高齢の親が補聴器を嫌がるときはどうする?
「テレビの音が大きくなっているのに、補聴器を使ってくれません。」
「補聴器を勧めると『まだ必要ない』と言われてしまいます。」
高齢の家族の聞こえが悪くなり、「補聴器を使った方がいいのでは?」と考えるご家族は少なくありません。
しかし、本人に勧めても、
「まだ聞こえている」
「年寄りみたいで嫌だ」
「補聴器はうるさいと聞いた」
などと言って、使いたがらないことがあります。
このようなとき、無理に説得して購入しても、結局使わなくなってしまうことがあります。
大切なのは、なぜ本人が補聴器を嫌がっているのかを理解し、本人が必要性を感じられるように支えることです。
この記事では、高齢の親が補聴器を嫌がる理由や、家族ができる対応について、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
なぜ補聴器を嫌がるの?
高齢の方が補聴器を嫌がる理由は、一つではありません。
例えば、
- 自分ではそれほど困っていない
- 難聴を認めたくない
- 「年寄りになった」と感じる
- 補聴器に悪いイメージがある
- 操作が難しそう
- 費用が心配
- 以前使った補聴器が合わなかった
などがあります。
まずは、「どうして使わないの?」と責めるのではなく、本人が何を心配しているのかを聞いてみることが大切です。
本人は聞こえにくさに気付いていないことがある
加齢性難聴は、少しずつ進行することが多いため、本人が変化に気付きにくいことがあります。
本人としては、「自分は聞こえている」と思っていても、家族から見ると、
- テレビの音量が大きい
- 聞き返しが増えた
- 呼びかけても気付かない
- 会話がかみ合わない
といった変化がみられることがあります。
この認識の違いが、補聴器を巡る家族のすれ違いにつながることがあります。
「補聴器をつけなさい」と迫らない
家族としては心配だからこそ、「もう聞こえていないんだから補聴器を使って」と言いたくなることがあります。
しかし、強く勧められるほど、本人が拒否したくなることもあります。
「聞こえないこと」を指摘するのではなく、「最近、テレビの音が少し大きくなったね」「病院で一度、聞こえを測ってもらわない?」など、まず聞こえを確認することから提案すると受け入れやすくなります。
まずは耳鼻咽喉科を受診しよう
補聴器を購入する前に、耳鼻咽喉科で聞こえを確認することが大切です。
高齢者の聞こえにくさが、すべて加齢によるものとは限りません。
例えば、
- 耳垢
- 中耳炎
- 突発性難聴
- その他の耳の病気
などが隠れている場合があります。
治療できる原因がないか確認したうえで、補聴器が必要かどうかを考えます。
「補聴器」ではなく「困っている場面」から話す
補聴器を使うかどうかだけを話題にすると、本人が抵抗を感じることがあります。
そこで、「どんなときに聞こえにくい?」と生活の中の困りごとから考えてみましょう。
例えば、「孫と話すときは聞こえる?」「病院の先生の話は分かる?」「テレビのニュースは聞き取りやすい?」などです。
本人が、「孫の声は確かに聞き取りにくいな」と気付けば、補聴器を試してみるきっかけになることがあります。
補聴器を使う目的を具体的にする
「耳が悪いから補聴器を使う」というだけでは、本人にとって必要性を感じにくいことがあります。
例えば、
- 孫との会話を楽しむ
- テレビを家族と同じ音量で見る
- 病院の説明を聞き取りやすくする
- 友人との会話を楽しむ
- 趣味の集まりへ参加する
など、本人にとって大切なことと補聴器を結び付けると分かりやすくなります。
補聴器は、「難聴を示すもの」ではなく、やりたいことを続けるための道具と考えることができます。
「試してみる」ことから始める
最初から、「補聴器を買いましょう」と言われると、抵抗を感じる方もいます。
その場合は、「まず試してみる」という考え方がおすすめです。
補聴器相談医のいる耳鼻咽喉科や補聴器販売店などでは、状況に応じて試聴や貸し出しができる場合があります。
実際に使ってみることで、本人自身が聞こえの違いを実感できることがあります。
最初は「うるさい」と感じることもある
補聴器を使い始めた方から、「いろいろな音がうるさい」と言われることがあります。
これは珍しいことではありません。
難聴が長く続いていると、これまで聞こえにくかった、
- 食器の音
- 紙の音
- 足音
- エアコンの音
などが、補聴器によって再び聞こえるようになります。
そのため、最初は音が多すぎるように感じることがあります。
補聴器は買って終わりではない
補聴器は、購入したその日から完璧に使えるとは限りません。
本人の聴力や生活環境に合わせて、繰り返し調整することが大切です。
「うるさいから使わない」となった場合も、補聴器そのものが合わないのではなく、調整が必要な可能性があります。
購入した医療機関や販売店へ相談しましょう。
家族が補聴器の管理を手伝う
高齢になると、補聴器の操作や管理が難しい場合があります。
例えば、
- 小さな電池を交換できない
- 左右が分からない
- 充電を忘れる
- 耳にうまく入れられない
- 掃除の方法が分からない
などです。
このような場合は、家族が一緒に確認すると使いやすくなります。
ただし、すべて家族が行うのではなく、本人ができることは本人に任せながら支援しましょう。
高価な補聴器なら必ず合うわけではない
補聴器には、さまざまな価格帯の製品があります。
しかし、高価な補聴器だからといって、必ず本人に最適とは限りません。
大切なのは、
- 聴力に合っている
- 生活環境に合っている
- 継続的に調整を受けられる
- 本人が扱いやすい
ということです。
価格だけで判断せず、専門家と相談しながら選びましょう。
集音器との違いにも注意
インターネットや家電量販店では、比較的安価な「集音器」が販売されています。
しかし、補聴器と集音器は同じものではありません。
補聴器は、難聴のある方が使用することを目的とした管理医療機器です。
一人ひとりの聴力に合わせて調整して使用します。
初めて聞こえを補う機器を検討する場合は、自己判断で購入する前に、耳鼻咽喉科へ相談すると安心です。
それでも嫌がる場合は?
家族が説明しても、本人が補聴器を希望しないことがあります。
その場合、無理やり使用させることは難しいでしょう。
まずは、
- 正面から話す
- テレビを消して会話する
- 大切な内容は文字にする
- スマートフォンの音声認識を利用する
など、補聴器以外の方法でコミュニケーションを支えることもできます。
そして、本人が困りごとを感じたタイミングで、再び補聴器について相談してみるのも一つの方法です。
言語聴覚士ができる支援
言語聴覚士(ST)は、聞こえの状態だけでなく、「生活の中で何に困っているのか」を確認しながら支援します。
補聴器を使用する場合には、聞こえ方の確認や装用練習、聞き取りの練習などを行います。
また、家族に対しても、補聴器への慣れ方や、家庭でのコミュニケーション方法について助言します。
「使わせる」より「本人が使いたいと思えること」
補聴器を長く使うためには、家族から言われて仕方なく装用するより、
本人自身が、「これなら会話が楽になる」「孫の声が聞き取りやすい」とメリットを感じることが大切です。
家族の役割は、無理に補聴器を使わせることではありません。
本人の困りごとを一緒に整理し、必要であれば専門家へつなぎ、本人が納得して選択できるよう支えることが大切です。
まとめ
高齢の親が補聴器を嫌がる背景には、「まだ聞こえている」「年寄りに見られたくない」「うるさそう」「操作が難しそう」など、さまざまな理由があります。
無理に補聴器を勧めるのではなく、まず本人がどのようなことを不安に感じているのかを聞いてみましょう。
そのうえで耳鼻咽喉科で聴力を確認し、「孫との会話を楽しむ」など本人にとって大切な目的から補聴器を考えることがポイントです。
補聴器は購入して終わりではなく、少しずつ音に慣れながら調整していくことも重要です。
家族と専門家が協力し、本人が納得して聞こえを支える方法を選べるようにしていきましょう。

