頭頸部がんと嚥下障害
頭頸部がんの治療を受けた後、
「食べ物が飲み込みにくくなった」
「以前よりむせることが増えた」
「食事に時間がかかるようになった」
と感じる方は少なくありません。
これは、がんそのものや治療の影響によって、飲み込みに必要な器官の働きが変化するためです。
しかし、すべての方に重い嚥下障害が起こるわけではありません。また、リハビリや食事の工夫によって、安全に食事を続けられる方も多くいます。
この記事では、頭頸部がんと嚥下障害の関係について、わかりやすく解説します。
頭頸部がんとは?
頭頸部がんとは、口やのど、喉頭(こうとう)、鼻、副鼻腔など、頭から首にかけてできるがんの総称です。
代表的なものには、
- 舌がん
- 口腔がん
- 中咽頭がん
- 下咽頭がん
- 喉頭がん
などがあります。
これらの部位は、食べることや飲み込むこと、話すことに深く関わっているため、病気や治療によって日常生活へ大きな影響が出ることがあります。
なぜ嚥下障害が起こるの?
頭頸部がんでは、がんそのものだけでなく、治療の影響によっても嚥下障害が起こります。
がんそのものによる影響
がんが大きくなると、
- 舌が動かしにくくなる
- のどが狭くなる
- 痛みで食べにくくなる
などの症状が現れることがあります。
その結果、食べ物をうまく飲み込めなくなることがあります。
手術による影響
頭頸部がんでは、がんを取り除くために手術が行われることがあります。
手術によって、
- 舌の一部を切除する
- のどの一部を切除する
- 喉頭を摘出する
などの場合には、飲み込みの仕組みが変化します。
例えば、舌の切除では食べ物をのどへ送り込む力が弱くなり、のどの手術では食べ物が残りやすくなることがあります。
手術の範囲によって症状は大きく異なります。
放射線治療による影響
放射線治療では、治療後しばらくしてから飲み込みにくさが現れることがあります。
主な理由は、
- 唾液が少なくなる
- のどが乾燥する
- 筋肉が硬くなる(線維化)
- 飲み込みに必要な筋肉の動きが悪くなる
ためです。
治療直後だけでなく、数か月から数年後に症状が現れることもあるため、長期的な経過観察が大切です。
頭頸部がんでみられる嚥下障害の症状
症状は、がんの部位や治療方法によって異なりますが、
- 食べ物が口の中に残る
- のどにつかえる感じがする
- むせる
- 水分で咳き込む
- 食事に時間がかかる
- 食後に声がガラガラになる
- 食べると疲れやすい
- 体重が減る
などがみられることがあります。
誤嚥性肺炎にも注意
飲み込みがうまくできないと、食べ物や唾液が気管へ入り、誤嚥性肺炎を起こすことがあります。
また、治療後は感覚が低下し、誤嚥してもむせにくくなる場合があります。
そのため、「むせないから大丈夫」とは言えません。
必要に応じて嚥下内視鏡検査(VE)や嚥下造影検査(VF)を行い、安全に食べられるかを確認することが重要です。
リハビリがとても重要
頭頸部がんでは、治療の前後から言語聴覚士が関わることも少なくありません。
リハビリでは、
- 舌やのどの運動
- 飲み込みの練習
- 食事姿勢の調整
- 食形態の工夫
- 安全な食べ方の指導
などを行います。
近年では、治療前からリハビリを始めることで、治療後の飲み込みの機能維持につながる可能性があることも報告されています。
食事をあきらめる必要はない
嚥下障害があると、「もう普通の食事はできないのでは…」と不安になる方もいます。
しかし実際には、
- 食事の硬さを調整する
- 一口量を工夫する
- 姿勢を調整する
- リハビリを継続する
ことで、安全に食事を楽しめる方も多くいます。
無理をすることはよくありませんが、その人に合った方法を見つけることが大切です。
家族ができるサポート
ご家族は、治療後の生活を支える大切な存在です。
例えば、
- 食事を急がせない
- むせや食事時間の変化を観察する
- 食べやすい料理を一緒に考える
- 体重の変化に気を配る
などが役立ちます。
困ったことがあれば、一人で悩まず、医師や言語聴覚士、管理栄養士などへ相談しましょう。
まとめ
頭頸部がんでは、がんそのものや手術、放射線治療などの影響によって、嚥下障害が起こることがあります。
その結果、
- むせる
- 飲み込みにくい
- 食べ物がのどに残る
- 誤嚥性肺炎のリスクが高まる
などの症状が現れることがあります。
しかし、早期からのリハビリや食事の工夫によって、安全に食事を続けられる可能性は十分あります。
気になる症状がある場合は、早めに医療スタッフへ相談し、自分に合った方法を一緒に考えていきましょう。

