失語症で言葉が出ないのはなぜ?
失語症のある方から、
「言いたいことは分かっているのに言葉が出ない」
「頭の中では分かっているのに話せない」
という声をよく聞きます。
また、ご家族からも、
「何を言いたいのか分かっているようなのに、なぜ話せないのですか?」
という質問を受けることがあります。
失語症で言葉が出ないのは、知識や記憶がなくなったからではありません。
この記事では、失語症で言葉が出なくなる理由についてわかりやすく解説します。
言葉を話すには複雑な作業が必要
私たちは普段、何気なく会話をしています。
しかし実際には、脳の中で多くの作業が行われています。
例えば、
- 言いたいことを考える
- 適切な言葉を探す
- 文を組み立てる
- 発音を計画する
- 口や舌を動かす
という流れです。失語症では、この途中のどこかに障害が生じます。
言葉の「辞書」が取り出しにくくなる
失語症の方によくみられるのが、「言葉が出てこない」という症状です。
例えば、
コップを見て、
- 何に使うか分かる
- 飲み物を入れるものだと分かる
にもかかわらず、「コップ」という言葉が出てきません。
これは言葉を忘れたのではなく、脳の中にある言葉を取り出しにくくなっている状態です。
「喉まで出かかっている」状態に似ている
誰でも、
「あの人の名前が思い出せない」
「喉まで出かかっているのに出てこない」
という経験があるでしょう。
失語症の方は、それが頻繁に起こっているような状態です。
そのため、
- もどかしい
- 悔しい
- 焦る
という気持ちになることがあります。
脳の言語中枢が障害されるため
多くの人では、言葉の機能は左脳に集中しています。
特に重要なのが、
- ブローカ野
- ウェルニッケ野
と呼ばれる言語中枢です。
脳卒中などによってこれらの部位が障害されると、言葉を探したり組み立てたりすることが難しくなります。
その結果、「言葉が出ない」という症状が現れます。
言いたい言葉とは違う言葉が出ることもある
失語症では、「テレビ」と言いたいのに、「ラジオ」と言ってしまうことがあります。
これを錯語(さくご)と呼びます。また、「テレビ」を「テレピ」などと発音してしまうこともあります。
ご本人は正しく言おうとしているのですが、脳の中で言葉の処理がうまくいかなくなっています。
考える力がなくなったわけではない
失語症の方は話せないため、「理解していないのでは?」と思われることがあります。
しかし実際には、
- 状況を理解している
- 気持ちがある
- 考えている
ことが少なくありません。
言葉にすることが難しいだけで、頭の中ではしっかり考えている場合があります。
疲れると言葉が出にくくなることも
失語症の方は、
- 疲労
- 睡眠不足
- 緊張
によって言葉が出にくくなることがあります。
例えば、午前中は話しやすかったのに、夕方になると話しにくくなることもあります。
これは脳が言葉を探すために多くのエネルギーを使っているためです。
リハビリで改善する可能性がある
言葉が出ない症状は、リハビリによって改善する可能性があります。
例えば、
- 呼称訓練
- 音読練習
- 復唱訓練
- 会話練習
などが行われます。
脳の可塑性によって、残された脳の機能が言葉を補うようになることがあります。
家族ができるサポート
言葉が出ないときは、
- 焦らせない
- 最後まで待つ
- すぐに答えを言わない
ことが大切です。
ご本人は一生懸命言葉を探しています。少し待つだけで、自分で言葉を思い出せることもあります。
まとめ
失語症で言葉が出ないのは、言葉を忘れたからではありません。
脳の言語中枢が障害され、
- 言葉を探す
- 言葉を取り出す
- 言葉を組み立てる
ことが難しくなっているためです。
また、話せなくても考える力や感情が保たれていることは少なくありません。
失語症の方のもどかしさを理解し、焦らずコミュニケーションを取ることが大切です。

