高次脳機能障害のある方のやる気を引き出す関わり方
高次脳機能障害のあるご家族から、
- 「何もやろうとしない」
- 「リハビリを嫌がる」
- 「声をかけても反応が薄い」
といった相談を受けることがあります。
ご家族は、「もっと頑張ってほしい」「少しでも良くなってほしい」
という思いから、励ましたり促したりすることが多いでしょう。
しかし、高次脳機能障害では、「やる気がないように見える」こと自体が症状の影響である場合があります。
また、失敗を繰り返した経験から自信を失い、「どうせできない」と感じてしまっていることも少なくありません。
この記事では、ご本人のやる気を引き出すために大切な関わり方について解説します。
「やる気がない」と決めつけない
高次脳機能障害では、
- 意欲が低下する
- 疲れやすい
- 何から始めればよいか分からない
といった症状がみられることがあります。
そのため、外から見ると「やる気がない」ように見えることがあります。
しかし実際には、「やりたい気持ちはあるけれど、動き出せない」という状態の方も少なくありません。
まずは、「怠けているわけではないかもしれない」という視点を持つことが大切です。
小さな目標を設定する
「今日は1時間リハビリを頑張ろう」という目標は、高すぎることがあります。
例えば、
- プリントを1枚やる
- 5分だけ散歩する
- カレンダーを確認する
- メモを書く
など、短時間で達成できる目標から始めましょう。
「できた」という経験を積み重ねることが、自信につながります。
「できたこと」を具体的に褒める
「すごいね」「頑張ったね」という言葉も大切ですが、
より効果的なのは、何ができたのかを具体的に伝えることです。
例えば、
- 「今日は自分からメモを見られましたね。」
- 「最後まで集中できましたね。」
- 「昨日より早く準備できましたね。」
などです。
具体的に認めてもらえることで、ご本人は自分の成長を実感しやすくなります。
本人が選べる場面を作る
人は、自分で選んだことの方が意欲的に取り組きやすい傾向があります。
例えば、
「今日は音読と計算、どちらから始めますか?」
「午前と午後なら、どちらがやりやすいですか?」
というように、ご本人が選べる機会を作ることも大切です。
小さなことでも、自分で決める経験が主体性につながります。
好きなことを取り入れる
リハビリは、机に向かう訓練だけではありません。
例えば、
- 園芸
- 料理
- 音楽
- 散歩
- 写真
- 将棋や囲碁
など、ご本人が好きだった活動も立派なリハビリになります。
興味のあることは自然と取り組みやすく、成功体験にもつながりやすいでしょう。
結果より過程を大切にする
リハビリでは、「正しくできたか」だけに注目しがちです。
しかし、やる気を引き出すためには、
「取り組もうとしたこと」「最後まで続けたこと」も大切にしましょう。
例えば、「最後まで頑張れましたね。」「今日は自分から始められましたね。」
という声かけは、ご本人の意欲を育てます。
無理にやらせない
ご本人が疲れているときや体調が悪いときに、無理にリハビリを勧めても逆効果になることがあります。
高次脳機能障害では、疲労によって注意力や集中力が低下しやすい方も少なくありません。
そのような日は、休息を優先し、翌日に取り組むことも大切です。
「続けること」が目的なので、毎日完璧である必要はありません。
家族が焦りすぎない
ご家族は、「もっと頑張れば良くなるはず」という思いから、つい急かしてしまうことがあります。
しかし、焦りはご本人にも伝わります。
すると、「また怒られるかもしれない」「どうせできない」
という気持ちが強くなり、さらに意欲が低下してしまうことがあります。
ご本人のペースを尊重することが、結果的にやる気を引き出すことにつながります。
一緒に喜ぶ時間を作る
リハビリは、「訓練」だけではありません。
例えば、
- 一緒に散歩を楽しむ
- 好きなテレビ番組を見る
- 趣味について話す
など、楽しい時間を共有することも大切です。
安心できる関係があるからこそ、ご本人は新しいことにも挑戦しやすくなります。
やる気が出ないときは専門職にも相談する
意欲の低下が長く続く場合は、高次脳機能障害そのものだけでなく、
うつ状態や強い疲労などが影響している可能性もあります。
「やる気がないから仕方ない」と決めつけず、
主治医や言語聴覚士、作業療法士、理学療法士などに相談してみましょう。
リハビリ内容や生活リズムを見直すことで、改善につながることがあります。
まとめ
高次脳機能障害のある方のやる気を引き出すためには、「頑張って」と励ますだけではなく、
ご本人が「できた」と感じられる経験を積み重ねることが大切です。
小さな目標を設定し、できたことを具体的に褒め、ご本人が自分で選べる機会を作ることで、意欲は少しずつ育っていきます。
また、ご家族が焦らず、ご本人のペースを尊重することも重要です。
無理なく続けられる関わり方を見つけながら、一歩ずつ前に進んでいきましょう。

