。
「待つこと」も大切な支援です。
「できること」は本人に任せる
「時間がかかるから」「失敗しそうだから」
と、ご家族がすべて行ってしまうと、ご本人ができることまで減ってしまいます。
例えば、
- 着替え
- 食器を運ぶ
- カレンダーを見る
- メモを書く
など、できることはできるだけご本人に任せましょう。
必要なときだけ手伝うことで、自立につながります。
感情的にならず落ち着いて対応する
同じ失敗を繰り返されると、ご家族もつい感情的になってしまうことがあります。
しかし、強い口調で注意すると、ご本人も混乱したり、自信を失ったりすることがあります。
イライラしたときは、一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせることも大切です。
冷静に対応することで、ご本人も安心しやすくなります。
工夫を一緒に考える
忘れ物や失敗があったときは、責めるのではなく、
「どうしたら忘れにくくなるかな?」と一緒に考えてみましょう。
例えば、
- メモを書く
- チェックリストを作る
- スマートフォンで通知を設定する
など、ご本人に合った方法を探していきます。
一緒に考える姿勢は、ご本人の主体性を育てることにもつながります。
成功体験を大切にする
リハビリでは、「できなかったこと」よりも、「できたこと」を積み重ねることが大切です。
例えば、
- 一人で着替えられた
- メモを見て予定を確認できた
- 忘れずに薬を飲めた
など、小さな成功でも十分です。
その都度、「できましたね。」「頑張りましたね。」と声をかけることで、自信や意欲につながります。
家族も完璧を目指さない
ご家族は、「もっと上手に支えなければ」と思うことがあるかもしれません。
しかし、高次脳機能障害の支援には正解が一つあるわけではありません。
うまくいかない日があっても大丈夫です。
困ったときは、
- 主治医
- 言語聴覚士
- 作業療法士
- 理学療法士
などに相談しながら、一緒に方法を考えていきましょう。
「その人らしさ」を大切にする
高次脳機能障害があっても、ご本人は一人の人格を持った大切な存在です。
障害だけを見るのではなく、
- 好きなこと
- 得意なこと
- 大切にしてきた価値観
にも目を向けて接することが大切です。
「支える人」と「支えられる人」という関係だけではなく、お互いを尊重し合える関係を目指していきましょう。
まとめ
高次脳機能障害のある方への接し方で大切なのは、「障害による症状であること」を理解し、ご本人の気持ちに寄り添うことです。
ゆっくり分かりやすく話し、できることは本人に任せながら、必要な場面だけをサポートすることで、自立や自信につながります。
また、失敗を責めるのではなく、一緒に工夫を考え、小さな成功を積み重ねていくことも大切です。
ご家族も完璧を目指さず、専門職の力を借りながら、ご本人と一緒に歩んでいくことが、安心した生活につながるでしょう。

