人工内耳とは?補聴器との違い
「補聴器では十分に聞こえない場合、人工内耳という治療があると聞きました。」
「人工内耳と補聴器は何が違うのでしょうか?」
難聴の治療について調べていると、「人工内耳」という言葉を目にすることがあります。
人工内耳は、重い難聴がある方の聞こえを支援する医療機器です。
一方で、すべての難聴の方が対象になるわけではありません。
補聴器と人工内耳はどちらも聞こえを支えるための機器ですが、仕組みや対象となる方、治療方法には大きな違いがあります。
この記事では、人工内耳とはどのようなものか、補聴器との違いを中心に、言語聴覚士がわかりやすく解説します。
人工内耳とは?
人工内耳とは、重度から高度の感音難聴があり、補聴器を十分に活用しても会話の聞き取りが難しい方を対象とした医療機器です。
手術によって体内に機器を埋め込み、音を電気信号に変えて、直接聴神経へ伝えることで聞こえを支援します。
現在では、
- 生まれつき難聴のある子ども
- 突発性難聴などで高度難聴になった方
- 加齢などで重度の難聴になった方
など、さまざまな方に用いられています。
人工内耳の仕組み
人工内耳は、体の外側と内側の2つの部分で構成されています。
外側の装置
耳の後ろに装着し、
- マイクで音を集める
- 音を分析する
- 電気信号へ変換する
という役割を担います。
体内の装置
手術によって耳の後ろに埋め込まれます。
外側の装置から送られた電気信号を受け取り、内耳に入れた電極を通して聴神経へ伝えます。
この仕組みによって、音を感じることができるようになります。
補聴器との違い
補聴器と人工内耳は、どちらも聞こえを支援する機器ですが、働き方が異なります。
| 項目 | 補聴器 | 人工内耳 |
|---|---|---|
| 仕組み | 音を大きくして耳へ届ける | 音を電気信号に変えて聴神経へ伝える |
| 手術 | 不要 | 必要 |
| 対象 | 軽度〜高度難聴 | 主に高度〜重度難聴で補聴器の効果が十分でない場合 |
| 聞こえ方 | 残っている聴力を活かす | 聴神経を電気刺激して聞こえを補う |
補聴器は「残っている聞く力を活かす機器」、人工内耳は「補聴器では十分な効果が得られない場合の選択肢」と考えると分かりやすいでしょう。
人工内耳は誰でも受けられる?
人工内耳は、希望すれば誰でも受けられる治療ではありません。
耳鼻咽喉科で、
- 聴力検査
- 語音聴力検査
- CT・MRI検査
- 補聴器の使用状況
- 全身の健康状態
などを総合的に評価し、適応があるかどうかを判断します。
また、手術を受けることのメリットや注意点について十分に説明を受けたうえで治療を選択します。
手術を受ければすぐに聞こえるわけではない
人工内耳は、手術をしただけで自然な聞こえになるわけではありません。
手術後、装置の電源を入れる「音入れ」を行い、その後、少しずつ音に慣れていきます。
最初は、「電子音のように聞こえる「言葉として分からない」と感じる方もいますが、リハビリテーションを続けることで、徐々に聞き取りが向上することが期待されます。
人工内耳にもリハビリテーションが大切
人工内耳では、手術後のリハビリテーションがとても重要です。
例えば、
- 音に慣れる練習
- 言葉を聞き分ける練習
- 会話の練習
などを行います。
子どもの場合は、言葉の発達を支えるための継続的な支援も欠かせません。
言語聴覚士も支援する
人工内耳のリハビリテーションでは、言語聴覚士が重要な役割を担っています。
例えば、
- 聞き取りの評価
- 聴覚トレーニング
- コミュニケーションの支援
- ご家族へのアドバイス
などを行い、
人工内耳を日常生活で活用できるよう支援しています。
医師や臨床工学技士など、多職種と連携しながらサポートを行います。
補聴器と人工内耳は対立するものではない
「補聴器か人工内耳か」と考えられることがありますが、
人工内耳は、補聴器で十分な効果が得られない場合に検討される治療です。
まずは補聴器を適切に装用し、その効果を評価したうえで、必要に応じて人工内耳を検討します。
また、人工内耳を片耳に装用し、もう片方の耳には補聴器を使用する「バイモーダル補聴」が勧められる場合もあります。
まとめ
人工内耳は、補聴器を十分に使用しても会話の聞き取りが難しい高度〜重度の難聴の方を対象とした医療機器です。
補聴器が音を大きくするのに対し、人工内耳は音を電気信号に変えて聴神経へ伝えるという仕組みが大きく異なります。
また、手術だけで終わるのではなく、その後の調整やリハビリテーションも重要です。
人工内耳が適しているかどうかは一人ひとり異なるため、耳鼻咽喉科で十分な検査と説明を受け、自分に合った治療法を選択することが大切です。

