人工内耳で利用できる公的支援制度
「人工内耳は高額だと聞きました。」
「手術や機器に利用できる公的な支援制度はありますか?」
人工内耳は、重度から高度の難聴がある方にとって、聞こえを支える重要な治療法の一つです。
一方で、手術や機器には高額な費用がかかるため、不安を感じる方も少なくありません。
しかし、日本では医療費や手術、術後の支援、機器の一部について利用できる公的制度があります。
この記事では、人工内耳で利用できる主な公的支援制度について、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
人工内耳とは?
人工内耳は、重度から高度の感音難聴がある方に対して、手術で体内へ電極を埋め込み、音を電気信号へ変換して聴神経へ伝える医療機器です。
補聴器では十分な効果が得られない場合に、治療の選択肢となります。
健康保険が適用される
人工内耳の手術や入院、必要な検査などは、適応基準を満たしている場合、公的医療保険の対象となります。
そのため、医療費の自己負担は、年齢や所得に応じた割合(1~3割)となります。
高額療養費制度を利用できる
人工内耳の手術では、一時的に医療費が高額になることがあります。
そのような場合は、高額療養費制度を利用することで、所得に応じた自己負担限度額を超えた医療費が払い戻される、または窓口での支払いが軽減されます。
事前に「限度額適用認定証」を準備すると、窓口での支払いを抑えられる場合があります。
自立支援医療制度(更生医療・育成医療)
人工内耳は、条件を満たす場合、自立支援医療制度の対象となることがあります。
更生医療(18歳以上)
身体障害者手帳を持つ18歳以上の方で、人工内耳手術によって障害の改善が期待できる場合に利用できます。
育成医療(18歳未満)
18歳未満のお子さんが対象となる制度です。
人工内耳手術など、将来の生活能力を高めるための医療費負担を軽減することを目的としています。
所得に応じて自己負担額が設定されています。
身体障害者手帳を取得できる場合がある
高度の聴覚障害がある方は、身体障害者手帳の対象となることがあります。
手帳を取得すると、
- 税制上の優遇
- 公共交通機関の割引
- 各種福祉サービス
などを利用できる場合があります。
認定には、身体障害者福祉法で定められた基準を満たす必要があります。
音声信号処理装置の修理費支援
人工内耳は、体内に埋め込む部分だけでなく、体外で使用する音声信号処理装置(サウンドプロセッサ)も重要な機器です。
身体障害者手帳をお持ちの方などは、補装具費支給制度により、音声信号処理装置の修理費について支援を受けられる場合があります。
なお、現在の補装具費支給制度では、新しい人工内耳本体や音声信号処理装置の購入は対象ではなく、修理が対象となっています。
自治体独自の助成制度もある
市区町村によっては、人工内耳に関する独自の助成制度を設けている場合があります。
例えば、
- 音声信号処理装置の更新費用
- 電池・アクセサリー購入費
- 子どもへの追加支援
などを助成している自治体もあります。
内容は地域によって異なるため、自治体の障害福祉担当課へ確認してみましょう。
リハビリテーションも重要
人工内耳は、手術を受ければすぐに元どおり聞こえるわけではありません。
音に慣れ、言葉を聞き取る力を育てるためには、術後のリハビリテーションが欠かせません。
医療機関によっては、言語聴覚士による継続的な支援が行われます。
申請は手術前に相談しよう
制度によっては、手術や修理の前に申請が必要なものがあります。
手術後や修理後では対象にならない場合もあるため、人工内耳を検討している段階で、病院の医療ソーシャルワーカーや自治体へ相談しておくことが大切です。
言語聴覚士ができる支援
言語聴覚士(ST)は、人工内耳を装用した方に対し、聞き取りや言葉の理解を高めるリハビリテーションを行います。
また、学校や職場でのコミュニケーション方法、家族との関わり方についても助言し、耳鼻咽喉科や福祉機関と連携しながら支援を進めます。
利用できる制度を知ることが安心につながる
人工内耳は高額な医療ですが、健康保険や高額療養費制度、自立支援医療制度などを利用することで、経済的な負担を軽減できる場合があります。
また、自治体独自の支援制度が利用できることもあります。
制度は地域や個人の状況によって異なるため、一人で悩まず、主治医や医療ソーシャルワーカー、自治体へ早めに相談してみましょう。
まとめ
人工内耳では、公的医療保険のほか、高額療養費制度や自立支援医療制度(更生医療・育成医療)などを利用できる場合があります。
また、身体障害者手帳の対象となる方は、音声信号処理装置の修理費について補装具費支給制度を利用できることがあります。
さらに、自治体によっては独自の助成制度を設けている場合もあります。
制度によっては事前申請が必要となるため、人工内耳を検討したら早めに医療機関や自治体へ相談し、自分が利用できる支援制度を確認しましょう。

