子どもが難聴と診断されたとき家族ができること
「子どもが難聴と診断されました。これから何をすればよいのでしょうか?」
「言葉の発達や学校生活に影響しないか心配です。」
子どもが難聴と診断されると、ご家族は驚きや不安を感じることがあるでしょう。
特に乳幼児の場合、「ちゃんと話せるようになるのだろうか」「どのような支援を受ければよいのだろうか」と、これからのことを心配する方も少なくありません。
子どもの聞こえを支える方法には、補聴器や人工内耳だけでなく、
言葉やコミュニケーションの支援、家庭での関わり、保育園・幼稚園・学校での環境調整など、さまざまなものがあります。
大切なのは、家族だけですべてを抱え込むのではなく、医療・療育・教育などの専門家と協力しながら、その子に合ったコミュニケーションと成長を支えていくことです。
この記事では、子どもが難聴と診断されたときに家族ができることについて、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
まずは子どもの聞こえの状態を知ろう
「難聴」といっても、聞こえ方は一人ひとり異なります。軽度の難聴から高度・重度の難聴まであり、片耳だけの場合もあれば、両耳に難聴がある場合もあります。
また、聞こえにくい音の高さや、言葉の聞き取りやすさにも違いがあります。
まずは耳鼻咽喉科で詳しい検査を受け、次のような点を確認していきます。
- どの程度の難聴なのか
- 片耳か両耳か
- どの音が聞こえにくいのか
- 原因として何が考えられるのか
- 治療できる可能性があるのか
- 補聴器などが必要なのか
家族が子どもの聞こえ方を理解することが、適切な支援を考える第一歩になります。
早い時期から支援を始めることが大切
乳幼児期は、周囲の人の声を聞いたり、やり取りを経験したりしながら、言葉やコミュニケーションを身につけていく大切な時期です。
そのため、難聴が分かった場合は、必要に応じて早い時期から聞こえやコミュニケーションを支えることが重要です。
ただし、「早く言葉を話せるようにしなければ」と焦る必要はありません。
子どもの聞こえ方や発達に合わせながら、その子が人とのやり取りを楽しめる環境をつくっていきましょう。
必要に応じて補聴器を使用する
子どもの聴力によっては、補聴器の使用を勧められることがあります。
補聴器によって周囲の声や環境音を聞き取りやすくし、言葉を学ぶ機会を増やしていきます。
子どもの場合は成長に伴って耳の大きさや聴力、生活環境が変化するため、定期的な聴力検査や補聴器の調整が重要です。
「補聴器をつけたから大丈夫」と考えるのではなく、実際の生活の中でどの程度聞こえているのかを継続して確認していきます。
人工内耳が選択肢になることもある
高度・重度の難聴があり、補聴器を使用しても十分な聞こえが得られない場合には、人工内耳が検討されることがあります。
人工内耳を使用するかどうかは、聴力だけで決まるものではありません。
年齢や発達、補聴器の装用効果、家庭の状況などを含めて専門家と相談しながら検討します。
人工内耳を使用した場合も、手術を受ければすぐに言葉が聞き取れるようになるわけではなく、継続した聴覚・言語面の支援が重要になります。
コミュニケーション方法は一つではない
子どものコミュニケーションを支える方法は、音声言語だけではありません。
子どもの聞こえ方や家庭の考え方などに応じて、
- 音声
- 手話
- 指文字
- ジェスチャー
- 文字
- 絵や写真
など、さまざまな方法を活用することができます。
大切なのは特定の方法にこだわることではなく、子どもが「伝わった」「分かった」と感じられるコミュニケーション環境をつくることです。
家庭ではたくさん話しかけよう
家庭での毎日のやり取りは、子どもの言葉やコミュニケーションの発達を支える大切な機会です。
例えば、食事をしながら「おいしいね」、散歩をしながら「犬がいるね」、着替えながら「赤いシャツを着ようね」など、
日常生活の中で子どもが見ているものや体験していることを言葉にしてみましょう。
特別な訓練を長時間行うよりも、日常生活の中で楽しくやり取りすることが大切です。
顔が見える位置から話しかける
聞こえにくい子どもは、音だけではなく、相手の口元や表情、ジェスチャーなども手掛かりにしてコミュニケーションを理解します。
話しかけるときは、できるだけ子どもの視界に入り、顔が見える位置から話しましょう。後ろから突然話しかけたり、
別の部屋から大きな声で呼びかけたりするよりも、近くへ行って注意を向けてから話す方が伝わりやすくなります。
静かな環境をつくる
難聴のある子どもは、周囲に雑音があると大人以上に言葉を聞き取りにくくなることがあります。
家庭では、大切な話をするときにテレビを消すなど、できるだけ静かな環境をつくりましょう。
特に補聴器や人工内耳を使用している場合でも、騒がしい環境では言葉を聞き分けることが難しい場合があります。
「聞こえた?」だけで判断しない
子どもがこちらを向いたからといって、言葉の内容まで理解できているとは限りません。
例えば「靴を持ってきて」と伝えたとき、実際に靴を持ってこられるかなど、日常の行動を通して理解できているかを確認することも大切です。
ただし、何度も確認して子どもをテストするような関わりにならないよう注意しましょう。
保育園・幼稚園・学校と情報を共有する
家庭では問題なく会話できていても、集団生活では聞き取りにくさが目立つことがあります。
教室では、周囲の話し声や椅子を動かす音など、さまざまな雑音があります。
また、先生との距離が遠くなることで、家庭よりも聞き取りにくくなることがあります。
園や学校には、
- どの程度聞こえるのか
- どちらの耳が聞き取りやすいのか
- 補聴器・人工内耳を使用していること
- どのような話し方が分かりやすいのか
- どのような場面で困りやすいのか
などを伝えておくとよいでしょう。
必要に応じて、座席の位置や補聴援助システム、文字による情報提示などについて相談します。
きょうだいにも分かりやすく説明する
難聴のある子どもだけでなく、きょうだいへの配慮も大切です。
例えば「○○ちゃんは聞こえにくいから、顔を見て話すと分かりやすいよ」と、年齢に合わせて説明してみましょう。
家族みんなが自然にコミュニケーション方法を工夫できるようになると、難聴のある子どもだけが特別扱いされているという雰囲気も少なくなります。
家族だけで抱え込まない
子どもが難聴と診断されると、家族は短期間に多くのことを考えることになります。
「補聴器は必要なのか」「言葉は発達するのか」「どの学校へ行けばよいのか」など、将来への不安が次々に出てくることもあるでしょう。
しかし、最初からすべてを決める必要はありません。
耳鼻咽喉科医、言語聴覚士、教育機関、療育機関などと相談しながら、子どもの成長に合わせて一つずつ考えていくことが大切です。
言語聴覚士ができる支援
言語聴覚士(ST)は、子どもの聞こえだけでなく、言葉やコミュニケーションの発達についても支援します。
例えば、
- 聞こえの状態の確認
- 補聴器・人工内耳の活用支援
- 聞き取りの練習
- 言葉の発達の評価・支援
- 家庭での関わり方の助言
- 園や学校との情報共有
などを行います。
子どもの発達や家庭環境に合わせて、長期的に支援していくことが重要です。
「聞こえ」だけでなく子ども全体を見る
難聴と診断されると、どうしても家族の関心が「聞こえるか」「話せるようになるか」に集中しやすくなります。
しかし、子どもの成長には、遊ぶこと、家族と笑うこと、友達と関わること、自分の気持ちを伝えることなど、さまざまな経験が大切です。
難聴だけを見るのではなく、一人の子どもとして、その子の得意なことや好きなことも大切にしながら成長を支えていきましょう。
まとめ
子どもが難聴と診断されたときは、まず聞こえの程度や原因を詳しく確認し、必要に応じて補聴器や人工内耳、言葉・コミュニケーションの支援につなげていくことが大切です。
家庭では、顔を見て話す、静かな環境をつくる、日常生活の中でたくさんやり取りするなど、できることがたくさんあります。
また、音声だけでなく、手話や文字、ジェスチャーなど、その子に合ったコミュニケーション方法を考えることも重要です。
家族だけですべてを抱え込まず、医療・療育・教育の専門家と協力しながら、その子が「分かる」「伝わる」「楽しい」と感じられる環境をつくっていきましょう。

