言語聴覚士はどんな高次脳機能障害のリハビリをする?

高次脳機能障害と診断されると、

「言語聴覚士(ST)がリハビリを担当します」と言われることがあります。

しかし、

  • 「言語聴覚士って何をする人?」
  • 「言葉だけを練習するの?」
  • 「高次脳機能障害にも関わるの?」

と疑問に思う方も少なくありません。

言語聴覚士は、「話す」「聞く」だけでなく、記憶や注意、コミュニケーションなど、高次脳機能障害によって困りやすい機能のリハビリを行う専門職です。

この記事では、高次脳機能障害に対して言語聴覚士がどのようなリハビリを行うのかをわかりやすく解説します。

言語聴覚士とは?

言語聴覚士(Speech-Language-Hearing Therapist:ST)は、ことばやコミュニケーション、飲み込み(嚥下)に関するリハビリを専門とする国家資格です。

対象となるのは、

  • 失語症
  • 構音障害
  • 嚥下障害
  • 高次脳機能障害
  • 認知機能の低下

など、脳や神経の病気によって生じるさまざまな症状です。

高次脳機能障害では、日常生活や社会生活で困りやすい認知機能の支援も重要な役割の一つです。

まずは困りごとを評価する

リハビリは、いきなり訓練を始めるわけではありません。

まず、ご本人の状態を詳しく評価します。

例えば、

  • どのようなことに困っているか
  • 記憶力はどうか
  • 注意力はどうか
  • 会話や理解に問題はあるか
  • 日常生活でどのような支障があるか

などを確認します。

必要に応じて神経心理学的検査なども行い、症状を整理したうえでリハビリの内容を決めます。

記憶障害へのリハビリ

記憶障害がある場合には、

  • 新しいことを覚える練習
  • メモの使い方
  • カレンダーの活用
  • スマートフォンのアラーム設定

などを一緒に練習します。

重要なのは、記憶力そのものを鍛えるだけではなく、生活の中で困らない方法を身につけることです。

注意障害へのリハビリ

注意障害では、

  • 集中力を高める課題
  • 注意を切り替える練習
  • 複数の情報を整理する訓練

などを行います。

また、「疲れると集中しにくい」「周囲が騒がしいとミスが増える」

など、ご本人の特徴を把握し、生活の工夫も一緒に考えます。

遂行機能障害へのリハビリ

遂行機能障害では、

  • 計画を立てる練習
  • 手順を整理する練習
  • チェックリストの活用
  • 問題解決の練習

などを行います。

例えば、料理や買い物など実際の生活場面を取り入れながら、段取りを考える練習を行うこともあります。

コミュニケーションの支援

高次脳機能障害では、

  • 話がまとまらない
  • 相手の話を理解しにくい
  • 会話の流れについていけない

といった困りごとがみられることがあります。

そのため、

  • 会話の練習
  • 相手に伝わりやすい話し方
  • コミュニケーションの工夫

についても支援を行います。

失語症を合併している場合は、そのリハビリも並行して行います。

日常生活を見据えたリハビリ

言語聴覚士のリハビリは、机の上だけで終わるものではありません。

例えば、

  • 買い物
  • 電話
  • 金銭管理
  • スケジュール管理
  • 公共交通機関の利用

など、実際の生活で必要になる場面を想定した練習も行います。

「できるようになること」だけでなく、「生活で困らないこと」を目標に支援を進めます。

ご家族への支援も大切な仕事

高次脳機能障害では、ご家族の理解が回復に大きく影響します。

そのため言語聴覚士は、

  • 症状の説明
  • 接し方のアドバイス
  • 自宅でできる練習方法
  • 代償手段の使い方

などについて、ご家族にも分かりやすくお伝えします。

ご本人だけでなく、ご家族も安心して生活できるよう支援することが大切な役割です。

他の専門職と連携して支援する

高次脳機能障害のリハビリは、言語聴覚士だけで行うものではありません。

例えば、

  • 医師
  • 作業療法士
  • 理学療法士
  • 公認心理師
  • 看護師
  • 医療ソーシャルワーカー

などと連携しながら、その方に合った支援を考えます。

それぞれの専門性を生かしながらチームで支えることが、高次脳機能障害のリハビリでは重要です。

「できること」を増やすことが目標

言語聴覚士のリハビリでは、「元通りにすること」だけを目標にはしていません。

例えば、

  • メモを使えば予定を忘れなくなった
  • チェックリストで家事ができるようになった
  • 家族と安心して会話ができるようになった

このように、「できる方法」を一緒に見つけることも大切なリハビリです。

ご本人が自信を持って生活できるよう支援することを目指しています。

まとめ

言語聴覚士は、高次脳機能障害による記憶障害や注意障害、遂行機能障害、コミュニケーションの問題などに対するリハビリを行う専門職です。

症状を評価したうえで、一人ひとりに合った訓練や生活の工夫、代償手段の活用を支援します。

また、ご家族へのアドバイスや他の専門職との連携も重要な役割です。

高次脳機能障害のリハビリは、「できないこと」を減らすだけでなく、「できる方法」を増やし、その人らしい生活を取り戻すことを目標に進められます。

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