失語症で人や物の名前が出てこない(呼称障害)
失語症の症状の中でも、多くの方が経験するのが「人や物の名前が出てこない」という症状です。専門的には「呼称障害(こしょうしょうがい)」と呼ばれます。
ご本人からは、
「何かわかっているのに名前が出てこない」
「顔はわかるのに名前が思い出せない」
という声をよく聞きます。
この記事では、呼称障害の特徴や原因、リハビリ方法についてわかりやすく解説します。
呼称障害とは?
呼称障害とは、人や物の名前を思い出して言うことが難しくなる症状です。
例えば、コップを見せられると、
- 飲み物を入れるもの
- 水やお茶を飲むときに使うもの
と説明できるにもかかわらず、「コップ」という名前だけが出てこないことがあります。
つまり、物の意味が分からなくなったわけではなく、名前を取り出すことが難しくなっている状態です。
なぜ名前が出てこなくなるの?
私たちは会話をするとき、脳の中で瞬時に言葉を検索しています。
例えば「りんご」を見たときには、
- これは果物である
- 赤いことが多い
- 食べ物である
といった情報を処理したうえで、「りんご」という言葉を取り出しています。
失語症になると、この言葉を取り出す過程がうまくいかなくなります。そのため、意味は分かっているのに名前だけが出てこなくなるのです。
呼称障害の具体例
呼称障害では次のような様子がみられます。
人の名前が出てこない
家族や友人の顔は分かるのに、名前が出てきません。
「ほら、あの人」
「息子の友達のお父さん」
のような言い方になることがあります。
物の名前が出てこない
コップを見て、
「水を飲むやつ」
と言うことがあります。
動作の名前が出てこない
「走る」や「洗う」などの動詞が出てこないこともあります。
「喉まで出かかっている」感覚
呼称障害の方は、「あと少しで出そうなのに出てこない」と表現することがあります。
これは健康な人が人名を思い出せないときの感覚に似ています。
ただし、失語症ではそれが頻繁に起こるため、大きなストレスになることがあります。
言い間違いが起こることもある
呼称障害では、正しい言葉の代わりに別の言葉が出ることがあります。
例えば、
- テレビ → ラジオ
- 犬 → 猫
のように関連する言葉に置き換わることがあります。
これを「意味性錯語」と呼びます。
また、
- テレビ → テレピ
- りんご → りごん
のような音の誤りがみられることもあります。
どの失語症でみられる?
呼称障害は多くの失語症でみられます。
特に、
- 健忘失語
- ブローカ失語
- ウェルニッケ失語
- 伝導失語
などでよくみられます。
なかでも健忘失語では、呼称障害が中心症状となることが少なくありません。
リハビリでは何をする?
呼称障害に対しては、さまざまな訓練が行われます。
代表的なものは、
- 絵カードを使った呼称訓練
- カテゴリー訓練
- 語頭音ヒント
- 音読訓練
- 復唱訓練
などです。
例えば、「りんご」が出ない場合、「り……」というヒントを出すことで思い出せることがあります。
家族ができるサポート
呼称障害がある方と会話するときは、
- 急がせない
- すぐ答えを言わない
- ヒントを出す
ことが大切です。
例えば、
「飲み物を入れるものだね」
「最初の文字は『こ』だよ」
などのヒントが有効な場合があります。
また、言葉が出なくても最後まで話を聞く姿勢が大切です。
まとめ
呼称障害とは、人や物の名前を思い出して言うことが難しくなる症状です。
物の意味や使い方は分かっていることが多く、名前だけが出てこないのが特徴です。失語症の中でもよくみられる症状であり、ご本人は強いもどかしさを感じています。
適切なリハビリや周囲のサポートによって改善することも少なくありません。焦らず、言葉を待ちながらコミュニケーションを続けていくことが大切です。

